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静かな街角で、ありのままの一杯を ― 志木・ハリネズミコーヒーを巡る ―


志木の住宅街を歩いていると、不意に赤いロゴと小さな看板が視界に入る。
派手さはない。けれど、近づくほどに「ここはコーヒー屋だ」と分かる静かな存在感がある。

テイクアウト専門。
それだけを聞くと、通り過ぎてしまう人もいるかもしれない。

けれどこの店には、足を止めた人だけが気づく温度がある。
コーヒーを急がせない空気。
そして、地域の中でそっと息をしている場所という印象。

それが、ハリネズミコーヒーだった。

第一章|ありのままのハリネズミコーヒー

ハリネズミコーヒーは、埼玉県志木市にあるテイクアウト専門のコーヒースタンドだ。
運営しているのは、NPO法人ふんわり
子ども向けの支援や、地域イベント、体験活動などを行ってきた団体が、その活動の延長線上
として立ち上げた場所でもある。

だからここは、単なる「コーヒーを売る店」ではない。

コーヒーを通して、街に小さな余白をつくる場所。

価格は抑えめ。
入り口には、子ども向けドリンクやレモネード、ホットドッグの案内。
店内にはおもちゃやぬいぐるみが並び、ペットは抱っこすれば入店OKという、やさしいルール
も掲げられている。

コーヒーが好きな人だけの場所ではなく、
生活の途中にある場所


その姿勢が、この店の空気を決めている。

第二章|豆と向き合う、静かなこだわり

扱っている豆は、いわゆるスペシャルティコーヒー
生産地や精製方法が明確な、シングルオリジンを中心に構成されている。

深煎りも、浅煎りもある。
「分かりやすいおいしさ」と「コーヒーの幅」を、どちらも切り捨てない。
この日のラインナップには、

・ブラジル セハダス/深煎り
・ルワンダ ルリ/浅煎り
・エチオピア チェルチェレ/浅煎り
・メキシコ チアパス/デカフェ


が並んでいた。

どれも、“派手さ”ではなく、“続けて飲めること”を基準に選ばれている。

オーナー自身が、コーヒーに深くハマったのはここ数年のことだという。
だからこそ、「難しく語りすぎない」ことを大切にしているのが伝わってくる。

第三章|この日飲んだ一杯

ルワンダ・ルリ(ハンドドリップ)

この日選んだのは、ルワンダ・ルリのハンドドリップ。

抽出は、一杯ずつ丁寧に
目の前で湯が注がれ、サーバーにコーヒーが落ちていく時間は、思ったよりも静かだ。

口に含むと、まずすっと軽い飲み口
そのあと、後味に柑橘を思わせる明るさが、ふわりと舌に残る。

酸味が前に出すぎることはなく、
「飲み終わったあとに、もう一口ほしくなる」タイプの一杯。

テイクアウトで歩きながら飲んでも、
自宅で少し落ち着いて飲んでも、
どちらにも自然に馴染む味わいだと感じた。

第四章|氷の向こうに、余韻を残さないために

急冷式アイスコーヒーという選択

ハリネズミコーヒーのアイスコーヒーは急冷式。
理由は、とてもシンプルだ。

後味を、重たく残さないため

急冷することで、香りと輪郭を閉じ込め、
口に残る余韻を必要以上に引きずらせない。

暑い日に、最後まで軽やかに飲み切れること
それが、この店のアイスコーヒーの設計思想だ。

「冷たいから飲みやすい」ではなく、
“冷たいことで完成する味”をきちんと考えている。

第五章|コーヒーとホットドッグ、その正解

フードは多くない。
けれど、ホットドッグだけは外せない存在として置かれている。

理由は、明確だ。
・手に持って食べやすい
・コーヒーと相性がいい
・少しお腹が空いたときにちょうどいい

ケチャップ、マスタード、玉ねぎ、ピクルス。
余計な装飾はない。

コーヒーと並んだとき、完成する食べ物。

この組み合わせが、この店のリズムをつくっている。

第六章|これからの話を、少しだけ

今後は、
焙煎機の導入、
席を設けた空間づくり、
ラテアートやスイーツの展開。

構想はいくつもあるけれど、
どれも「急いで形にする」ものではない。

この店は、育っていく途中にある

それが、いちばん正直な状態なのだと思う。

喫茶叙景文 ~街の背中に寄り添う一杯~

朝と昼の境目のような時間帯。
駅から少し離れた通りを歩いていると、
「コーヒー」という言葉が、音ではなく気配として立ち上がってくる。

ハリネズミコーヒーは、
店を“構える”というより、街にそっと置かれているように見える。
看板も、のぼりも、主張は控えめで、
それでも確かに、ここに人の営みがあることだけは伝わってくる。

引き戸の向こうでは、
今日の予定を急かさないテンポで、お湯が注がれている。
計量、蒸らし、注湯。
一つひとつの動作が、時間を削るのではなく、時間を整えていく

カップに落ちた液体は、澄んでいる。
口に含むと、まず静けさが来て、
遅れて、柑橘の余韻がほどけるように残る。
強く語らない味は、
飲み手に考える余白を渡してくれる。

この場所には、
コーヒーが主役であると同時に、
コーヒー“だけ”ではない理由がある。

子ども向けの飲み物があり、
ホットドッグがあり、
抱っこされたペットがいてもいい。
それらはすべて、
「ここに来ていい理由」を増やすための選択なのだと感じる。

急がなくていい人も、
少し急いでいる人も、
どちらも拒まれない。

ハリネズミコーヒーは、
街のなかで立ち止まるための場所ではなく、
街の流れに戻っていく前の、ちょうどいい中間点なのかもしれない。

一杯を飲み終え、また歩き出す。
背中に残るのは、味というより、
「今日はちゃんと呼吸していた」という感覚だった。

店舗概要

1 住所:

埼玉県志木市柏町1丁目11-9(志木登記所前)

2 営業形態 :

・テイクアウト専門

3 営業時間:

平日 10:00〜17:00(※土日祝は不定期)

4 備考:

ペットは抱っこで入店OK
・キャッシュレス決済対応
・NPO法人ふんわり運営

5公式サイト:
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