豆の袋を開けたとき、
ふわりと立ち上る香りに、少しだけ時間が止まる。
それは派手さのない、落ち着いた匂いだった。
甘さがあり、どこか土の気配も残していて、
「これは急いで飲むものじゃないな」と自然に思う。
Authentic Coffee Supplier のコーヒーは、
最初から主張してこない。
だからこそ、こちらの呼吸が整うまで待ってくれる。
この一杯は、説明より先に、
姿勢を伝えてくるコーヒーだ。


第一章|ありのままの豆を、ありのままに
このブランドの根にある考え方は、とてもシンプルだ。
「良いコーヒーは、土地と農家、そして豆そのものへの敬意から生まれる」
インドネシアは世界有数のコーヒー産地でありながら、
その価値が十分に伝わりきっていない豆も多い。
Authentic Coffee Supplier は、その“届いていない部分”に目を向けた。
大切にしているのは、量ではなくクオリティ。
選ばれた地域からの丁寧なソーシング。
適切なポストハーベスト。
産地の個性を消さず、引き立てる焙煎。
「ちゃんとしたコーヒー」ではなく、
ありのままのコーヒーを届けるという選択。
そこには、誤魔化さない覚悟と、
自分たちが誇りを持って飲めるものだけを世に出す、
静かな自信がある。


第二章|数字は語る。でも、語りすぎない
Instagramに並ぶ投稿には、
標高、プロセス、モイスチャー、欠点値といった情報が並ぶ。
たとえば、
東ジャワ・マランのロブスタ。
標高700〜1,000m、ナチュラルプロセス。
あるいはアルジュノのアラビカ、
1,200〜1,700m、同じくナチュラル。

どれも、きちんと開示されている。
けれど、それが誇示に見えないのはなぜだろう。
それは、数字を“主役”にしていないからだと思う。
トレーサビリティは、信頼のためのもの。
驚かせるための装飾ではない。
情報は揃っている。
でも、最後に判断するのは、飲む人の感覚だ。
第三章|まずはブラックで、という提案
おすすめの飲み方として、
彼らがまず挙げるのは「ホットのブラック」。
理由は単純だ。
その方が、産地由来のキャラクターを、
いちばん素直に感じられるから。
とはいえ、飲み方を縛ることはしない。
少量のミルクを加えれば、
チョコレートやナッツのニュアンスが前に出る。

アイスにすれば、
甘さとボディのバランスが、心地よく残る。
どの飲み方にも共通しているのは、
急がなくていいということ。
このコーヒーは、
静かな朝や、集中したい時間、
午後にひと息つく瞬間に、よく似合う。
第四章|湯を落とすあいだ、余計なものが消えていく
お気に入りの抽出方法は、ハンドドリップ。
なかでもV60のようなドリッパーを使った淹れ方だという。
豆は15〜18g。
挽き目は中挽き。
湯温は90〜94℃。
比率は1:15。
抽出時間は2分半から3分ほど。

数字だけ見れば、特別なことはない。
けれど、この「過不足のなさ」が、このコーヒーにはよく合う。
ゆっくりとお湯を落とすあいだ、香りが立ち、雑味が抜け、
輪郭だけが残っていく。
よりボディを楽しみたいなら、フレンチプレスも相性がいい。
コクと深みが、素直に前に出てくる。
道具は違っても、目指しているのは同じ場所だ。
第五章|派手じゃない。でも、ちゃんと残る
フレーバーは、穏やかだ。
なめらかなボディ。
チョコレート、ローストナッツ、ほのかなキャラメルの甘さ。
酸味は控えめで、後味はクリーン。
一口目より、二口目。
二口目より、飲み終わったあとに、じわっと印象が残るタイプの味。
ペアリングも、主張しすぎないものがいい。
ダークチョコレート。バタークッキー。
クロワッサンやバナナブレッド。
どれも、コーヒーを引き立てるためにある。


第六章|この一杯が似合う人
このコーヒーは、
誰かに見せるための一杯ではない。
クオリティやクラフトマンシップを大切にする人。
静かな時間を好み、流行よりも“正直な味”を選ぶ人。
朝、心を整えたいとき。
作業に集中したいとき。
午後、少し立ち止まりたいとき。
派手さはない。
でも、いつでも頼れる。
そんな存在でありたいと、このコーヒーは静かに語っている。


喫茶叙景文 ~帰路の手に残る香り~
飲み終えたカップの底に、
少しだけ香りが残っている。
それは、土地の気配であり、
人の手の温度であり、急がなかった時間の証拠だ。
このコーヒーは、
語りすぎない。
だからこそ、
こちらの時間が、静かに深くなる。

基本情報
生産国:インドネシア(東ジャワ)
主な産地:マラン、アルジュノ周辺
取り扱い品種:アラビカ/ロブスタ
プロセス:ナチュラル、フルウォッシュド ほか
思想の核:オーセンティシティ/トレーサビリティ/正直なフレーバー
公式サイト:













コメント