MENU

静かな二階で、生活の速度を落とす―― 朝霞・LAKIA SHOP/ラキアカフェ

朝霞駅南口のざわめきを抜け、
改札を出てから二、三分歩くだけで、街の音は一段階トーンを落とす。
飲食店の呼び込みも、派手な看板も、ここにはない。

ガラス張りの建物を前にしても、
視線を上げなければ、そこにカフェがあることには気づかない。
二階という高さは、偶然ではなく、意識的に選ばれた距離だ。

ここは、誰かと盛り上がるための場所ではない。
気分を高揚させる演出も、滞在を引き延ばす仕掛けも見当たらない。
ただ、日常の速度をいったん緩めるための場所として、
静かに、しかし確かな意志をもって用意されている。

第一章|ランドセル売り場の、その後

この場所はかつて、ランドセルの売り場だった。
子ども用品を軸に、朝霞という街と長く関係を築いてきた建物である。

しかし、コロナ禍によって流通は止まり、
製造も納品も思うように進まなくなった。
役目を終えたランドセルのサンプルは、福祉へと寄付されたという。

空いたスペースを、効率だけで埋める選択肢もあったはずだ。
それでも選ばれたのは、「静かなカフェ」という形だった。

仕事をしたい人。
本を読みたい人。
人の声が少ない場所を探していた人。
そうした声に応えるように、二階に席が用意された。

第二章|騒がしくならないための設計

店内は明るい。
けれど、視線を奪う要素は意図的に削ぎ落とされている。

白い壁、木のテーブル、余白を残した配置。
壁に掛けられた絵も、主役にはならない。
それらは空間を飾るというより、
思考が散らからないように整える役割を担っているように見える。

ここでは、長居をしてもいいし、
何も考えずコーヒーを飲むだけでもいい。
過ごし方を決めなくていいという自由が、
この店のいちばんの特徴かもしれない。

席に着いて、すぐに何かを始める人は少ない。
バッグを足元に置き、上着を椅子に掛け、
一度、深く息を吐く。

その一連の動作が、
この空間では不思議と自然に行われる。
「何かをしなければいけない場所」ではないからだ。

Wi-Fiや電源があるかどうかよりも先に、
ここでは“気持ちが落ち着くかどうか”が基準になる。
それを理解している空間は、実はとても少ない。

第三章|深煎りは、冷めてから語り出す

ホットコーヒーは、コロンビアとブラジルのブレンド。
深煎りらしい、まったりとした口当たりがまず前に出る。

舌に引っかかるような強さはなく、
飲み込んだあとに、わずかにフルーティーな余韻が残る。
それは長く居座らず、次の一口を邪魔しない。

アイスコーヒーは、ホットとは別の豆を使用している。
苦味はしっかりあるが、後味は驚くほど軽い。
飲み終えたあと、口の中が重くならない。

この二つは、似て非なる存在だ。
同じ「コーヒー」という名前でも、
役割と時間帯が、きちんと分けて考えられている。

補足|Qグレードとは
ここで使われている豆は、
ホット・アイスともにQグレード。

Qグレードとは、国際基準のカッピング評価において、
一定以上の点数を獲得したコーヒー豆だけが名乗れる品質認証だ。

派手な個性や尖りではなく、
安定したおいしさを保証する指標
この店の方向性を、そのまま言葉にしたような基準でもある。

深煎りという言葉には、
強さや苦さのイメージがつきまとう。
けれど、このコーヒーはその先に進まない。

強く主張しない代わりに、飲む側の状態をよく映す。
集中しているときは邪魔をせず、
ぼんやりしているときは、そっと輪郭を与える。

これは、
「おいしいコーヒーを出したい」というより、
「邪魔をしないコーヒーを置きたい」

という発想に近い。

第四章|アマレーナが、味に奥行きをつくる

セットで添えられる、アマレーナシロップのアイス。
一口アイスを食べてから、コーヒーを飲む。

バニラの甘さが、コーヒーの苦味を一度ほどき、
口当たりをまろやかに変える。

甘さは前に出過ぎず、余韻として静かに残る。
その残り香を、次の一口のコーヒーがリセットする。

味が一方向に流れず、
往復するように設計されていることが、ここで分かる。

補足|アマレーナとは
アマレーナは、
イタリアの一部地域で採れるチェリーをシロップ漬けにしたもの。

甘さの中に、ほのかな酸味とビター感があり、どこかリキュールを思わせる香りを残す。
単なるトッピングではなく、味に影と深さを加える存在だ。

第五章|アマレーナチーズケーキという、現在進行形

チーズケーキは、外側はしっかり、中はクリームのようにやわらかい。

フォークを入れても崩れず、口に入れると、静かにほどけていく。
職人が作るケーキならではの、構造の安定感がある。

そこに添えられたアマレーナが、チーズのコクに、別の輪郭を与える。
甘さとわずかなアルコール感が、後半にかけて印象を変えていく。

まだ出たばかりで、食べた人はほんの数人。
このケーキは、完成品というより、育っていく途中の味だ。

このチーズケーキが面白いのは、完成度の高さではなく、
まだ変わる余地を残しているところだ。

作り手が納得しなければ、世に出さない。
だからこそ、今ここにある味は、途中経過であり、現在地でもある。

食べる側もまた、 「評価する」というより、
立ち会っている」感覚に近い
この距離感が、常連を生む。

第六章|続けるために、派手なことはしない

—— LAKIA CAFEのこれから
この店の「これから」は、
大きく変わる未来ではない。

火を使えない制約。
一人で店を切り盛りする現実。
立地の分かりにくさ。
そのすべてを、すでに受け入れたうえで成り立っている。

だからこそ、
無理にメニューを増やさない。
完成しきらないケーキを、急いで出さない。
「こうだったらいいな」という声を、静かに拾う

お客さんからのリクエストで、
少しずつ形を変える。
常連と一緒に、味を育てていく。

このカフェが目指しているのは
話題になる店”ではなく、“なくなったら困る場所”だ。

静かに本を読み、
仕事を進め、
一冊の半分くらいで顔を上げられる場所。

LAKIA CAFEの未来は、
遠くにある理想ではなく、
今日もドアを開ける、という選択の積み重ねにある

喫茶叙景文 ~静けさを飲み干したあとで~

階段を上りきったところで、街の音が一段落ちる。
駅からほんの数分しか離れていないのに、ここでは時間の流れ方が違う。
ドアを開ける前に、深く息をひとつ。
それだけで、外でまとっていた緊張がほどけていく。

カップを手にすると、熱がゆっくりと伝わってくる。
最初のひと口は、まだ輪郭がはっきりしている。
けれど、急がなくていい。
この店のコーヒーは、冷める途中で語り始めることを知っている。

テーブルの上には、チーズケーキ。
フォークを入れると、抵抗は少ないのに崩れない。
口に運ぶと、濃度のある甘さが広がり、
そのあとを追いかけるように、深煎りの余韻が重なってくる。
どちらも主張しすぎないのに、どちらも引かない。
静かな拮抗が、口の中で続いている。

周囲を見渡すと、誰もが自分の速度で過ごしている。
パソコンを開く人、本を読む人、
ただ窓の外を眺めている人。
会話は少なく、音も控えめだ。
けれど、沈黙は居心地がいい。
ここでは、何もしないことにも理由が与えられている。

飲み終えたカップを置くと、
さっきまであった温度だけが、手のひらに残る。
立ち上がるとき、少し名残惜しさを感じるのは、
この場所が「通過点」ではなく、
確かに一度、生活を受け止めてくれたからだろう。

階段を下り、また街へ戻る。
音は戻り、歩幅も元に戻る。
それでも、舌の奥にはまだ、
甘さと苦味が溶け合った余温が残っている。

今日という一日を、
きちんと区切ってくれた場所が、ここにあった。

店舗概要

1 住所:

埼玉県朝霞市(朝霞駅南口エリア・駅徒歩約2〜3分)
※ビル2階/詳細住所は公式SNS・Googleマップにて要確認

2 アクセス:

東武東上線「朝霞駅」南口より徒歩約2〜3分
駅前の喧騒から一歩外れた、少し奥まった立地

3 営業時間:

店舗・曜日により変動あり
※最新情報は公式SNSにて要確認
定休日
不定休(公式SNSでの告知制)

4 備考:

・元ランドセル売り場を転用した静かな隠れ家カフェ
・仕事/読書など、「一冊分の時間」を過ごす人が多い
・火気使用不可のため、フードは冷製・焼成済み中心
・店主おひとりで運営中
・同ビル上階にレンタルスペースあり
・大きな看板はなく、知っている人が辿り着く店

5公式Instagram:
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする