フェス会場に着いて、まだ舌も頭も「今日の一杯目」を探している時間帯
だった。
テントのあいだから差し込む冬の光が、銀色のケトルとサーバーのガラス
に反射している。
黒いエプロンのバリスタが、静かな所作でドリッパーを整えていく。
テーブルの向こうに見えるのは、「COFFEE BASE」のロゴと、
“Beyond a cup of coffee.” の文字。
ただ一杯を売るだけの場所ではなく、その先の体験まで含めて届けよう
としているブースだな、と直感する。
この日の一杯目は、ここで決めることにした。
第一章|「甘く出す」ことを起点にした焙煎と抽出
COFFEE BASE さんに、コーヒーづくりのこだわりをたずねると、
最初に返ってきた言葉はとてもシンプルだった。
「僕は甘めのコーヒーが好きなんで、甘く出せるように入れてるんです」
甘さを前提にレシピを組み立てるから、ドリップも決してガツン
とは落とさない。
後味にきちんと甘さが残るように、抽出の強さをコントロールしているという。
テーブルには、.pa(PANAMA)/.co(COLOMBIA)/.et(ETHIOPIA) など、
国別コードのような名前がついた豆袋が並ぶ。
どの豆にも詳細なプロファイルシートが添えられ、産地・精製方法・標高・焙煎度
といった情報が、きちんと一杯の味につながるように整理されている。
甘さを軸にしながら、情報と所作で微調整していくブランド。
COFFEE BASE さんのブースは、そんな研究室めいた空気をまとっていた。


第二章|浅煎りと深煎り、二つのレールを引き分ける
抽出のこだわりをもう少し詳しく聞くと、バリスタさんは豆の焙煎度ごとにレシピを切り替えていると教えてくれた。
深煎り
・お湯を「激しく入れすぎない」こと。
・ 味が出すぎてしまわないよう、やわらかな湯の落とし方と、
やや低めの温度で抽出する。
浅煎り
・逆に「味が出にくい」側にいる豆。
・少し強めの注ぎと、高めの抽出温度で、しっかりフレーバー
を引き出していく。
同じドリッパーを使っていても、
湯の勢いと温度を変えることで、焙煎度ごとに最適な
レールを敷き直している。
カウンター越しにドリップを眺めていると、
浅煎りではリズミカルに、深煎りでは落ち着いたテンポで
お湯が落ちていくのが印象的だった。
この日いただいたのは、エチオピア・イルガチェフェ G1
(7days Anaerobic Natural)。
華やかな香りと、7日間の嫌気性発酵らしい複雑な果実味が重なり合い、
後味にやさしい甘さが長く残って、フェス一杯目の緊張をふっとほどいてくれた。


三章|「Vertical Blend」──一つの豆で描く三つの焙煎
ブースでひときわ気になったのが、「Vertical Blend(バーティカルブレンド)」
という名前のコーヒー。
カップを掲げると、スタッフさんがその中身について教えてくれた。
同じコスタリカの豆を、浅煎り・中煎り・深煎りで焙煎して、三つをブレンドしているんです」
通常のブレンドは産地や品種の違う豆を水平に組み合わせていく
イメージが強い。
それに対して、COFFEE BASE さんのバーティカルブレンドは、
一つの豆を“縦方向”に掘り下げて、焙煎度のレイヤーで味を重ねていくスタイルだ。
浅煎りが持つ軽やかな酸と香り、
中煎りが担うバランスのよさ、
深煎りが締めてくれるコクと甘さ。
それぞれの良さを一杯の中で立体的に感じてもらうためのブレンドであり、
「浅煎りでも、深煎りでも、美味しくなるポテンシャルを持った豆だからこそできる遊び」
なのだと話してくれた。
第四章|「水」が変える、同じ豆のもう一つの顔
COFFEE BASE さんのブースの横では、浄水器ブランドとのコラボ企画として、
水の違いによる飲み比べコーナーも実施されていた。
同じエチオピアの豆を、
・浄水(上水)で淹れたもの
・水道水で淹れたもの
の二種類で比較するテイスティング。
カップを口元に近づけた瞬間、違いははっきりしていた。
浄水で淹れた方は、香りが立体的にひらき、甘さと酸味の輪郭がくっきりしている。
水道水で淹れた方は、コーヒーの表面に薄い膜がかかっているみたいに、
香りも味わいも一段トーンダウンして感じられた。
さらに、話をうかがうなかで印象的だったのが、「京都三名水で淹れたコーヒー」が
オーナーおすすめだということ。
焙煎に使う水、抽出に使う水、そのどちらもを土地の水質から設計していく
のが COFFEE BASE さんらしさでもある。
同じ豆でも、水が変わればまるで別の一冊の本になる。
その事実を、飲み比べという形で体験させてくれるブースだった。


喫茶叙景文 ~色をひと口ずつ~
テントの白い布を透けて、冬の光がにじむ。
風は冷たいのに、サーバーの中だけは黒い液体がゆっくりと呼吸して
いる。
ポットから落ちるお湯の線は、驚くほど静かだ。浅煎りのときは少し
だけせっかちに、深煎りのときは言葉を選ぶみたいに慎重に。
その違いを、カウンター越しの手元が教えてくれる。
カップを受け取って、ひと口。
舌の上をすべっていった液体が、数秒おいてからふっと甘く返ってくる。
後味のどこかに、今日の一杯目の記憶が残るように、と仕掛けられた
合図みたいだ。
隣のブースでは、同じ豆が二種類の水で淹れられている。
見た目は同じなのに、香りの広がりがまるで違う。
水面に見えない膜が一枚あるかないかだけで、
コーヒーはこんなにも別人になる。
一杯を飲み終えたあと、
「Beyond a cup of coffee.」の文字が、少しだけ意味を増して見える。
マグの底に残ったわずかな温度といっしょに、これから出会うコーヒーの味を、
もう少し丁寧に覚えておきたいと思わせてくれるブースだった。
店舗概要
- 1 住所:
-
京都市内を中心に展開するロースタリー&カフェブランド
※店舗は複数あり、コンセプトもそれぞれ異なるため、詳細な所在地・営業時間は公式サイト/Instagram を要確認。
- 2 備考:
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焙煎・コーヒーの特徴
「甘さ」を主役にした焙煎と抽出。
浅煎り〜深煎りまで幅広い焙煎度を扱い、豆のポテンシャルに合わせてレシピを変更。
Vertical Blend(バーティカルブレンド)など、同一豆の焙煎違いを重ねる独自ブレンドが印象的。
エチオピア・パナマ・コロンビアなど、シングルオリジンも多数。
水質にもこだわり、京都三名水で淹れたコーヒーをオーナーさんのおすすめとして紹介。
Tokyo Coffee Festival 2025冬での主な提供
エチオピア・イルガチェフェ G1(7days Anaerobic Natural)
コスタリカを軸にした Vertical Blend ほか各国シングル
水の違い(浄水 vs 水道水)による飲み比べコーナー(企業コラボ) - 3最新情報:
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公式Instagram。
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公式サイト。










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