寒さで少し強張った指先が、ぬくもりを求めて紙コップを握っている。
コーヒーの列が途切れない Tokyo Coffee Festival の一角で、
ふと視界の端に、湯気の代わりに色が立ち上るようなテーブルが現れる。
淡いグリーンとミルクのような白、苺ミルクみたいなピンク、
釉薬の流れがそのまま時間の跡になった器たち。
その真ん中に、小さく手書きされた紙が置かれている。
「コーヒーの味が変わる!! 味変マグ」
コーヒーイベントの中に、
味わいそのものを“器側から”動かそうとする実験室がひとつ、
静かに開いていた。
一章|vitamosa という名前のこと
ブランド名は vitamosa(ビタモサ)。
「モサ」という作り手自身のあだ名と、
“器からもビタミンを摂ってほしい” という願いを
くっつけたところから始まった名前だという。
ビタミンみたいに鮮やかな色の器で、
日常のテーブルに小さな元気と遊び心を足していきたい。
そんな思いが、パステルトーンの釉薬や
ころんとしたフォルムにそのまま表れている。
棚にはマグカップ、ボウル、小皿、
そして耳のついた愛嬌のある器が並ぶ。
どれも同じ形はなく、
色の境目や釉薬の垂れ方に、
作り手の「実験」の痕跡がそのまま残っている。

二章|会場で手に取った一客
自然と視線が止まったのは、
やわらかな水色に染められた、小さなマグだった。
釉薬の濃淡がゆるやかに揺れていて、
光の当たり方によっては、
朝いちばんの空の色にも、
静かなプールの水面にも見える。
指先で縁をなぞると、
四つの違う「飲み口」が隠れていることに気づく。
手前には、細い横線の凸凹が刻まれた部分。
そこから少しマグを回すと、波のようにうねる波型のリム。
さらに回せば、注ぎ口のように尖ったくちばしの凸。
最後に、何も仕掛けのない、なめらかな丸い縁。
同じマグの中に、四通りの味の入口が用意されている。
そう思った瞬間、このマグはただの「かわいい器」ではなく、
これから自分の舌で確かめていくための小さな実験道具に見えてくる。
会場の喧噪の中でその一客を見つめていると、
朝のミルクティー、夜のハーブティー、
ときどきコーヒーゼリーやスープまで、
いろんな飲みものや料理が、
四つの飲み口を順番に通り抜けていく未来の光景が
少しずつ頭の中に立ち上がってきた。

三章|味変マグと味変パンダのしくみ
味変マグ
味変マグは、ひとつのマグの中に
いくつかの“飲み口”を仕込んだカップだ。
選んだ水色のマグにも、四つの飲み口がぐるりと並んでいた。
・ 細い横溝の入った部分では、舌に触れるコーヒーの量がごく少なくなり、
香りと酸味がすっと立ち上がる。
・ 波型のリムの部分では、液面が揺れながら口に入ってきて、
甘さとボディがゆらぎながら広がる。
・ くちばしのような注ぎ口から飲むと、
一点からスッと流れ込み、キレのいい後味が際立つ。
・ なめらかな丸い縁では、
いちばん「ふつうのマグ」に近いバランスで、
全体の印象を素直に確かめることができる。
同じ豆、同じ抽出で入れた一杯でも、
マグを少し回すだけで、四つの表情が現れる。
ポップに書かれていた 「1 cup 3 tastes!!」 は、
マグに限って言えば、
静かに 「1 cup 4 tastes」 に書き換えたくなる説得力があった。

味変パンダ
もうひとつの主役が 味変パンダ。
パンダの顔のようなシルエットのボウルで、
真ん中の大きなスペースにごはんやスープ、
両耳部分には薬味やソースを入れられるようになっている。
「自分がキッチンを往復して味変するタイプだったので、
一度で味が変えられる器があったらいいなと思って作りました」
作り手はそう笑う。
鍋の取り皿にしたり、
お茶漬けに追い胡麻や海苔を足したり。
キッチンとテーブルを行き来しなくても、
目の前の器の中で味を完成させていくことができる。
今回はコーヒーイベントということで、
抹茶ラテに顔を描いた写真や、
ごはんとトッピングを左右に分けた写真を
タブレットで見せながら、
「飲み物のキャンバス」としての使い方も提案していた。


四章|日常に潜ませる実験ということ
「最初は、普通のマグにちょっと飽きちゃって。
飲み口を変えたら味も変わるのかなと思って、
実験してみたのが始まりなんです」
作り手はそう話す。
飲み口を変えてみたら、
本当に味の印象が変わった。
そこで終わらせずに、
「じゃあ、もっと色を増やしてみよう」
「もっと形も変えてみよう」 と
実験を続けていった先に、今のラインナップがある。
味変パンダも同じだ。
「キッチンを何度も往復して味変する自分」を観察したところから、
耳に薬味をのせる形が生まれている。
さらに、
お香の煙が飛行機雲のように伸びていく香立てや、
手持ち無沙汰な時につい指でなぞりたくなる“さわりごこち”の器など、
日常の小さな動きを拾い上げては、
そこにちょっとした実験を組み込んでいく。
コーヒーのイベントで見かけることの多い
“味のつくり手”たちとは少し違う距離感で、
vitamosa は 「味を感じる身体のほう」 にアプローチしてくる存在だった。


喫茶叙景文 ~色をひと口ずつ~
赤いワイヤーラックの上に、
釉薬の滴が固まったカップが並んでいる。
どのカップも、
火と時間と偶然に一度きりの模様を与えられて、
静かにこちらを向いている。
会場を満たすコーヒーの香りの中で、
土の匂いだけが別の時間を連れてくる。
まだ何も注がれていない器を前に、
舌はすでに「どこから飲もうか」と迷い始めている。
ひとつのカップに、
三つの味の入口があるということ。
ひとつのボウルに、
薬味とごはんとスープの居場所が用意されているということ。
日常のテーブルに並ぶのは、
完成された形ではなく、
これから自分の手で完成させるための余白だ。
選んだ器をそっとバッグにしまう。
カップの中に最初に注ぐのは、
コーヒーか、スープか、それともただの白湯か。
まだ何も知らないままの器が、
家路の途中で、かすかに揺れている。
店舗概要
- 1 住所:
-
・常設の実店舗は持たず、関東近郊のイベント出店・ポップアップ中心で活動。
・工房所在地などの詳細は非公開。最新情報は公式 Instagram で随時更新。
- 2 アクセス:
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・今回の出店:Tokyo Coffee Festival 2025 冬@青山
・その他のイベント出店や展示会は、公式アカウントの告知を確認。
- 3 営業時間:
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・常設店舗なし。イベント開催時間・会場ごとの営業時間に準ずる。
・オンライン販売やオーダー受付のタイミングも、SNS で告知されるスタイル。
- 4 備考:
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ブランド名:vitamosa
コンセプト: 「モサ」+「ビタミン」=器からビタミンを摂るように、色と実験で日常を
元気にするうつわ。代表作:味変マグ/味変パンダ/飛行機雲のお香立て など。
デザインの特徴:パステル〜くすみカラーの釉薬、2色・3色のハーフ&ハーフ、流れ落ちる
ようなマーブル模様。公式情報:名刺に複数の QR コードがあり、ブランド本体・ラテアート用サブアカウントなど
Instagram で情報発信。
コーヒーとの関係:飲み口・器の形状を通して、同じコーヒーでも“どのように味わうか”を
変えてくれる存在。 - 5 最新情報:
-
公式Instagram。











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