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漢方みたいに、花がひらく|EPICE CAFE(さいたま COFFEE FESTIVAL)

冷たい空気の日ほど、香りはよく見える。
会場の白いテントの中で、湯気は小さな旗みたいに立って、カップの縁でゆっくりほどけていく。

EPICE CAFEのブースは、派手に押し出すというより、“整っている”ほうで目が止まる。メニューの言葉が整理されていて、カップの運び方が静かで、動線が無理をしない。その時点で、飲む前から味の方向が見える。

今日ここで出会ったのは、中国・雲南省プーアルのカフェラテ
土地の匂いが先に来て、遅れて、花がひらく。
コーヒーが「飲み物」から「土地の説明」に変わる瞬間が、ちゃんと用意されていた。

第一章|EPICE CAFEという店の輪郭:スペシャルティ“だけ”で組み立てる

EPICE CAFEの芯は、最初から明快だ。
ケイさんが拾ってくれた公式投稿の言葉を借りれば、「スペシャルティコーヒーのみ」。
トレーサビリティ、サステナビリティ、カップクオリティ——その基準を越えた豆だけを扱う、
という宣言がある。

ここで大事なのは、“良い豆を使う”という一般論じゃない。
運用の仕方が書かれているところ。

エスプレッソ系(カフェラテなど)は、シーズナルのオリジナルブレンドで組む
ドリップは、基本的にシングルオリジンを楽しめる設計
季節のブレンドは、その季節ごとに変わる前提
デカフェも常設の意識がある(“最低1種類は常備”という運用)

この構造は、味のためだけじゃなく、選ぶ人の迷いを減らすための設計にも見える。
ラテで“店の表情”を出し、ドリップで“豆の素性”を見せる。
イベントみたいに情報が多い場ほど、この二段構えは効く。

しかも、EPICE CAFEは「最近出たばかりの中国豆を、店を始めてから少しずつ扱うようになった」と、
導入の仕方まで正直に語っている。
この慎重さが、味の印象にそのまま残る。派手に勝たない。けれど輪郭が崩れない

そして店舗としての実在も、ちゃんと地面に繋がっている。イベントで出会っても、そのまま「日常」に帰せる場所に店がある、というのは大きい。

二章|この日の一杯:雲南プーアルが“土”を連れてくる

飲んだのは、中国 雲南省 プーアル トリプルアナエロビックナチュラル(カフェラテ)

最初の印象は、「アジアの土地を感じる」「漢方で使われてるかのような風味」
これ、比喩じゃなくて体感として起きる。

口に入れた瞬間、甘さやフルーティーが前に出るタイプではない。
先に来るのは、乾いた木、薬草、土の影。
どこの豆?”と問われたら、確かに中国と言いたくなる説得力がある。

でも、そのまま重たくならない。
土っぽさのあとに、ふわっと残るフルーティーさが花を開く。
この「遅れて咲く」感じが、プーアルの面白さをラテの中に残している。

ラテにすると、ミルクが輪郭を丸める代わりに、香りの層が平板になりがちだ。
なのに、この一杯は平板にならない。
土の層が下に敷かれて、その上で花が咲く。
飲むたびに、“優しい花が口の中に咲く”という感覚が更新される。

派手じゃないのに、記憶が長い。
EPICE CAFEの設計思想(ラテで店の表情を出す)が、ここで実感に変わる。

三章|なぜ「プーアル×チーズケーキ」なのか:発酵の線が同じ方向を向く

「プーアルはチーズケーキによく合う」「発酵」

ここ、単なる“合うらしい”で終わらせたくない。
プーアルの持つ土っぽさ・薬草っぽさは、言い換えると熟成の陰影だ。
チーズケーキも、乳の甘さだけじゃなく、発酵や熟成が作る“陰影”を持つ。

つまり、両方とも「甘さ」より先に、陰影の香りがある。
だから、合わせたときに甘さ同士が喧嘩しない。
むしろ、陰影が先に握手して、最後に甘さがほどける。

そしてEPICE CAFEは、中国豆を“少しずつ”扱い始めた、と語っていた。
この一言が効いてくる。
尖った個性を、尖ったまま出すんじゃなく、日常のカップに着地させるための時間をかけている。
結果、ラテでも“土地”が残る。

所作メモ|イベントで飲むラテの見方:香りの層をほどく

一口目は、甘さを探さない
先に出るのは土・薬草・木。そこを「異物」扱いしないのがコツ。

二口目で、鼻に抜ける花を待つ
“遅れて咲く”タイプは、急いで評価すると見落とす。

ミルクの温度が高すぎると、花が閉じる
熱が強いと香りが飛ぶ。ぬるくならない範囲で、落ち着いて飲む。

ペアリング|舌に残る陰影

チーズケーキがまず第一候補。
次点で、ナッツ系(胡桃・アーモンド)。土っぽさを“香ばしさ”に翻訳してくれる。

そして、意外に強いのが
塩味が少し入ると、花がはっきりする。
甘さで勝たず、輪郭で整える。 それがこの一杯の相性。

買うならこの2つ|“店の顔”と“土地の顔”

1:中国 雲南省 プーアル
土→花の流れを体験する豆。EPICE CAFEの“攻め”の側。

2:季節のEPICEオリジナルブレンド(winterなど)
店が考える“その季節の着地点”。EPICE CAFEの“日常”の側。

喫茶叙景文 ~冬の光に、ラテの湯気が立つ~

冷たい日ほど、ラテの湯気はゆっくり立つ。
急いで消えず、手のひらの中で、形を保ったまま薄くなる。

プーアルの香りは、最初から“甘い”を名乗らない。
土の影、乾いた木、薬草の線。
それは少しだけ不思議で、けれど不快じゃない。
異国の市場の隅に置かれた木箱みたいに、匂いの奥行きがある。

一口、もう一口。飲むたびに、花が遅れて咲く。
最初は気づかないくらい小さく、次の一口で、はっきりする。
さっきまで土だった場所に、やわらかな香りが立って、喉の奥で静かにほどける。

ミルクは、それを隠さない。むしろ、陰影を丸めて、花が開く余白をつくる。
甘さは前に出ない。強さで勝たない。ただ、口の中の“景色”を整えていく。

コーヒーは、情報だ。
土地の事情で、香りが決まる。発酵の時間で、影が生まれる。
そして、その影があるから、花が見える。

帰り道、手はまだ冷たい。
でも、口の中には、さっき咲いた花が残っている。
あの一杯は、飲みやすかった。
苦味がなく、まろやかで、喉を通るときに香りがほどけた。
なのに、軽くはない。
歯応えがある、と言いたくなるほど、まろやかさに密度があった。

今日の記憶は、派手じゃない。けれど、長い。
街の息を揃えるあいだに、香りだけが残って、静かに次の店へ繋がっていく。

店舗概要

1 住所:

埼玉県さいたま市西区西大宮1丁目36-8 �
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2 アクセス:

西大宮駅北口から徒歩約6分 �
Yahoo!マップ

3 営業時間:

週末限定(不定休)

4 備考:

スペシャルティのみを扱う方針/エスプレッソは季節のブレンド、ドリップはシングル中心/デカフェ常設意識あり

5公式Instagram:
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