会場のざわめきの中で、ふいに足が止まった。
香り、ではなく——言葉が先に立ったからだ。
「『美味しい』の先にある『面白さ』を。」
この一文は、コーヒーを“好き”で終わらせない。
飲み手の側に、小さな責任と好奇心を同時に置く。
かつて世界を席巻し、歴史に埋もれた希少品種。ひと口で既成概念を覆す「圧倒的な個性」。
太陽の国フィリピンから、手摘みの温かさと共に。
あなたの常識を変える、記憶に残る出会いをお届けします。
——その宣言は、過剰に盛られていない。むしろ、こちらが試されている感じがした。
第一章|太陽の国の、静かな入口
フィリピンは“コーヒーベルト”のど真ん中にいる。
太陽光の温かい気候と豊かな土が、豆を育てる。けれど、ただ南国っぽい甘さ
や明るさに回収されないのが、lala una coffee の面白さだ。
聞けば、フィリピン産100%の「Kape de filipina(カペデフィリピナ)」を扱うという。
18世紀頃には世界でも上位の生産量を誇った時代があり、しかし木の病気(さび病)などで状況が変わり、いまは小規模農家が栽培を受け継ぐ——そんな背景が、豆の味の“陰影”として残っている。
一杯は嗜好品で、生活の贅沢で、そしてときどき、歴史の断片でもある。このブースは、その順番を丁寧に入れ替えてくる。
第二章|美味しさの先にある、心地よい循環
lala una coffee のコピーの中で、もう一つ強い柱がある。
「美味しさの先にある、心地よい循環。」
美味しいから飲む。
その選択がフィリピンの農家を支え、京都の農園と連携し、
飲み終えたコーヒーカスは堆肥化され、京都の土を豊かにする。
この流れが、きれいごととしてではなく、生活の手触りのまま語られているのがいい。
“正しさ”を押しつけない循環は、だいたい強い。
無理のない設計は、続く。続くものは、文化になる。
味わいの奥に、ちゃんと「続けるための形」がある。だから、飲み手の心もほどける。

第三章|BARAKO(リベリカ種)|深く、太く、記憶に残る
lala una coffee を“一度で説明”しようとすると、たぶんこの豆に辿り着く。
BARAKO(リベリカ種)
深く、太く、記憶に残る。
味わいの軸は スモーキー&フルーティ。
香りの像として立ち上がるのは、カカオニブ、そして意外にも ジャックフルーツ。
そこへ ダークチョコレートみたいな風味が重なって、余韻が長く残る。
「リベリカ種」と聞くと、知識の棚に置きたくなる。
でもBARAKOは、棚に置かせない。
飲んだ瞬間に、“舌の中で歴史が動く”感じがする。スモーキーな野性味と、
熟した果実の気配が交差して、ひと口の情報量が多い。
合わせたいのはしっかり濃いお菓子。
ダークチョコ、ブラウニーは鉄板。
チョコの苦みとカカオの香りが、BARAKOの“太さ”をさらに太くする。
そして地味に刺さるのが、名前の意味。
BARAKOは「強い」という意味だという。
ただしこの“強さ”は、刺激の強さではない。
香りと余韻が、最後までほどけずに残る強さ。

第四章|Mt.Apo(アラビカ)|朝にすっと、果実がほどける
次に選びたいのは、同じフィリピンでも表情の違うアラビカ。
Mt.Apo(アラビカ)
メモ:男性向け/朝にスッキリ/フルーティ/ハニー製法。
ハニー製法の豆は、甘さの出方が“香りとして”やってくることが多い。
Mt.Apoはそのタイプで、口当たりは丸く、飲み下したあとに果実の気配が遅れてくる。
香りの方向は カカオ、ブラウンシュガー、トロピカルフルーツ。
ブラックでもアイスでも、酸が“嫌な角度”で出にくい設計に感じる。
ペアリングは、チーズケーキが強い。
乳のコクと酸味が、Mt.Apoのフルーティさに橋をかける。
甘いのに重くならない。朝に置いても夜に置いても破綻しない“丸さ”がある。

第五章|Atok(アラビカ)|ナッツの香ばしさ、やさしい丸い酸味
最後に、日常の隣に最も置きやすい一杯。
Atok(アラビカ)
メモ:なっつ/香ばしい/味がついたもの・エクレアおすすめ。
これも正解に近い。
Atokは、まず香ばしさが先に来る。
ナッツの香りが立ち、酸は尖らず、優しく丸い。
“派手な主張”ではなく、食べ物の香りを引き立てる側に回れる豆だ。
ここで効くのが「味がついたもの」。
エクレアのカスタードや、ナッツ・キャラメル・バターの香り。
そういう菓子の輪郭を、Atokは崩さずに受け止める。
甘さに寄り添いながら、口の中を重くしない。
このバランス感は、日常に強い。

第六章|ペアリング|“面白さ”を逃がさない
1)BARAKOは「濃い菓子」と合わせる前提で淹れる
BARAKO単体で完結させようとすると、情報量が多すぎて疲れることがある。
ダークチョコ/ブラウニーとセットで、味の座標が定まる。菓子があると、
スモーキーさが“野性”ではなく“奥行き”に変わる。
2)Mt.Apoは「朝の一杯」に置くと強い
スッキリしたい朝に、酸が尖る豆は避けたくなる。Mt.Apoは、
フルーティさが“肌触り”として出るから、朝に向く。チーズケーキを合わせるなら、
コーヒーは少し軽めに。
3)Atokは「香りがある菓子」と喧嘩しない
エクレア、ナッツ、キャラメル、バター。
香りが強い菓子ほど、コーヒーが主張しすぎると崩れる。
Atokはそこを崩さない。“ちょうどよさ”を、ちゃんと設計している味がする。
喫茶叙景文 ~フィリピンの希少種BARAKOとlala una coffee~
紙の白は、光を少しだけ吸う。
会場の賑わいから離れた指先で、袋の角を撫でると、そこに遠い国の輪郭がある。
フィリピン。太陽の国。
けれど、ここにあるのは眩しさだけではない。
土の匂い、手摘みの温度、そして、時間の沈み。
「『美味しい』の先にある『面白さ』を。」
言葉は、香りと同じで、先に届く。
飲む前からもう、こちらの常識に触れてくる。
“コーヒーとはこういうもの”と決めていた枠を、少しだけずらしてしまう。
BARAKOのスモーキーさは、夜の縁に似ている。
暗さではなく、奥行き。カカオの影が落ち、
果実の気配が遅れて現れて、余韻が長く伸びる。
飲み終えたのに、口の中にまだ言葉が残る。
圧倒的な個性とは、派手な衝撃じゃなく、忘れにくさのことだと知る。
そして思い出す。
美味しさの先にある、心地よい循環。
飲み手の選択が、フィリピンの農家へつながり、京都の農園へ渡り、
残ったカスは堆肥になって、土へ還る。
それは“正しいこと”というより、続いていくことの、静かな設計だ。
一杯は小さい。
けれど、小さいものが世界を変えることを、コーヒーは昔から知っている。
夜の底で、まだ温かいカップの余熱みたいに、
この出会いは、あとからじわじわ効いてくる。

店舗概要
- 1 住所:
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固定店舗情報は写真内で確認できず。公式(Instagram/販売ページ)で要確認。
- 2 アクセス:
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同上。イベント出店/オンライン中心の可能性が高いので出店情報の確認推奨。
- 3 営業時間:
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同上。
- 4 備考:
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・フィリピン産コーヒー(Kape de filipina)を軸に、希少品種BARAKO(リベリカ)などを展開。
・「美味しさの先にある、心地よい循環。」(農家支援→京都農園連携→コーヒーカス堆肥化) - 5公式Instagram:










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