国連大学の広場、開場に近づいた時間。
人波が少し落ち着いたころ、会場の片隅で緑のクロスに白いうさぎが跳ねているブースが目に入る。
木箱にぎゅっと詰まったクッキー缶や焼き菓子たち。
その中央に、クリームチーズをまとったキャロットケーキの列が、静かにこちらを見ている。
Tokyo Coffee Festival の中で、ひときわ“おやつの時間”らしさをまとった、キャロットケーキ専門店 Rabbit Hole Bakes。
最後の一切れを選ぶような気持ちで、列の後ろについた。


一章|入間・仏子からやってきたキャロットケーキ専門店
Rabbit Hole Bakes は、埼玉県入間市・仏子に店を構える、キャロットケーキ専門の焼き菓子店。
普段は金曜と土曜だけオープンする、週末のおやつアトリエのような存在だ。
店主さんの言葉を借りるなら、コンセプトは
「もう一回来たい、ちょっと中毒になるようなお菓子とお店」。
看板商品はもちろんキャロットケーキ。
シナモン、コリアンダー、アニス…といったスパイスを組み合わせ、
季節ごとに違う素材と出会わせながら、バリエーションを増やしてきた。
人参へのこだわりも強い。
・人参のおろし方・入れ方・扱い方を季節ごとに変えること
・水分量や甘さに合わせて、生地の配合まで微調整していくこと
・なるべく地元・入間周辺の農家さんの人参を使い、時期によっては千葉や北海道から取り寄せること
そうやって一台ずつ焼かれたケーキが、東京のフェスの会場に並んでいる。
ブースの前に立つと、「キャロットケーキ専門店」という一行が、いつもより頼もしく見えた。

二章|会場で選んだ一切れ:キャロットケーキ スパイス(ラムレーズン)
棚に並んだケーキの中から選んだのは、「キャロットケーキ スパイス」。
原材料のラベルには、にんじん、小麦粉、全粒粉、ラムレーズン、スパイス、クリームチーズ…とびっしり文字が並んでいる。
ひと口目でまず来るのは、濃いラムレーズンの香り。
「キャロットケーキを食べている」というより、
ラムレーズン入りのパウンドケーキか、洋酒のきいたデザートに近い印象で、
スパイスのなかにラムレーズンが芯を作っているような味わいだった。
生地はしっとりとしていて、にんじんの甘さが静かに底を支える。
表面のクリームチーズが、ラムの華やかさとスパイスの余韻をやさしくまとめてくれて、
一切れでしっかり“食べた”と感じる満足感がある。
「やみつきになるお菓子を」と話していた店主さんの言葉が、
食べ終わるころには、すとんと腑に落ちていた。

三章|キャロットケーキと Coffee Post のブレンド
Rabbit Hole Bakes のコーヒーは、川越・Coffee Post さんのオリジナルブレンド。
もともと自転車の屋台から始まり、スタンド、焙煎所へと歩みを進めてきたロースターだという。
・スパイスの多いキャロットケーキに合わせること
・チェリーやナッツ、ハーブのようなフレーバーが感じられること
・どのフレーバーのキャロットケーキにも寄り添えること
そんな条件で相談しながら作ってもらった、キャロットケーキのためのブレンド。
店主さんは笑いながら、こう教えてくれた。
「どのキャロットを選んでも、このコーヒーは本当に合うんです。
だから、どのコーヒー屋さんの一杯を買ってきても、うちのキャロットは多分合います」
キャロットケーキ・スパイスをかじりながら、
「この一切れに合わせて作られたコーヒーは、どんな香りなんだろう」
と想像する時間もまた、ひとつのペアリング体験だった。


四章|“やみつき”を目指す、季節のキャロットケーキのこれから
キャロットケーキを始めたきっかけを尋ねると、店主さんは少し照れたように話してくれた。
「もともとお菓子屋をやりたいと思っていて、その中でキャロットケーキに出会ったんです。
食べてみたら、自分でも衝撃を受けて。『なんだこのおいしいお菓子は』って」
そこから試作を重ね、
スパイスや素材を変えながら、少しずつ種類を増やしていった。
今では、季節ごとにりんごのキャロットケーキを焼いたり、
これからも新しいスパイスや果物との組み合わせに挑戦していきたいという。
・スパイスは無限にあって、組み合わせも無限にあること
・季節の素材を合わせることで、キャロットケーキの世界を広げていきたいこと
・そして、その一つひとつが、誰かにとっての“帰ってきたくなる味”になればいいこと
「キャロットケーキの可能性を広めていけたら」
という言葉は、Tokyo Coffee Festival の喧騒の中でも、不思議と静かに響いていた。

喫茶叙景文 ~舌に灯る果樹園~
うさぎのロゴが揺れる緑のクロスの前で、
最後の一切れを選ぶみたいに、キャロットケーキを一つ手に取る。
フィルムをはがすと、
ラムレーズンとスパイスが混ざり合った香りが、
冷えた夜気の中で、小さな果樹園みたいに立ちのぼる。
ひと口かじるたびに、
にんじんの甘さが、土のぬくもりを思い出させる。
ラムの気配が、遠くのキッチンで焼かれているケーキの湯気を連れてくる。
コーヒーフェスのざわめきは、背中のほうへ薄れていく。
手の中の小さなケーキだけが、
今日という一日の終わりを、静かに締めくくってくれる。
家に帰ったあとも、指先に残るのは、
クリームチーズのやわらかさと、
ラムレーズンの甘い影。
またいつか、週末の仏子の駅に降り立って、
あのうさぎのマークを探したくなる。
基本情報
- 1 住所:
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埼玉県入間市仏子879-15
- 2 アクセス:
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西武池袋線「仏子駅」から徒歩圏。
週末のみオープンする、住宅街の中の小さな焼き菓子店。
- 3 営業時間
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金曜・土曜 11:00〜16:00
日〜木曜 休業
※営業日は変動の可能性あり。最新情報は公式サイト・SNSを要確認。
- 4 備考・お店の概要
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・キャロットケーキ専門の焼き菓子店。ノーマルからスパイス、季節限定フレーバーまで、にんじんとスパイスのバリエーションで世界を広げている。
・にんじんの産地・水分量・甘さに合わせて配合を変えるなど、素材へのこだわりが強い。なるべく地元・入間周辺の農家さんの人参を使用。
・コーヒーは川越のロースター Coffee Post のオリジナルブレンド。キャロットケーキのスパイスに寄り添うように設計された、チェリーやナッツ、ハーブを思わせる風味。
・店の雰囲気はアットホームで、*「家に帰ってきたような感覚になってほしい」*という店主さんの思いが、焼き菓子のラインナップやディスプレイにも表れている。
・ルイボスティーやお子さまドリンクもあり、親子で楽しめるおやつ時間をイメージしたメニュー構成。
- 5 最新情報:
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公式Instagram、オンラインストアに随時。イベント在庫まずはSNSで告知。










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