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カフェ シュクリエ 坂戸の住宅街で見つけた”甘さの風景”

 坂戸の風がやわらぐ午後、細い道を抜けると、小さな看板が日差しを受けていました。
扉を押すと、焼き菓子の甘い気配がふわりとくる。
「カフェ シュクリエ」という音の手ざわりは、どこか砂糖壺を開ける瞬間に
似ていました。
 静かにすすむ時計、低くかかる音楽。
ここでは、急がないことが一つの作法のように思えます。
ひと口飲むごとにほどけていく、今日と明日のあわい。
この店で過ごす時間は、暮らしへ戻る前の、ささやかな準備運動でした。

第一章 ー 砂糖壺の名をもつ場所

 坂戸駅から歩いて四分。
通りの角を折れると、一軒家が見えてくる。
「カフェ シュクリエ」ーーその名は、フランス語で”砂糖壺”を意味する言葉
に由来する。
スイーツを扱う職人、甘さを形にする手。そんな響きが、店主の過ごしてきた
年月を静かに映していた。

 内装は控えめで、白と水色を基調にした爽やかな空間。
自宅の一回でお店をしているため建物の構造上、大きな改装は出来なかったが、
照明のや壁のトーンには「好きなお店を巡って見つけた心地よさ」が息づいている。
 余計な装飾は避け、ガラス越しに光が落ちる時間を大切にした店づくりーー
それが、店主のいう”地元に根ざしたカフェ”のかたちだ

 開業から八年。
お店は静かに、しかし確かなリズムで刻んできた。
「お客様のほとんどが常連さんです。支えられてここまで来られました。」
その言葉に、派手さではなく”続ける強さ”が宿っている。
焼き菓子の香りコーヒーの湯気、扉の開閉音。
それらが重なり合って「日々」という風景を描いていく。
カフェ シュクリエーー それは、砂糖壺のようにやさしく甘い、坂戸の午後の記憶である。

第二章 ー イタリアンも記憶を受け継ぐマシン ー

 カウンター奥、柔らかな陽の差す窓辺に、銀色のマシンが静かに佇む。
イタリア製の「チンバリ(CIMBALI)」のエスプレッソマシン。
店主がまだイタリアンレストランで腕を磨いて居た頃、毎日その音と香りの中で働いていた。
 「 前職のイタリアンの店でもチンバリを使っていました。
 なれた感覚をそのまま帰りたくて、同じ機種を選んだんです。」と語る。

 その手に染み付いた所作は、いつも変わらない。
グラインダーの音、スチームの吐息、抽出される一滴。
一杯のコーヒーに修行の日々の温度が静かに流れ込んでいく。

 豆は埼玉・鶴ヶ島の焙煎所「高木珈琲工房(Takagi Coffee Crafts)」か
ら仕入れている。
 壁には、産地と香りの特徴を記したリストが貼られていた。
コスタリカの〈イグアー〉は華やかな酸味を、
ティモールの〈コカマウ〉はカカオのような奥行きを、
エチオピアの〈イルガチェフェ イディド〉は果実のような余韻を。
どの豆にも、焙煎人と店主のあいだで交わされた小さな信頼が宿っている。

第三章 ー 甘やかさの奥にある職人の記憶 ー

 カフェ シュクリエの中心にあるのは、やはりスイーツだ。
木のテーブルの上、手渡された小さなメニュー冊子をめくると、
そこに静かに写真が並んでいる。
 まるで”物語のしおり”のように、チーズケーキ、ガトーショコラ、
そして季節限定のデザートが丁寧に収められていた。

  「うちは料理よりデザートがメインなんです。」
  店主はそう言いながらも、どこか照れくさそうに笑う。

 もともとイタリアンのレストランで修行を重ね、腕を磨いてきた。
その経験をこの坂戸の小さな空間に落とし込み、
「余計なものを加えず、素材を信じる」ことを貫いている。

STEP
ー 定番と呼ばれる理由ー

 人気のベイクドチーズケーキは、しっとりではなく”ほろほろ”。
フォークを入れると、空気を含んだように崩れ落ち、
口に運ぶとチーズの香りとほのかな塩味が広がる。
 配合はほぼチーズ・卵・砂糖だけ。足さない潔さが、口どけの清潔感
をつくっているのだと感じた。

 土台はナッツやスポンジが混ざった生地で噛むたびにほのかな香ばしさ
が立ち上がります。さらに添えられたベリーソースが濃厚な余韻を軽やかで
酸味が静かに輪郭を整える。

第四章 焼き菓子の棚 ー 手みやげになる”余韻”

 カウンター脇の棚に、小さな季節が並んでいた。
メレンゲの白、サブレの金色、ヘーゼルナッツの香ばしさ。
紅茶のクッキー、コーヒークッキー、ジンジャーココア、ラズベリー…
袋を透かして見える粒立ちや焼き色が、職人の温度を語る。

  「メレンゲは女性やお子さんに人気で、ヘーゼルナッツも良く出ます。」

 店主はそう言って、棚をきれいに整えた。季節に応じたクッキーも登場する。
ハロウィンのカボチャやおばけ、冬には雪の結晶。
 詰め合わせアソートも用意があり、テイクアウトは気軽にできます。手みやげにひと箱、
席でコーヒーと一緒に一包みーーどちらも良く似合う。


 ガトーショコラ、季節の皿盛りデザートはその日の楽しみとして。けれど、
日常に連れて帰れるのは焼き菓子です。家に着くまでの甘い匂い、翌朝のテーブルに
残る余韻ーーその全部がカフェ シュクリエの記憶になる。

第五章 青の壁、静かな灯り ー 常連がつくる風景

 扉をくぐると、青や水色を基調にした壁がひんやりと目を休めてくれる。

 天井から下がる電球はやわらかな色温度で、テーブルの木目をすっと浮か
び上がらせる。上階が住居のため大がかりな改装は出来なかったと話され、
店主夫婦を巡ってこの形に落ち着いたのだそうです。派手ではないけれど、
清潔で、気持ちが整う。

 「ほぼ常連のお客様ばかりで、ここまで来られました」
 「感謝しかないです」

 入口は少し控えめで、初めてだと見落としそうになる。だからこそ、
合言葉のように通い続ける人たちがいる。決まったせきに腰を下ろし、
いつものドリンクと、いつもの焼き菓子。会計台の小さな季節飾りを眺め
ながら近況をひと言ふた言ーーそんな静かな往復で、一日がやさしく結ば
れていきます。

  「 広げようとh思っていなくて。まずは10年を目標に季節のものを少し
  ずつ」
 
 背伸びをしない店の姿勢は、空間にも接客にもそのまま宿っています。
青い壁の前でカップが小さく触れ合う音。席に残る体温。外に出るとき、
胸のどこかに”ただいま”が灯っているーーカフェ シュクリエは、そんな帰り
道をくれる場所です。

最後に 青い壁に、甘さは静かに

 午後の光が青い壁をやわらかく撫でる。
白い皿には、焼き込まれたチーズケーキ。フォークの先に、ラズベリーの
赤が細い尾を引く。
奥ではチンバリが短く息をし、挽きたての音が響く。

 派手さよりも「いつも」を選ぶ店。
席に着く常連たち、交わらせる合図のような注文。会計台の小さな季節飾り
が、今日の終わりを告げる。
店主は静かに笑い、「感謝しかない」とだけ言う

 大きく広げない。季節のひと皿を少しづつ。
控えめな意思は、青の壁にも、甘さの余韻にも宿る。

 扉を出ると、空の色がさっきの壁と響き合う。
また来ようーーその小さな決意こそ、カフェ シュクリエの一番のごちそう。

店舗概要

1住所:

埼玉県 坂戸市 日の出町 16-43-2

2アクセス:

東武東上線「坂戸駅」北口から徒歩4分

3営業日:

・月~金: 11:00~18:00(ラストオーダー17:30程度)
・日、祝:11:30~18:00

4特徴:

ワンプレートランチ、キッシュ・ベーグルサンドなどプレート系ランチあり。

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