ビルの谷間を抜けてくる風が、足元からじわじわ冷えてくる午後だった。
会場の通路には人の列がのびていて、ガラス窓に映る影が行き交っている。
手すりのそばで紙カップを一つ置く。
黒いリッドの向こうから、湯気がふわりと立ちのぼる。カップのなかだけ、
季節が一歩進んで春になったような温度がある。
キッチンカーの横には、「古民家カフェ haru」と書かれたタペストリー。
その下に並ぶメニューには、バターチキンカレー、タコライス、キッシュ、バスクチーズケーキ。
熱海の朝と昼を支えるごはんが、この日だけ都会のビル前に引っ越してきていた。
一章|熱海の古民家から届く、日常のごはんとおやつ
古民家カフェ haru は、静岡県熱海市・桜木町の住宅街にある古民家を改装したカフェ。
朝8時からオープンし、ワンプレートごはんやサンドイッチ、スイーツまで、
一日のどの時間にも寄り添ってくれるお店だ。
お店づくりの基本には、地元の食材と旬のものを使うことがある。
レモンや橙(ダイダイ)といった柑橘は、熱海周辺で採れるものを中心に。
フードメニューも、同じ内容を固定するのではなく、季節ごとに少しずつ変えて
いくスタイルだという。
東京コーヒーフェスティバルには、春と冬の回に何度も参加しているとのこと。
熱海の朝の空気を、紙カップとプレートに詰めて、表参道まで運んでくるような出店だ。

二章|ホットジンジャーレモネード|芯まであたためる一杯
この日選んだのは、ホットジンジャーレモネード。
カップを受け取った瞬間から、指先にまで熱が伝わってくる。
ひと口飲むと、レモンの酸味とジンジャーの辛みが同時に立ち上がる。
体のまんなかに小さなストーブを置かれたみたいに、じわじわと内側から温度が
上がっていく。
寒い屋外の通路でカップを持ち続けているあいだ、
飲み進めてもなお、ジンジャーの輪郭は最後までくっきりしていた。
飲み終えたあとでふと気づくと、レモンの風味もカップの底までしっかり残っている。
リッドを外すと、そこには輪切りのレモン。
最初から最後まで、同じ調子で温かく飲める理由が、その一片に詰まっていた。

三章|バスクチーズケーキ|しっとり濃厚な一休み
フードブースがにぎわう時間帯で、席をとってゆっくり味わうことはできなかった。
それでもどうしても気になって、バスクチーズケーキを一つ受け取る。
フォークを入れると、表面はこんがり焼けていて、中はしっとりとなめらか。
濃厚なのに重たすぎず、コーヒーフェスの合間にひと息つくのにちょうどいい密度がある。
行列とブースを行き来するあわただしい時間の中で、
一皿ぶんだけ、熱海の喫茶時間を持ち帰らせてもらったような感覚だった。


四章|レモネードの所作と、店主の言葉
ドリンクづくりの所作は、コーヒーの抽出とはまた違う静けさがある。
ポットからカップへ、レモネードがとろりと注がれる。
仕上げに輪切りのレモンが沈められ、蓋がそっと閉じられる。
haru さんのこだわりを尋ねると、店主さんはこんなふうに話してくれた。
・熱海周辺で採れた柑橘(ダイダイやレモン)をなるべく使うこと。
・料理は、地元の素材と旬の食材を意識して選ぶこと。
・「いつ来ても楽しんでもらえるように、固定メニューではなく季節で少しずつ変えている」 こと。
東京の真ん中で飲んでいるはずなのに、
カップ一つで、海の近くのまちの台所に招かれているような温度が伝わってくる。

喫茶叙景文 ~ガラス窓のそばで温度を分け合う~
ガラス窓に寄りかかるように立ち、
指先で紙カップの熱を確かめる。
通路を吹き抜ける風は冷たいのに、
胸のあたりだけ、ゆっくりと春が近づいてくる。
蓋を開けると、輪切りのレモンが揺れる。
熱海で育った実が、遠く離れた街路で、
見知らぬ人の手の中に、もう一度灯りをともしている。
飲み終えたカップを眺めると、
ジンジャーの気配がまだ喉の奥に残っている。
ビルの隙間でひらかれた小さなフェスの中で、
一杯のレモネードが、
家に帰る途中の温度を、そっと少しだけ高くしてくれる。
基本情報
- 1 住所:
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静岡県熱海市桜木町11-3
- 2 アクセス:
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最寄り:JR熱海駅周辺(バス・徒歩圏)
※詳細は公式Instagramのハイライト「アクセス」等を要確認。 - 3 営業時間
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8:00〜18:00(L.O.17:00)
金曜日のみ 8:00〜15:00
- 4 備考・お店の概要
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熱海の古民家を改装した、朝から通し営業のカフェ。
地元産の柑橘や旬の野菜を使ったごはんと、バスクチーズケーキなどのスイーツが看板。
メニューは季節ごとに少しずつ変化。テイクアウト・予約にも対応。
Tokyo Coffee Festival 2025冬では、ホットジンジャーレモネード/熱海レモネードティー/バスクチーズケーキ/キッシュなどを提供。
- 5 最新情報:
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公式Instagramで告知。










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