スカイツリーふもと、風の通り道に小さなスタンド。余白の多い白袋、
音より所作で語る人たちが、静かに湯を落とす。
ーー「街と山」。ここは、街の喧騒に薄い稜線を引く休憩所だ。

第一章 定番は”アリチャ深煎” ーー 街の休憩所に似合う一杯
ラインナップは会場でも3種類すべてシングル。核にあるのがエチオピア・アリチャの深煎り。
「 開業当初からの思い出深豆で、年間契約している定番です。深煎りでもブドウやワインを思わ
せる華やかさがあって、落ち着いて飲んでいただけます。」
もう一方の2種類はコロンビア。うち一つは「飲みやすく質感がよい、地元の方に親しんでいただ
ける優しいコーヒー」。同じ原産国でも、わずかな設計差で表情が変わる。その幅もまた”街と山“
の景観だ。

第二章 均一というやさしさ ーー V60の所作メモ
焙煎は自家焙煎にて用意し、抽出はV60。
「 とにかく”均一な抽出“を意識しています。どこかだけ強く落ちると苦味や渋みなどネガが出やすい。
浅煎りは前半にウェイトを置いて良い成分を先に、深煎りは全体を通して優しく」
会場でも湯は細く、落ちる音は小さい。静かな手つきが、そのまま味の輪郭になる。

第三章 家でなぞる”2投と4投” ーー 再現TIP
道具はV60 などの円錐ドリッパーで十分。レシピはどなたでも扱えるシンプル設計。
数値は”目安“として活用し、好みに合わせて微調節を。
- 共通:蒸らし30秒(粉全体が均一に湿る量)。狙いは”均一”。
- 浅煎り:2枚抽出。前半7割・後半3割の配分。合計2:15前後
- 深煎り:4投抽出。各投は小さく、湯面を暴れさせない。合計2:30~2:45
- 湯温の目安:浅煎り=90~92℃/深煎り=88~90℃。
以下は再現TIP
[浅煎り] - 注湯は蒸らしを含めて2投。
- 1:蒸らし → 粉全体にお湯が行き渡る程度
注湯 → 粉全体にお湯が浸透するようにスプーンで撹拌 - 2:中心から螺旋状にドリッパー内の粉の淵まで、粉全体にお湯がかかるように注湯。
→その後、中心一点に静かに注湯し目的の湯量まで注ぐ。 - 3:スプーンで円を描くように軽く撹拌し、渦の対流を起こさせる。
(抽出速度を早めるため)
[深煎り] - 蒸らしを含めて5投
- 1:蒸らし、粉全体にお湯が行き渡る程度注湯。
- 2:中心から螺旋状にドリッパー内の粉の淵まで、粉全体にお湯がかかるように注湯。
→ ドリッパー内の湯量が2/3程度になるまで待つ。
※「2」の工程を3回繰り返す。 - 3:中心から螺旋状にドリッパー内の粉の淵まで、粉全体にお湯がかかるように注湯。
→ ドリッパー内の湯量が1/3程度になったらドリッパーを上げて抽出完了。
‣お湯の温度は共通で、92℃前後。
‣抽出時間も共通で2:30~
第四章 甘いきわたるようにー ペアリングノート
お菓子は自家製ではなく、千葉県松戸市「ym.」の焼き菓子が定番。
「 スコーンはザクザクでボリュームがあります。カフェラテのようなクリーミーなもの
と相性がいいです。キャロットケーキは浅煎りと…」
深煎りアリチャのブドウ様の華やぎにはスコーン。浅煎りコロンビアの”逃げる甘さ“
には、スパイスがやさしいキャロットケーキ。どちらも、街の午後を少しだけ甘くする。


第五章 白袋の向こう側 ーー 買うならこの2本
- 1,エチオピア・アリチャ(深煎り):店の”柱“まずは会場と同じ淹れ方で。
- 2,コロンビア(飲みやすい方): 家族や客ともシェアしやすい一本。浅煎りを選べば、
季節の果物やキャロットケーキと好相性。
白袋のデザインは最小限。説明は短いが、余白は充分。味の余韻と同じだ。

付録 歩いて行きたい”本所吾妻橋のスタンド”
フェスで好みが決まったら、本所吾妻橋エリアの実店舗へ。同じ豆を”均一“の所作で受け取ると、
家飲みの精度が一気にに上がる。
白いカップを片手に、隅田川沿いを散歩するのが似合う。

喫茶叙景文
白い袋は、雲の欠片のように軽い
注がれる湯の細さは、街の呼吸を整えるメトロノーム
ブドウの影が舌に落ち、塔の稜線が少し近づく。
休憩所は、いつも静かに在る。名は”街と山“。
行きも帰りも、そのあいだの時間がうまい。
基本情報
- 1住所:
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東京都墨田区吾妻橋2-2-6 1F
- 2アクセス:
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都営浅草線 本所吾妻橋駅 A1出口すぐ(徒歩約1分)
- 3営業時間:
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・平日 8:00~16:00
・土.日.祝 10:00~18:00
・現在は無定休にて営業 - 4備考:
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地下に焙煎所(Roastery)併設
- 5公式SNS:
-
Instagramです。












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