川越コーヒーフェスティバルに足を運んだ大きな理由は、イベントそのも
のを楽しむことだけではない。これから訪ねていきたいロースターやお店を、
自分の目と舌で確かめていくための巡礼でもあった。
会場には、焙煎機も、豆の産地も、カップに込める物語も、それぞれ違う
店がずらりと並んでいた。
同じ「コーヒー」という名前を持ちながら、ここまで表情が変わるのかと
いう驚きが、一日を通して何度も押し寄せた。
このシリーズでは、フェス全体のレポートではなく、そこで出会った一軒
一軒のお店を、
自分たちの視点で記録していく。
「どんな一杯だったのか」だけでなく、「どんな言葉が心に残ったのか」
まで含めて、
次の巡礼へつながる個人的な地図として残しておきたい。
その最初のピンが、新座のKondo Coffee Standだ。

第1章 川越の広場で出会ったサイフォン ーー ガラスの球体に誘われて
川越コーヒーフェスティバルの会場を歩いていて、ひときわ目を引いた
ブースがあった。
テーブルの上に並んでいたのは、ガラスのフラスコが三つ。
その下では、赤い光のビームヒーターが静かに灯り、湯がゆっくりと温め
られている。
そのブースこそが、埼玉県新座市のスペシャルティコーヒー専門店
「Kondo Coffee Stand(コンドーコーヒースタンド)」。
コーヒーを「飲む」前に、まず「眺めていたくなる」サイフォンの光景が
広がっていた。
その一角だけ、少し時間の進み方が違うように感じられた。

第2章 インドネシア インフューズドブレンド ーー 「コーヒーらしさ」をいい意味で忘れる一杯
この日選んだのは、「インドネシア インフューズドブレンド」。
カップを口元に近づけた瞬間から、フローラルでフルーティーな香りが
ふわりと広がる。
一口含むと、ライチや白ぶどう、熟したフルーツを思わせる甘いニュアンス
が舌の上を滑っていき、
「いま飲んでいるのは本当にコーヒーなのか」と一瞬わからなくなるほど、
良い意味で“コーヒーらしさ”を感じさせない一杯だった。
温度が少し下がるころ、華やかさの奥から紅茶のような落ち着いた余韻
が立ち上がる。
派手さと静けさ、その両方を一本の線でつなぐようなバランスで、
最後の一滴まで香りの変化を追いかけたくなるカップだった。

第3章 「魅力を感じた豆だけを選ぶ」 ーー バリスタの心が、そのまま味になる
豆選びについて近藤さんに尋ねると、返ってきた答えはシンプルだった。
「自分がその豆に“魅力”を感じたかどうかを大事にしているんです」
産地や品種、精製方法の情報はもちろん欠かせない。
それでも最終的な判断軸は、「この豆のここが好きだ」と胸を張って
言えるかどうか。
だからこそ、飲み手の側も安心してそのカップを受け取れる。
ラベルやスペックではなく、「この人が選んだ豆だから飲んでみたい」
と思わせるロースター。
そのスタンスが、そのまま一杯の説得力になっていると感じた
第4章 サイフォンの未来をひらくお店 ーー 講演会で伝える抽出の魅力
Kondo Coffee Stand は、新座市の住宅街の一角に構える自家焙煎
スペシャルティコーヒー専門店。
オーナーバリスタの近藤寛之さんは、
ジャパンサイフォニストチャンピオンシップ2022 優勝、
ジャパン ブリューワーズカップ2018 準優勝という実績を持つ、
日本トップクラスのバリスタである。
サイフォンの抽出については、
「もっと多くの人に魅力を知ってもらいたい」
という思いから、お店の外でも講演会やデモンストレーションを行い、
サイフォンの可能性を伝える活動を続けている。
喫茶店の片隅に置かれた“昔ながらの器具”ではなく、
再現性が高く、クリーンで、香りを立体的に引き出せる現代的な抽出器具として
サイフォンを提示しているロースター。
川越の広場でゆらめいていたガラス球は、その哲学をそのまま形にした
オブジェのように見えた。


第5章 今回の巡礼マーカー ーー 地図に刻んでおきたい一軒
今回のフェス巡りのなかで、Kondo Coffee Stand は自分の中の地図に太い線
で刻まれた一軒になった。
サイフォンの華やかなビジュアルと、インフューズドブレンドのフルーティーさ。
その二つが重なった瞬間、「サイフォン=喫茶店の一杯」という固定観念
がすっと溶けていった。
川越の会場で味わったあの一杯は、フェスという少し特別な空気の中での
体験だった。
次は、新座の静かな席で、サイフォンの立ち上がりから最後の一滴
までを最前列で眺めながら飲みたい。
「インドネシア インフューズドブレンド」の鮮やかなフルーティーさが、
日常の時間の中でどう表情を変えるのか。
その違いを確かめに行くことが、今回の巡礼がくれた次の一歩の目印になった。
喫茶叙景文 ~一杯目のサイフォンが、この日の基準になる~
この日の 川越コーヒーフェスティバルで、
最初にカップを受け取ったブースが Kondo Coffee Stand だった。
朝いちばんの空気のなかで、ガラスの球体の下に灯る赤いビームヒーターを眺めながら待った一杯。
そのインドネシア インフューズドブレンドのフルーティーさが、この日の「基準の味」になった。
ここから先に出会うすべてのカップは、無意識のうちに、この一杯目と比べられていく。
華やかさの方向が違うコーヒー、焙煎の深さで勝負してくるロースター、
あえて静かな余韻だけを残していくカップ。
どれもおいしいのに、頭のどこかで
「Kondo の一杯はこうだった」と照らし合わせている自分に気づく。
イベントの一杯目をどこにするかは、その日一日の「物差し」をどこに置くかということなのかもしれない。
フェスの終わりに振り返ってみると、
サイフォンの湯気とともに立ち上がったあのフルーティーな香りが、
川越で過ごした時間のスタートラインとして、はっきりと浮かび上がってくる。
その一杯目の記憶ごと、新座の Kondo Coffee Stand まで続く小さな道として、
僕らの珈琲巡礼の地図に印をつけておきたい。
基本情報
- 1 住所:
-
埼玉県新座市野火止5-11-54 カーサビアンカ101
- 2 アクセス:
-
JR武蔵野線「新座」駅 北口より徒歩約6〜10分(約450〜700m)
車:関越自動車道「所沢IC」から約6分
- 3 営業時間:
-
10:00〜18:00 前後/定休日:不定休
営業日・営業時間は変わる可能性があるため、最新情報は公式Instagram(@kondocoffeestand)やFacebookで確認するのが安心。 - 4 備考:
-
自家焙煎スペシャルティコーヒー専門店
サイフォン&ハンドドリップで一杯ずつ抽出












コメント