東京コーヒーフェスティバルの一角に、やわらかな生成りのリボンが揺れていた。
並んでいるのは、米粉で焼いた小さなお菓子たち。
でもその背景には、「小麦を捨てきれなかった人」の物語が静かに流れている。
ブースのプレートに記された名前は La fille de FAL(ラ フィーユ ドゥ ファル)。
淡路島の工房で焼かれる米粉の焼き菓子が、コーヒー好きの人たちの手に渡っていく。
その一つ一つには、アレルギーと、ファッションブランドと、コーヒーと――
いくつもの物語が折り重なっていた。
第一章|小麦アレルギーの母から生まれた、米粉のブランド
La fille de FAL は、「小麦アレルギーを発症した母が安心して食べられるお菓子」
を起点に生まれた米粉スイーツブランド。
母が立ち上げたのは、神戸発のアパレルブランド FRANCESCA AMAM LABEL。
アレルギー体質の娘の視点から始まった服作りは、
「肌にやさしく、日常をすこしだけ凛と見せてくれる服」をテーマに育ってきた。
その“服のブランド”から派生するかたちで、娘が立ち上げたのが 米粉の焼き菓子
ブランド「La fille de FAL」。
工房は淡路島。島の自然の中で、小麦を一切扱わない工房を選び、
原材料も「製造工程で小麦を扱っていないもの」に絞っている。
同じテーブルで、同じお菓子を囲んで笑い合える時間を取り戻したい。
その願いが、ブランドの一番芯の部分にある。


第二章|「米粉なのに」ではなく、「米粉だから」おいしい焼き菓子
米粉の焼き菓子というと、ほろほろ崩れやすい食感や
小麦とは違う独特の風味を想像されることが多い。
La fille de FAL のお菓子は、そこに真正面から挑んでいる。
レシピは、小麦の配合をそのまま置き換えるのではなく、
グラム単位で試作を重ねたオリジナル設計。
「米粉だから仕方ないよね」ではなく、「米粉なのにここまでできるのか」
その驚きを目指して、
小麦に近いコク・香り・食感をとことん追いかけている。
東京コーヒーフェスのブースには、
・ひとくちサイズの miniカヌレ
・さくほろ食感の サブレ や ブールド・ネージュ
・キャラメルが香ばしい フロランタン
・ざくざくとした食べごたえの カカオビスコッティ
・外はさっくり、中はふんわりの マドレーヌ
・しっとりとした ケーク・ド・プレーン
などが、リボンとともにきれいに並んでいた。
どれも形はクラシック。
けれど一口ごとに「これ、本当に小麦使っていないの?」と
思わず首をかしげたくなるような、密度のある食べ心地だ。


第三章|スタバのブラックエプロンが考える、コーヒーとのペアリング
ブースに立つお母様は、元スターバックスのブラックエプロンバリスタ。
娘さんが製菓専門学校付属の高校を卒業後、蔵前 菓子屋シノノメの工房で
修行中にアパレル業を営みながら、
「いつかこの子とコーヒーのお店を一緒にやりたい」と思い、
スターバックスに入り、1年ほどでブラックエプロンを取得したという。
もともとは、深煎りのインドネシアやグアテマラ、コスタリカなど、
チョコレート感のあるコーヒーに合うようにレシピを組んでいた。
しかし、台湾コーヒーと出会ってから、世界が少し変わる。
浅煎りのエスプレッソの明るさ、
フルーティーさと合うように、
キャラメリゼの焦がし具合やバターの種類を調整し直しているのだという。
いまの La fille de FAL のお菓子は、
・深煎りのナッツやチョコ系のコーヒー
・浅煎りのフルーティーな台湾コーヒー
・フレンチプレスでじんわり淹れた一杯
どれに寄り添わせても、コーヒーと喧嘩せずになじんでいく。
「このコーヒーだから、このお菓子」という縛りではなく、
「あなたのナンバーワンのコーヒーと合わせてみてください」
そんなスタンスのペアリングだ。


第四章|服と器と、音楽まで。広がり続ける世界観
ブースの片隅には、FRANCESCA AMAM LABEL の巾着袋も並んでいた。
コーヒーフェスの「おみやげ用バッグ」として好評で、
焼き菓子を詰めて、そのままギフトにできるようになっている。
話を聞いていると、ブランドの世界はさらに広がっていく。
・デザイナー自身が取り組むオリジナルのコーヒーカップやお皿
・Instagram 用に、自分たちで録音しているギターの音源や歌
・日常の装いと、おやつの時間が地続きになるようなトーンの揃った写真
服から始まったブランドが、
今は 「衣」と「食」をつなぐひとつの世界観として育っている。
それでも軸にあるのは、アレルギーを持つ家族と同じテーブルで笑う時間。
その一点だけは、どれだけ広がっても揺らがないように見えた。

喫茶叙景文 ~小麦を手放せなかった人のための、おやつの席~
白いリボンを結んだ焼き菓子が、コーヒーフェスの喧噪の中で小さな島になる。
米粉とは思えない重さで、手のひらにやさしく沈む。
一口かじるたび、遠くの工房の静けさが舌に広がる。
淡路島の空気、母の食卓、服の布地を撫でる指先。
いくつもの景色が、粉と砂糖とバターのあいだから立ち上がる。
隣のテーブルからは、深煎りの香り。
少し離れたブースでは、浅煎りの台湾コーヒーが湯気を上げる。
どのカップを選んでも、お菓子はするりと間に入り込み、
口の中で静かな合唱をはじめる。
小麦を手放したはずなのに、
「小麦が好きだった頃の記憶」が、別のかたちで戻ってくる。
それは少し不思議で、少し救いに満ちた感覚だ。
紙袋の底に残った焼き菓子を確かめながら、
またいつか、同じように笑い合えるテーブルを思い浮かべる。
淡路島から届く米粉のおやつは、
そんな未来の食卓にそっと灯りをともす。
店舗概要
- 1 住所:
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兵庫県淡路島の工房にて製造(実店舗は持たず、イベント出店・オンライン販売が中心)
- 2 アクセス:
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主な出店情報は Instagram(@la_fille_de_fal) の「event」ハイライト等で告知。
- 3 営業時間:
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オンライン販売・イベントごとに異なるため、最新スケジュールを公式Instagramにて要確認。
- 4 備考:
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小麦不使用の米粉焼き菓子ブランド。原材料も「小麦を扱う工場を避けたライン」
を選定。- 神戸発のアパレルブランド FRANCESCA AMAM LABEL から生まれた
「娘の焼き菓子ブランド」。- 「小麦アレルギーの母が、安心して食べられるお菓子を」 という想いを
出発点に、淡路島工房で製造。- スタバのブラックエプロン経験を持つバリスタが、浅煎り〜深煎りまで
幅広いコーヒーと合うレシピを監修。- イベントでは焼き菓子のほか、アパレルの巾着袋や、自作の器と組
み合わせたギフト提案も行っている。 - 5 最新情報:
-
公式Instagram。











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