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街の息を揃えるあいだ(HandMade In Japan Fes〈HMJ〉2026冬)

東京ビッグサイトの西ホールへ向かう動線は、朝の光と一緒にゆっくり膨らんでいった。
入口付近の大きなサイン、足元に反射する床の冷たさ、そこを埋める人の流れ。
ハンドメイドのイベントは、作品そのものより先に「作り手の時間」が空気に滲む。
今日は“買う”よりも先に、“触れて確かめる日”にしよう。
そう決めた瞬間から、歩幅が少しだけ丁寧になる。

第一章|まず地図、つぎに呼吸

会場は東京ビッグサイト 西1・2ホール。入口で最初にやると楽になるのは、
会場マップを見て「今日はどの島を回るか」だけ決めること
全部を回り切ろうとすると、脳も足も先に疲れる。

案内板では、エリアがざっくり色分けされていた。たとえば——
アクセサリー・ジュエリー(複数エリアに分散)
ファッション
手づくりフード・ドリンク
クラフト・インテリア
素材・道具、イラスト・雑貨・アート
ワークショップ、ライブ/ペインティング

「ひとまずこの2色だけ」みたいに決めると、出会いの密度が上がる。
回遊の設計は、作品との距離を縮める準備運動みたいなものだ。

第二章|“白”の余白が、手の温度を引き出す(sureliy)

sureliy(陶器のお店)は、まず佇まいが静かだった。
白を基調にした器たちは、照明の下で「きれい」よりも「落ち着く」に寄ってくる。
マグの輪郭は、丸いのに頼りすぎない。手のひらの形を思い出させる、
あの“受け止め方”がある。

作り手さんの言葉が、作品の設計図をそのまま口にしてくれたのが印象的だった。

「形のこだわりが、ちょっと下をカーブにすることで、手のひらに沿うような、
持ちやすく温かみがある形にしていることと…」
「…飲み口に関しては、できる限り細くして、口あたりを良くして、飲みやすく作っております。」

手びねり”であることが、単なる技法の説明じゃなくて、触れたときのゆらぎとして残る。
派手じゃないのに、存在感が消えない。
そして「いつ使うのが合うか」という問いに対して、返ってきたのは決めつけない優しさだった。

「イメージとしては、夜…夕方とか、ホッと一息くらいの感じのイメージ。1日の最後にゆったりと…」
朝の戦闘モードじゃなく、夜の回復モード。その言葉だけで、マグの“居場所”が見えてくる。

朝の戦闘モードじゃなく、夜の回復モード。その言葉だけで、マグの“居場所”が見えてくる。

第三章|フード&ドリンクは、休憩じゃなくて「次の一歩」

HMJのいいところは、クラフトの合間に手づくりフード/ドリンクが
ちゃんと“作品”として並ぶところ。歩き疲れたから飲む、ではなくて、
ことで次のブースでの感度が戻る。
休憩は、鑑賞のための再起動だ

今回の写真には、ドリップバッグやブレンドの案内が写っていた。
味の方向性が「旨み」「リラックス」「ほろ苦」みたいに言葉で立っていて、
選ぶ側の迷いをちゃんと減らしてくれるタイプ。

第四章|戦利品の整理=記事の骨格

帰宅後に床へ並べた戦利品は、そのまま記事の目次になる。
今回の“連れて帰ったもの”は——
・LIBRA COFFEE SHOPの紙袋(ロゴ入り)
・「lala una coffee」のドリップ/パッケージ
(品種名が見える:ARABICA ATOK/LIBERICA BARAKO/ARABICA MT.APO
・「nano coffee roaster」のラベルが付いたパッケージ
・COFFEE CHERRY SYRUP(コーヒーチェリーのシロップ)

ここがポイントで、戦利品は「買った物」じゃなく「次の体験の種」になる。
ドリップは家で再現できるし、シロップは飲み物にもデザートにも化ける。
器は、その“再現”の舞台になる。イベントの中で完結しない買い物は、
記事の余韻を長くする。

家での再現TIP|“HMJの続きを家でやる”

ドリップバッグ:最初はレシピをいじらず、2回目から湯量だけ微調整
コーヒーチェリーシロップ
     炭酸+レモンで“軽い”方向に
     ミルクで割って“デザート”方向に
     ヨーグルトに少量、香りの輪郭だけ足す

器(マグ):夜の一杯を固定化する(“その器で飲む時間”を決めると生活に定着する)

ペアリング|「夕方に沈む甘さ」

・コーヒー×甘さは、“濃い”より“沈む”が似合う日がある。
・ドリップの香りが立つ日は、焼き菓子よりもミルク系
 (プリン、ミルク寒天、バター少なめのクッキー)
・シロップは、甘さの量じゃなく香りの線として使うと上品に収まる

買うならこの2本|迷ったら「用途」で決める

イベントの買い物は、味の優劣じゃなく“役割”で決めると後悔が減る。

毎日の一杯用(失敗しにくい):ドリップバッグ(定番枠)
気分を変える一滴用(伸びしろ枠):COFFEE CHERRY SYRUP(アレンジ枠)

日常に戻ってからこそ、イベントの買い物は完成する。

喫茶叙景文 ~人の手が集まる場所は、いつも少しだけあたたかい~

会場を出た瞬間、音がひとつ減る。
人の声も、アナウンスも、靴底のざわめきも、建物の中で増幅されていたぶんだけ、
外の空気に吸われていく。東京ビッグサイトの外側は、いつも少しだけ風が強い。
広い広場の光は硬質で、ガラスとコンクリートが、冬の輪郭をそのまま映し返している。
けれど手の中には、あの会場の温度がまだ残っている。
袋の紙の感触や、買ったものの重さ、ふとした拍子にこすれる音。
たぶんそれが、帰路の最初の灯りになる。

ハンドメイドのイベントは、買い物の場というより、時間の見本市に近い。
誰かの手が、どれくらいの速度で世界と折り合いをつけているのか。
どれくらいの忍耐で、ひとつの形を受け入れているのか。
機械の均一さではなく、揺らぎのあるものにだけ許される“幅”がある。
あの幅を、目で見て、指先で想像して、耳で聞く。人が多いのに静かな瞬間が生まれるのは、
そのせいだ。

白い器の前では、とくに声が小さくなる。白は、主張の色ではない。
けれど、余白の中に感情を置ける色だ。sureliyの器は、白を基調にしながら、
ただ白いのではなく、白のなかにあいまいさがある。
光の角度で、柔らかく沈むところと、少しだけ立ち上がるところがある。
釉薬の層が、薄い雲のように器の表面に留まっていて、指の腹でなぞると、
滑りきらない気配が残る。そこに“手”の仕事がいる。

マグの底の、あのわずかなカーブ。下にふくらみを持たせることで、
手のひらに沿うように——そう言葉にされると、器が急に生活の側へ寄ってくる。
棚に並ぶものではなく、握られるためのもの。見せるものではなく、
身体に預けるためのもの。持ちやすさという言葉は、
ときに便利すぎて輪郭が薄くなるけれど、あのカーブは、たしかに“握られる設計”だった。
掌が器を包むとき、器は掌の形を思い出させる。
人の体は、何年も同じ形のまま暮らしているのに、手に馴染むものに出会うと毎回驚く。
こんなに近くにあったのに、知らなかったみたいに。


飲み口の薄さの話も、すこしだけ胸に残った。
手びねりだから難しい、けれどできる限り細くして、口あたりを良くする。
薄い飲み口は、飲み物の温度の届き方を変える。唇に触れる面積が減るぶん、
熱は鋭くならずに、すっと移る。厚い縁の器が“飲む”を意識させるなら、
薄い縁の器は“流れ込む”に近い。飲みやすさというより、
喉に届くまでの道が整えられている感じ。器は道具であり、
道案内でもあるのだと、そんなことを思う。

「朝でも夜でも、特には」
使う時間帯を尋ねたとき、そう返ってきたのも良かった。器に用途を決めすぎない。
持ち主の暮らしを先回りしない。けれど、イメージとしては夕方、夜、ほっとひと息、
ゆったりと——と言われると、器の輪郭がふわりと色づく。
これは指示ではなく、提案だ。暮らしの中の、どこに置いてもいい。
でももし迷うなら、いちばん静かな時間に置いてみてと。
器が生活へ入ってくる入口を、そっと開けてくれる提案だ。

会場の中では、いくつもの“言語化”が働いていた。
味の方向性を「旨み」「リラックス」「ほろ苦」と書く札。選び方を迷わせない言葉。
買う側の心身が、イベントの情報量に負けないように支える言葉。
言葉があると、買い物が速くなるのではなく、買い物が“自分のもの”になりやすい。
人混みの中で判断するとき、言葉は小さな手すりになる。
だから私は、札やポップを見るたびに、誰かがきっと、文章を考えたのだと思う。
作品だけでなく、案内の文章にも作り手の気配がある。

帰宅後、床に並べた戦利品は、いつも少し照れくさい。
イベントの熱を、家の静けさが一度受け止めて、急に現実へ引き戻すからだ。
紙袋の色、ラベルの文字、パッケージの角。会場では立派に見えたものが、
部屋の蛍光灯の下ではふつうの“物”に戻る。けれど、ここからが本番でもある。
ハンドメイドの買い物は、会場で完結しない。
家で、使って、失敗して、よくて、また使って、その繰り返しの中でやっと馴染む。
馴染むとは、摩擦が消えることではなく、摩擦が自分の生活の音に溶けていくことだ。

ドリップバッグは、次の朝を少しだけ整える。
袋を破る音、湯を注ぐ音。抽出の時間は短いのに、心の速度はそこでいったん落ちる。
たった数分の動作が、暮らしの中の“間”を作ってくれる。
コーヒーチェリーのシロップは、甘さではなく香りの線として残る。
炭酸に落とすと、香りが空気へ逃げていくのが見える気がする。
ミルクに混ぜると、香りが白の中に沈んで、夜向きになる。
どちらも、イベントの続きを家でやる方法だ。
そして器は、時間の住所になる。夜に使う器を決めると、夜が少しだけちゃんと始まる。
夕方の終わりと夜の始まりの境界は、いつも曖昧だから、器が境界線の役をしてくれる。
仕事の気配、スマホの光、部屋の散らかり。
そういうものを一度脇へ置いて、器を持つ。掌に沿うカーブが、身体の緊張をほどく。
飲み口の薄さが、飲むという行為の雑味を減らす。器が、
こちらの“雑”を少しだけ減らしてくれる。

思い返すと、今日のいちばんの収穫は、物そのものというより、
作り手の言葉だったのかもしれない。下をカーブにする。手のひらに沿う。
飲み口はできる限り細く。
夕方、夜、ほっとひと息。
ゆったり。言葉は、作品の説明であると同時に、暮らしの提案でもある。
暮らしは、意識しないとすぐ荒れる。けれど、提案があると少し整う。
整うのは、完璧になることではなく、息がしやすくなることだ。

会場を歩いているあいだ、街もまた、息を揃えていた。
同じ方向へ進む人の列。目当てのブースへ向かう視線。
立ち止まり、触れ、頷き、会釈して、また歩き出す。
知らない人たちの動作が、ひとつのリズムになっていた。
大きな場所の中で、小さなものを選ぶという行為が、不思議なくらい静かだった。
買い物のはずなのに、どこか祈りに近い。
たぶん人は、手で作られたものに触れると、世界の速度が少しだけ落ちるのだ。
外の光はまだ明るい。
けれど、袋の中には夜が入っている。今日という一日が、
明日の暮らしへ静かに接続されていく。その接続のしかたが、私はいちばん好きだ。

店舗概要

1 住所:

東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-11-1)

2 アクセス:

ゆりかもめ「東京ビッグサイト駅」徒歩約3分/りんかい線「国際展示場駅」徒歩約7分
※江東おでかけ情報局

3 営業時間:

11:00〜18:00(2026冬)

4 備考:

主催はCreema。入場料は前売・当日で区分あり(小学生以下無料の案内あり)
※江東おでかけ情報局

5公式情報:
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