朝霞市にひっそりと佇む「坂ノ下珈琲」。
扉を開けた瞬間に通じるのは木の香りと、どこか懐かしい空気。
取材当日も、地元の常連さんがカウンターでゆったりと会話を楽しんでいました。
今回、そんな温かなお店「坂ノ下珈琲」の店主ご夫婦に伺いました。 お二人の人柄と、コーヒーへのやさしい想いが詰まった、穏やか時間をお届けします。
第一章 ”暮らしの延長線上”で生まれた喫茶店
ーーペンションを手放し、もう一度「自分たちの場所」をつくるまで
坂ノ下珈琲が生まれたきっかけは、華やか夢や計画からではありませんでした。
店主夫妻は、長年営んできたペンションを閉じ、故郷に戻ってきたタイミングで、
「空いていたこの場所を、何か活かせないかな」と考えたそうです。
「ペンションでやっていた接客や料理の経験が、
飲食店なら活かせるかなと思いました。
小さながらも、自分たちの好きなようにできる場所をつくりたかったんです。」
”必要だから始めた”というよりも、
“好きだから続けられることを選んだ”というほうが正しいかもしれません。
このお店は、ご夫婦の暮らしと想いがそののまま形になった場所なのです。


第二章 カップの中に宿るこだわりー 日常に寄り添う一杯を
ーー静岡・クレアールの豆と、手仕事の一滴。
坂ノ下珈琲のコーヒー豆は、静岡県の「クレアール」というお店から仕入れています。
店主は何種もの豆を試飲し、その中から選んだのは”ロイヤルブレンド”と”クリスタルブレンド”
の2種類でした。
「 深煎りと中煎りの2種類です。
どちらも気に入っていて、飲みびに”やっぱこれだな”と思うんです。」
特別な派手さはなくとも、日常に」寄り添う味。
店主にとってのこだわりは「信頼できる豆屋さん」と「自分が好きな味」
なのです。
抽出には、コーノ式のドリッパーを使用しお湯の温度84℃に設定
れていきます。
お湯が細く糸のように落ちていくその光景は、
まるで時間までゆっくりと流れているように感じられます。
「 前は浸漬(しんし)式で淹れていたんだけど、
ドリップしている姿のほうが見た目も美しいからね。」
味へのこだわりではなく、
“淹れる姿の美しさ”を大切にするその姿勢に、
コーヒーへの静かな情熱がにじんでいました。
第三章 ロイヤルブレンドと、みんなを笑顔にするプリン
ーー”好きな味”をまっすぐに出せる幸せ
坂ノ下珈琲で人気なのは、もちろんコーヒーですが
それに負けないほど人気なのが自家製のプリンとチーズケーキです。
「 プリンはね、みんなが好きだから。
食べた人の顔を見ると、みんな笑うんです。
その”にこっ”ていう瞬間が嬉しいんですよ」
プリンは卵の味をしっかり感じる固めのタイプ。
どこか懐かしく、まっすぐで安心する甘さがあります。
「 チーズケーキもね、自分が好きだから作ってるんです。
難しいことは考えずに、自分が美味しいと思うものを出したいだけ。」
坂ノ下珈琲のメニューには、流行や飾り気はありません。
“自分たちが好きな味を、そののまま出す”ーーそれがこの店のスタイルです。
そして、その素直さこそが、多くのお客様を惹きつけているのです。


第四章 懐かしさに包まれる場所
坂ノ下珈琲に入ると、最初に目に入るのは、ぬくもりを感じる木のカウンター。
このカウンターは、店主夫妻が信頼する工務店にお願いして作ってもらったそうです。
「 僕らの好きな”茶色のイメージにしたかったんです”
ペンションで使っていた椅子とテーブルを持ってきて、
その雰囲気のままになじませました。」
壁の色は、かつてペンションから見えていた思い出の風景から。
太陽を思わせる”サンセットオレンジ”と海を映した”ターコイズブルー”。
この2色が、坂ノ下珈琲のやさしい空気を作りだしています。
ペンションで使用していた家具をそのまま店に置かれています。
長年の思い出と共に、時間がゆっくりと流れる空気です。
「 あるお客さんがね、昔うちと同じ椅子を持ってたって言って、
涙ぐんでいたことがあるんです。
”懐かしい”って言葉を何度も口にしていたんですよ。」
そんな風に、家具ひとつで思い出を呼び起こす場所。
坂ノ下珈琲は”喫茶店”というより”心の記憶庫”のような存在になっています。


「常連さんが庭の花を分けてくれることもあるんですよ」と笑う奥様。
近所の方が”こんにちは”と声をかけて通るだけでも、嬉しいそうです。
「毎日来る人が来ないと、やっぱり心配になりますね」
お店を中心に、自然と人が集い、ゆるやかに関係が育っていく。
坂ノ下珈琲は、まるで”地域のリビングルーム”のような存在です。

第五章 これからの坂ノ下珈琲
ー ゆっくり、続けられるかぎり
坂ノ下珈琲には、派手な夢や大きな野望はありません。
けれど、店主はゆっくりとした口調で、それでも確かな”これから”を語ってくださいました。
「 できたらね、予約制で夕食をやってみたいんです。
ペンションの頃みたいに、コースでゆっくり食事を楽しんでもらえたら。」
夜の喫茶店。
照明を少し落とし、キャンドルを灯して。
そんな光景を思い浮かべながら話す店主夫妻の表情はどこか輝いていました。
昼のランチやお茶の時間とはまた違う、静かで深い「夜の坂ノ下珈琲」。
これまでに、クリスマスの時期に限定ランチを提供したこともあったそうです。
その延長線上で、予約制のディナーをいつか実現したいと考えたいらっしゃいます。
「 でもね、夜だと4000円くらいになっちゃうし、駐車場のこともあるから…
できる範囲で、無理せずやれたらいいかなと思って。」
その言葉には”効率”や”利益”よりも、”お客様に寄り添いたい”という想い
がにじんんでいました。
店主にとっての「挑戦」とは形を変えても人との時間を大切にすることなのだと感じました。
最後に あなたも、坂ノ下でひと息ついてみませんか
坂ノ下珈琲には派手な看板も大きな宣伝もありません。
それでも、扉を開けた瞬間に感じる木の香りと、やさしい笑顔が
訪れる人の心を静かにほどいてくれます。
このお店に流れるのは「時間」ではなく「ぬくもり」。
一杯のコーヒー、1つのプリン、そして何気ない”こんちは”が、
日々の中で少しずつ心がみつぃてくれるのです。
「 特別なことはしていません。
ただ、来てくれた人が少しでも穏やかな気持ちになってくれたら
嬉しいです。」
その言葉の通り、坂ノ下珈琲は”特別じゃない特別な場所”。
あなたももし、心が少し疲れたときは、
この小さな喫茶店で静かなコーヒーの時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。


店舗概要
- 1、所在地
-
:埼玉県朝霞市根岸台2-11-6
- 2,最寄り駅/アクセス
-
:東武東上線「朝霞駅」より徒歩約20~25分、またはバス「宮台」停留所から約1分
- 3,営業時間/定休日
-
:10;00~16;30/月・火曜日
- 4,特徴
-
:スペシャリティーコーヒー、手作りプリン、ランチメニューあり。
全席喫煙。駐車場なし












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