伊勢神宮・内宮から続く石畳を抜けると、視界の端に五十鈴川のきらめきが入ってくる。
その川沿いに、木造の建物がせり出すように立っていて、白い看板に
「五十鈴川カフェ」 の文字が揺れている。
階段をのぼり、引き戸を開けると、正面には川を切り取るような大きな窓。
艶のあるカウンターテーブルに、水面の光と障子の明かりがゆらゆら映り込む。
「川とコーヒーをいっしょに味わう場所」。
そんな一文が似合う、静かな喫茶室だった。


第一章|おかげ横丁の川べりにひらかれた喫茶室
五十鈴川カフェは、伊勢神宮・内宮そばの観光エリア おかげ横丁 の一角にある喫茶店。
石垣の上に張り出した木造の建物で、店内のどの席からも五十鈴川を眺められる。
扉をくぐると、窓に沿って細長く伸びるカウンター席。
奥には畳の間があり、座布団に腰をおろすと、川がまるで縁側のすぐ下を流れているよう
に感じられる。
ショーケースには、プリンやロールケーキ、チョコレートケーキにぜんざい。
メニューには、マイルドブレンド/ストロングブレンド をはじめ、カフェオレやホット
チョコレート、クリームソーダなど、喫茶店らしい飲み物が並ぶ。
川の音とざわめきから半歩だけ距離をとった、ゆるやかな時間が流れている。


第二章|マイルドとストロング、川辺で選ぶ二つのブレンド
五十鈴川カフェのコーヒーは、マイルドブレンド(浅煎り)とストロングブレンド(深煎り)
の二本柱。
私が飲んだのは、まずマイルドブレンド。
ガテマラ・コロンビア・ブラジルのブレンドで、酸味はおさえめ。
ひと口目はすっと入ってくるのに、飲み込んだあとに香ばしい余韻が長く残る。
川の流れを眺めながらゆっくり味わうと、カップの中にだけ小さな焚き火が灯っているような、やわらかな苦味が続いていく。
一方でスタッフさんに教えていただいたストロングブレンドは、
タンザニア(キリマンジャロ)とコロンビアのブレンド。
コクがあり、酸味をぐっと抑えた深煎りで、
「キレのある苦味を楽しめる一杯」とのこと。
甘いケーキや和三盆プリンと合わせるならマイルド、
川辺でじっくり珈琲そのものと向き合うならストロング、と飲み分けるのも楽しそうだ。


第三章|プリンと「くるり」、川を眺める甘い時間
コーヒーに合わせたのは、ショーケースの中で静かに光っていた 「和三盆プリン」
とロールケーキ 「くるり」。
プリンは、表面のカラメルが さらりと薄い タイプ。
最初のひと口はあっさりと優しい甘さで、後から カスタードの卵感がじんわり濃く残る。
マイルドブレンドの余韻と重なり合って、舌の上に小さな層をつくっていく。


ロールケーキ「くるり」は、きめ細かなスポンジの中に、生クリームと刻んだ栗がくるり
と巻き込まれている。
スポンジはしっとり、クリームは軽やかで、ところどころに顔を出す栗の食感が楽しい。
「川を眺めながら食べる一本巻き」 と呼びたくなる、素朴でやさしい一切れだ。
窓の外では、冬の川面が淡く光り、
テーブルの上では、コーヒーとおやつが静かに並んでいる。
その距離感が、旅先の午後をゆっくりとほどいてくれる。

第四章|川の余韻を持ち帰るドリップバッグとおやつ
会計の横には、小さな物販コーナーがひらけている。
棚の上に並ぶのは、五十鈴川ブレンド のドリップバッグや、伊勢志摩ブレンド、
デカフェのパックたち。
横には、味わいマップがそっと置かれていて、
「キレ」「コク」「すっきり」「まろやか」といった言葉で、豆ごとの個性が示されている。
ガラス瓶と紙パックに入った 「カフェオレの素」 も目をひく。
牛乳で割るだけで、五十鈴川カフェの味わいをそのままカフェオレで楽しめるという。
旅から戻った朝に、これをグラスに注いで牛乳を足せば、
台所の窓から見える景色も、少しだけ川沿いの喫茶店に近づきそうだ。
かごの中には、コーヒーかりんとう の袋がたっぷりと積まれている。
コーヒーでコーティングしたカリッとしたかりんとうは、
ドリップバッグで淹れた一杯のお供にちょうどいい小さなおやつだ。
窓辺で過ごした時間を、そのまま箱や袋に詰め直したような品揃え。
「またいつか来ます」と心の中でつぶやきながら、
とりあえず今日のところは、このおみやげたちに五十鈴川の余韻を託して帰ることにする。


喫茶叙景文 ~川面と障子のあいだで~
窓際のカウンターに座ると、
テーブルの黒い天板に、川の光と障子の明かりが溶け合っている。
ネルの布をくぐったコーヒーが、
静かにサーバーへと落ちていく音だけが、
店内のざわめきから少し離れた場所で響いている。
マイルドのカップから立ちのぼる湯気の向こうで、
川面がさらさらと揺れ、
対岸の木々が薄く影を落とす。
プリンの表面にスプーンを入れると、
薄いカラメルがすっと割れて、
卵の香りがゆっくりと立ちのぼる。
一口ごとに、コーヒーの苦味がやわらぎ、
代わりに甘さの輪郭だけが残っていく。
ロールケーキ「くるり」を少しずつ崩していくうちに、
時間の方が先にほぐれてしまう。
川の流れも、人の流れも、
障子一枚の向こうで続いているのに、
この席だけは、しばらく取り残されたままでいいと思う。
カップの底が見えたころ、
五十鈴川のきらめきが、
ようやく自分の速度に追いついてくる。

店舗概要
- 1 住所:
-
三重県伊勢市宇治中之切町12(おかげ横丁エリア内)�
公益社団法人 伊勢市観光協会
- 2 アクセス:
-
伊勢神宮・内宮から徒歩すぐ。
最寄り駅:近鉄「五十鈴川」駅からバスで「内宮前」下車、徒歩数分。
※詳しいアクセスはおかげ横丁公式サイト内「五十鈴川カフェ」ページを要確認。�
公益社団法人 伊勢市観光協会
- 3 営業時間:
-
9:30〜17:00(L.O.16:30)
※季節やイベントにより変動あり。最新情報は公式サイト等で要確認。�
公益社団法人 伊勢市観光協会
- 4 備考:
-
・年中無休(臨時休業の可能性あり)�
・公益社団法人 伊勢市観光協会、ほかに 1 件
・コーヒーは一杯ずつネルドリップ抽出
・豆は「中村珈琲工房」による焙煎豆を使用(店員さんによるお話)
・プリン、ロールケーキ「くるり」、ガトーショコラ、タルト、ぜんざいなど、
スイーツメニューが充実・川沿いカウンター席と畳の座敷席あり
- 5 最新情報:
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公式サイト。










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