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砂糖の向こうに、畑の匂いがする|アトリエ・シュクレ(大泉学園)

大通りの音が薄くなっていく方へ、曲がるたびに空が広くなる。
看板は大きく主張しないのに、そこだけ“甘い空気が通る道”になっていて、
足が自然にゆっくりになる。

お店の前に出ている案内には、
「米粉シフォンケーキ、焼菓子を販売しています」。

そして「インターフォンを押してからお入り下さい」の一文。
この一手間が、もうすでに“おやつの時間のスイッチ”になっている。

第一章|お店を始めたきっかけ:「もっと、みんなに食べてほしくて」

お話を伺うと、原点はお菓子教室にある。

「自分で作ったものをもっとみんなに食べてほしいなっていうのがきっかけで始めました。」

この一言が、店の空気にそのまま溶けている。
作品を並べるというより、暮らしの延長線に“やさしい甘さ”を置いているような気配だ。

第二章|外せないこだわり:「毎日でも食べられる材料」

いちばん強く伝わってきたのは、
流行の“ナチュラル”ではなく、生活の実感から来た選び方だ。

「体にいい食材で作らないと…毎日でも食べられるような材料を使っているというのがこだわりです。」
無添加についても現実的で、信頼が置ける。

「無添加は物理的に無理なので、極力可能な限り使わないようにしています。」
できる範囲で、ちゃんとする”。

それは静かに強い。背伸びしない誠実さは、味の輪郭まで整えてしまう。

第三章|看板のシフォン:クリームなしでも、ちゃんとおいしい

シフォンは、食べる側の“あるある”から逆算して作られている。

「口の水分を持っていかれがち…そうじゃなくてそれだけでも食べやすいというこだわりで、
水分量をすごく増やして…」ここは重要だ。

シフォンは軽いぶん、乾きを“軽さ”と勘違いしやすい。
だがこちらは、ふわっと軽いのに、口の中に残る湿度があるタイプ。
きめが細かく、空気が均一に入っている印象が立つ。

季節のシフォン
地産地消の“近さ”みかんシフォンのお話が、店の哲学をそのまま表している。
「大泉の知り合いの農家さんのみかんを使わせてもらって…季節感を味わってもらおうと思って使っています。」季節感は、香りの記憶だ。

この辺で採れたもの”が入るだけで、甘さが土地の味になっていく。

第四章|焼菓子の核心:フロランタン=ハチミツが決め手

ロランタンのポイントは明快だ。

「ポイントはハチミツですね。地元の国産のハチミツというところがこだわりです。」

ただ“地元”というより、作り手の顔が見える距離が味の背景になる。
蜂蜜の話題は、練馬周辺の作り手や“近すぎるとバッティングする暗黙ルール
のような現場のリアルにまで伸びた。

こういう話が出る店は、素材を“仕入れ”ではなく“関係”として扱っていることが多い。

所作メモ|ケーキ屋の「水分設計」は、コーヒー側の設計も呼び込む

  • シフォン(しっとり系):浅煎りすぎると酸が前に出ることがある。中浅〜中煎りが安定
  • フロランタン(蜂蜜+ナッツの香ばしさ):中煎り〜中深煎りが“焼き”と共鳴しやすい
  • 抽出は、キレよりも丸さが似合う(湯温を少し落とす/攪拌しすぎない)

家での再現TIP|「フロランタン×コーヒー」を家で強くする

フロランタンを主役にするなら、コーヒーは“香ばしさ”を育てるのがコツになる。
粉はやや細め寄り(甘さと香ばしさを“密度”で受け止める)
お湯は90℃前後(高温すぎると苦味が立ち、蜂蜜の丸さが崩れやすい)
抽出は前半を急がない(最初の30秒で香りの芯を作る)
フロランタンの蜂蜜は、苦味と組むより、香ばしさと組ませた方が長く続く。

ペアリング|「火の匂いに、甘い影」

フロランタン × 中煎り〜中深煎り(ナッツのロースト感と同調)
柑橘シフォン × 中浅煎り(果実の香りを“明るく”する)
しっとりシフォン × ミルク少量のカフェオレ(“毎日でも”の方向へ)

喫茶叙景文 ~住宅街の、午後に灯る甘さ~

角を曲がると、住宅街の光がほどけて、
風の温度がひとつだけ甘くなる。

遠くの車の音は薄い紙の向こうへ退き、代わりに、焼けた砂糖の匂いが道に落ちている。

インターフォンを押す。
その短い沈黙がいい。
外の世界をいったん閉じて、今日の甘さだけを迎え入れるための、静かな儀式みたいに。

箱の中で、シフォンがやわらかく揺れている。
空気を食べるお菓子なのに、乾かない。
口に運ぶと、ふわりと軽く、けれど喉の奥に小さな潤いを残していく。

“軽さ”は、ときどき雑に扱われる。
だがここでは、軽さが丁寧に設計されている。
息を吸うように食べられて、息を吐くように消えていく。

そして、フロランタン。
歯が触れた瞬間に、薄い板が割れて、蜂蜜の甘さが遅れてやってくる。
ナッツの香ばしさが、火の匂いとして立ち上がり、そこに甘い影が寄り添う。

コーヒーをひと口。
苦味で押し切るのではなく、焙煎の香りが、焼菓子の“焼き”と手をつなぐ。
甘さが伸びて、香りがほどけて、余韻が静かに長くなる。

地元の材料、季節の果実、蜂蜜を作る人たちの距離。
その近さは、特別な演出ではなく、暮らしの手触りとしてそこにある。
遠くのものを憧れるより先に、足元の土が持っている香りを信じる。
その姿勢が、甘さの質を変えてしまうのだと思う。
袋を結び、家へ帰る道すがら、手の中がまだ少し温かい。

祝祭は大声ではない。
誰にも気づかれないくらいの音量で、今日の一日をやさしく整える。
甘い匂いの残る指先で、次の休みのコーヒー豆を思い出している。

店舗概要

1 住所:

東京都練馬区(大泉学園エリア)※詳細は公式案内で要確認

2 アクセス:

大泉学園周辺(住宅街ルート/現地案内に沿うのが安心)

3 営業時間:

掲示より 11:30–18:00(販売日表示あり)

4 備考:

インターフォンを押して入店/PayPay利用可。販売物は「米粉シフォン・焼菓子」中心。最新の販売日・ラインナップは当日掲示や公式発信で確認推奨。

5公式Instagram:
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