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新座の隅っこでインドネシアに出会う。コピティアム珈琲店のマンデリン巡礼

 新座市片山
幹線道路から少し入った住宅街の一角に、インドネシア産スペシャリティ珈琲豆
専門店の文字が入った赤いポスターが目に入る。

 お店の名前はコピティアム珈琲店。
シャッター付きの小さな店舗に、のぼりと手書きの看板。扉を開けると、
すぐ目の前にずらりと並んだガラス瓶が目に飛び込んでくる。

棚の上には、熟成マンデリン・ガヨ・トラジャ カロシ・リントン-プレジデントJr
瓶の中で光る豆の色がそれぞれ別のように感じる。

ここは”飲む前から、豆を眺めて旅が始まる店“だ。

第一章 きっかけは「これ、本当にマンデリン?」という違和感

 店主さんはインドネシア出身
あるとき家族でレストランに行き、食後のコーヒーを選んだ。メニューに
は「マンデリン」と書いてある。

 ところが一口飲んで、ふと首をかしげる。
自分がインドネシアの地元で飲んできたマンデリンと、香りも味の輪郭
どこが違う。

 その違和感が、すべての始まりだった。

  「ちゃんとしたマンデリンの味を、ここで出したいと思ったんです。」

 そこから、自分で豆を入れ、ローストの勉強を始める。
最初は「豆そのものの違い」だと思っていたものが、焙煎を重ねるうち
に、もう一つ別の要因に気づいたという。

 コーヒーの味は豆ではなく、焙煎機のタイプでも大きく変わる。

 日本でよく見かける直火式ではなく、自身が慣れ親しんだ味に近づく熱風式
の焙煎機を選び、ようやく「これだ」と思える一杯にたどり着いた。

第二章 豆の買い方にも「家で再現できる」工夫を

 コピティアム珈琲店のこだわりは、焙煎だけにとどまらない。

 店主が大事にしているのは、「お客さんが家で淹れたときにも、できる
だけ店で飲んだ時と同じ味になること
」。

 だからお店で使う抽出器具は、あえて特別なものでなく、
「どこでも手に入るペーパーフィルター」+「家庭用の器具」。

 お店のカップだけすごくおいしくて、家に帰ったら同じ豆なのに別物….と
いう悲しさを減らしたい。
そんなお客さん目線の考えから、あえて”身近な道具“で味を作っている。

 さらに棚に並ぶすべての豆は試飲OK
この日もカウンターには、何種類ものポットが並び、小さな紙コップで
次々にテイスティングさせてくれた。

 「酸味はこれくらいが好き」 「もう少しコクがほしい」
そんな希望を伝えながら、自分の舌で選ぶ珈琲豆を見つけていく時間が楽しい。

第三章 豆は子どものようなものだから

 話を聞いていると、店主さんの口から何度も出てくる言葉がある。

  「豆の扱いは、子どもを育てているような感覚なんです。」

 豆が生まれた場所から、日本でカップになるまでの道のり
インドネシアの山で育ち、収穫され、精製され、船に乗って海を渡る。

 コピティアム珈琲店では、そこから先――
日本に着いてからの取り扱いも、仲介を挟むことなく自分の手で行うよ
うにしているという。

 「どこで誰にバトンを渡したのかわからない豆」ではなく、
産地から焙煎まで、顔の見えるルートで連れてきた豆を出したい。


そんな気持ちが、店内の麻袋の山や、インドネシアの地図の布ににじんでいる。

 また、店主の実家は珈琲農園で親戚や知り合いの応援農園から輸入している。
だからこそ。店主の感性・知識・誇り。そして、豆への尊敬を感じることができる。

第四章 ラインナップ紹介 マンデリンさん兄弟と、大統領のご子息に選んだ豆

 棚を見ていると、それぞれの豆に小さな物語が付いている。

  • 熟成マンデリン
     「熟成マンデリン」は、一定の期間を置いて寝かせたマンデリン。
    角が取れたような丸みのある香りと、しっとりとしたコクが魅力の一本。
  • ガヨ Gayo
     「ガヨ」は、インドネシア・スマトラ島北部の一帯で栽培される豆。
    スパイス感のある香りと、はっきりとしたボディ。
  • トラジャ カロシ Toraja Kalosi
     「トラジャ カロシ」はかつて”幻のコーヒー”呼ばれたトラジャの系譜。
    深くローストしても重くなりすぎず、後味にほのかな甘さを残す。
  • リントンプレジデントJr.
     そして気になるのが、「リントン プレジデントJr.」という名前の豆。
    インドネシアにある自家農園に、現大統領ジョコ氏の息子であるギフラン
    氏が視察に訪れた際に出したのがこのロットだという。

     そのエピソードから名付けられたのが、この「プレジデントJr.」。
    名前だけ聞くと少しユーモラスだけれど、
    「大統領のご子息が飲んだ一杯」だと思うと、口に運ぶ前から少し背筋が
    伸びる。

第五章 凍ったコーヒーがゆっくり溶ける、アイスの時間

 この日いただいたのはコピティアムらしいアイスコーヒー。
透明なカップの中で、丸い氷….これもコーヒーで作ったアイスキューブ。
小規模なお店でやっているからできることであると教わった。

 最初の一口はすっきりとした苦みであるが、口の中に余韻を残す。
時間が経つにつれて、氷が溶け、少しずつ濃度と香りが変わっていく。

 一杯の中で、ローストの表情が何段階も味わえる小さな仕掛け。
テイクアウトでも”珈琲の変化”を楽しませようとする遊び心を感じる。

第六章 届けた先で「ここだからおいしい」と言ってもらうために

 コピティアム珈琲店は、店頭販売だけではなく、も行っている。
豆を使ってくれているお店から、こんな言葉をもらうことがあるそうだ。

  「ここの豆だからこそ、おいしかったって言ってもらえた。」

 店主さんにとって、それが一番うれしい瞬間だと話してくれた。
 
 自分の店の看板より先に、カップのなかで評価されること。
それこそが、ロースター冥利に尽きる。

第七章 これから広げていきたいインドネシアの輪

 最後に、これからやってみたいことを尋ねると、
かえってきたのは、とてもシンプルででも熱い言葉だった。

  「もっとインドネシアの豆を広げていけるようなイベントをやってみた
いんです。」

 マンデリンやガヨ、トラジャだけでなく、
インドネシアにはまだ、日本で知られていない産地やロットがたくさんある。

 小さな新座の豆屋から、インドネシア珈琲の地図を少しずつ広げていきたい
コピティアム珈琲店は、その”拠点“のような場所だ。

喫茶叙景文 ~新座から続くインドネシアへの小さな道~

 扉を出ると、目の前にはふつうの住宅街の景色が広がっている。
さっきまで棚いっぱいの麻袋やインドネシアの地図、コーヒーの香りに囲まれた
せいか、少しだけ遠くから帰ってきたような気持になる。

 手には選んだ豆の袋。
ラベルには、マンデリンやガヨやリントンプレジデントJr.、トラジャ。

 新座の片隅から、インドネシアまで続いている小さな道を、今日も一つ持ち帰る
 次にこの豆を香るとき、その道の先にある山や農園の空気を、少しだけ想像してみ
たくなる。

基本情報

1住所:

埼玉県新座市片山2-9-8

2アクセス:

JR武蔵野線「新座」駅/西武池袋線「大泉学園駅」 「保谷駅」から西武バス使用
 各駅から西武バス乗車 → 「片山二丁目」バス停下車 徒歩約4分

3営業時間:
  • 月・水 曜日:10:00 ~ 16:00
  • 金・土・日 曜日:10:00 ~ 18:00
  • 定休日:火・木曜日
4備考:
  • インドネシア産スペシャリティ珈琲豆専門店
    → インドネシアに実家農園を持ち、信頼できる協力農園からのみ豆を仕入れ。
     実家焙煎・受注焙煎スタイルで、オンライン注文は
      →「注文後に焙煎→休ませてカッピングしてから発送」。 
  • 店頭では
    → 熟成マンデリン/ガヨ/トラジャ カロシ/リントンプレジデントJR.
     などインドネシア各地の豆を販売。
  • すべて試飲しながら豆を選べるスタイルなのが特徴。
  • 駐車場は特に案内なし(周辺は住宅街のためにコインパーキング等を利用)
5公式サイト:
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