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未完成を飲むという贅沢。チェンライ発、生活の燃料になる一杯|Elephant Roast Co.

深煎りのコーヒーは、ときどき「強さ」を置き土産にする。
飲み終わったあとも舌に残り、次の会話の途中まで、影のようについてくる。

けれど、この一杯は違った。

深いのに、引かない。
口に入れた瞬間の濃さは確かにあるのに、後味はすっと手を離す。
味ははっきりしていて、輪郭が崩れないまま、潔く去っていく。

それは、特別な日の“儀式”より、平日の生活に寄り添う設計だった。
今回紹介するのは、タイ北部・チェンライの山で育った
アラビカを日本に届ける小さなロースターブランド、Elephant Roast Co.(エレファントロースト)
そしてこれは、依頼モニタリングとして体験した記録です。

第一章|旅の途中で拾った「日常の味」

Elephant Roast Co.の言葉には、最初から“派手さ”がない。
その代わり、生活に沈む温度がある。

ブランドを動かしているのは、世界を旅する時間の中で出会った感覚
――旅先の街とカフェの空気に、心が持っていかれたことが始まりだという。
けれど、目指すのは「品評会で100点の豆」ではない。

現地の人が毎日飲む、愛すべき日常の味
気取らず、生活に溶け込み、飲み続けられる味。
その理想が、焙煎や抽出の“やさしさ”として表れている。

このブランドの芯は、ここにある。
美味しいを、特別にしすぎない。
一杯を人生のイベントにしないことで、むしろ長く続く相棒になれる。

第二章|チェンライという土地が育てる、静かな深さ

タイ最北部のチェンライは、ラオスやミャンマーと国境を接する山岳地帯。
バンコクからは距離があり、中心都市チェンマイからさらに北へ進んだ場所にある。

チェンライの高地は、標高1,200〜1,600m
昼夜の寒暖差が大きく、朝には霧が立ちこめる。
この環境が、豆に上品な甘みと豊かな香りをもたらすという。

派手さはない。けれど、飲むほどに深みが出る。
Elephant Roastが扱う豆の説明には、
そんな「静寂の中で熟す」感覚が繰り返し出てくる。

さらに、この地域にはアカ族・ラフ族などの山岳民族が暮らし、
文化や伝統、そして土への敬意が今も息づいている。
コーヒーを飲むことは、ただ味を楽しむだけではなく、
彼らの暮らしや想いに触れることでもある――そんな視点が添えられていた。

「美味しいコーヒーを届ける」だけでなく、その先にある土地のストーリーを伝える。
だからこそ、チェンライという場所から始めたい。
自然と人の手が織りなす“奇跡の一粒”を、日々へ。

この語り口が、ブランドのトーンを決めている。

第三章|おすすめの飲み方:ブラックの輪郭、ミルクの懐

基本はホットのブラックで、豆の個性を感じてほしい。
けれど、タイの豆はボディ(コク)がしっかりしているので、
ミルクとの相性も抜群だという。

そして季節が進んだら、氷を山盛りに入れたグラスで急冷アイスコーヒー
現地の屋台っぽく、という提案がいい。
丁寧”だけに寄らない。生活の場面に落とす発想が、ずっと一貫している。

第四章|ベストな抽出方法:神経質にならない強さ

面白いのは、「ざっくり淹れても美味しい」という言い方。
もちろん雑にしていい、ではなく、日常で継続できる再現性を大切にしている、
ということだと思う。

推奨されていた目安はこう。

湯温:90〜92℃(少し高めで香りを引き出すイメージ)
・挽き目:中細挽き
・レシピ(目安):豆15gに対してお湯230ml程度

(毎日飲みやすい、すっきりめの比率)

この“すっきりめの比率”という言葉が、今回の味と直結していた。
実際に飲んだ印象も、まさにそこへ着地する。

第五章|飲んだ3種のレビュー:深いのに、余韻は軽い

今回飲んだ三種は、どれも共通していた。
深めで、味ははっきり。なのに後味は引かない。
苦さはある。でも続かない。
深煎りの“重さ”の代わりに、輪郭の良さが残る。

一緒に飲んだカフェのマスターも、同じ点を言っていた。
「深煎りの中でも、これは飲みやすいね」と。

ここからは、ひとつずつ。

1)ブラックタイ:入口は濃い、出口はベリーの影
最初に受ける印象は「濃い」。
しっかり深煎りの圧がくる。

けれど、意外なほど後味が引かない。
舌に残るのは苦さではなく、余韻にベリーっぽい気配。
香りの奥に、赤い果実の影がちらっと見える。

深煎りで果実の気配が残るのが面白い。
焙煎の強さの中に、香りの“高い部分”がきちんと生きている。

2)フレンチロースト:苦味はある、でも整っている
フレンチローストと聞くと、重厚に引きずる苦味を想像する。
ところがこれは、苦味があるのに、やっぱりスッキリしている。

苦味が「刺さらない」。
丸い。受け止めやすい。
飲み進めても、口の中が暗くならない。
「万人受け」がしっくりくる。深煎りが苦手な人にも、入口として勧めやすいタイプ。

3)タイエスプレッソ:ビター香の奥に、ナッツの手触り
香りの立ち上がりはビター。
ただし味は“ビター一辺倒”ではなく、甘味と酸味のバランスがある。
ビターが先導して、あとから丸みが追いかけてくる印象。

ナッツっぽい手触りが出て、質感がふっと滑らかになる。
「飲みやすさあり!」というメモの通り、濃さの気配はあるのに、疲れない。
そしてやっぱり、苦さは残していかない。

第六章|フレーバーとペアリング:ドイ・チャンの“香ばしさ”

今回送られてきた豆は、「ドイ・チャン」エリア。
特徴として案内されていたのは、次のイメージ。

・ナッツやチョコレートのような香ばしさとコク
・酸味は控えめで、飲みやすいタイプ

私の体感としても、ここは一致する。
深いけれど、酸が尖らないから、すっと飲める。
そして香ばしさが、最後に“温かい”形で残る。


ペアリング|バターの輪郭で、コクをほどく
合うと提案されていたのは、バターたっぷりの焼き菓子
(フィナンシェなど)やチョコレート。

これはもう、王道に強い。

香ばしさ×香ばしさで、コクが立体になる。
コーヒーの苦味が丸まり、甘さが輪郭になる。

そして意外枠として、「あんこ」などの和菓子
これが、確かに合う。
深煎りの香ばしさが、あんこの甘さを“重く”しない。
むしろ、甘さの影を軽くして、後味を整える。

第七章|どんなシーンで:儀式ではなく、相棒として

ここがElephant Roast Co.の真骨頂だと思う。

「儀式」のような特別な時間ではなく、
「仕事中の相棒」や、「朝、スイッチを入れる一杯」として飲んでほしい。

生活の燃料になるコーヒーを目指している――この言い方が、
とても正直でいい。
毎日飲むものは、日々を変える。
派手な感動より、静かな継続のほうが、生活には効く。

今回の“深いのに引かない”後味は、まさにこの思想の味だ。
仕事中に飲んでも、仕事を邪魔しない。
朝に飲んでも、眠気を叩きつけるのではなく、背筋を整える。

第八章|今後の展望:「未完成を公開する」という宣言

Elephant Roast Co.は、「未完成を公開する」をテーマにしているという。
完璧なブランドを作ってから売るのではなく、
関わりながら、混ざり、成長していく過程そのものを楽しんでもらえるブランドになりたい。

この言葉は、買い手に“参加席”を渡してくる。
消費者で終わらず、関係者として一杯を飲める。

いずれはタイの他の産地(ドイ・トゥンなど)も紹介していきたい。
そして、いつかチェンライでカフェをオープンして、
現地の人々と新たな観光名所になれるように頑張りたい
――そんな未来も語られていた。

豆の未来が、土地の未来へつながっている。
この視点が、ブランドに奥行きを作っている。

第九章|家での再現TIP:深さを保ち、軽さで終える

ここからは、実際に家で「深いのに引かない」を再現するためのコツ
1)湯温は90〜92℃:香りの輪郭を立てる
少し高めの湯温は、香りを引き出しやすい。
深煎りは“焦げ感”に寄りやすいけれど、香ばしさの良い部分を取りたい時は、この温度帯が効く。

2)比率は15g:230ml:毎日飲める軽さへ
すっきりめの比率”という言葉通り、
濃くしすぎない設計が、後味の軽さにつながる。

3)重く出たら:挽き目 or 湯量で調整
・重い/苦味が長い → 挽き目をほんの少し粗く、または湯量を少し増やす
・薄い/香りが立たない → 湯温を上限側(92℃)へ寄せる、または注ぎを丁寧に

神経質にならず”という言葉は、こういう調整の余地があるということだと思う。
日常の手の中で、味が整う。

喫茶叙景文 ~街の息を揃えるあいだ~

深煎りは、ときどき夜を連れてくる。
けれどこの一杯は、夜のまま居座らない。
濃さを置いていかず、香りだけを、静かに手渡す。

チェンライの霧。
山の朝。
土を敬う暮らし。
その遠い手触りが、カップの縁からこちらへ滲んでくる。

未完成を公開する――その言葉は、弱さではなく、呼吸みたいなものだった。
完成しないから、続く。
続くから、生活に溶ける。

仕事の合間に、ふっと湯気が立つ。
朝、スイッチが入る。
象の歩幅みたいに、急がず、でも確かに前へ進む。

飲み終わったあと、舌に残るのは重さじゃない。
軽い余韻だけが、次の一日を押していく。

店舗概要

1 住所:

2 アクセス:

3 営業時間:

4 備考:

タイ北部チェンライ産アラビカ中心/抽出目安:湯温90〜92℃・中細挽き・15g:230ml/最新情報は要確認

5公式情報:

本記事は依頼モニタリングとして商品提供を受け、実飲レビューをもとに作成しています。記載内容は筆者の感想です。

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