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風の広場に、家の机が続いている|さいたま COFFEE FESTIVAL まとめ(初開催・5店+No.13)

駅前はいつも忙しい。人の流れが太く、用事が先に立ち、足は止まりにくい。
それでも、テントが立つ日だけ、街は少しだけ歩幅を変えます。湯気が上がると、音が一段落ちる。
香りが、会話の隙間に入り込む。

今回のさいたま COFFEE FESTIVALは初開催。
初開催という言葉は「試し」の匂いも連れてきますが、ここには試しで終わらない意志がありました。
「さいたま市の皆さまにもっとコーヒーを味わってもらいたい」
「さいたま市のコーヒー文化を育てていきたい」。
配布物に残る言葉が、当日の空気の底に沈んでいます。

そして、巡礼が濃くなる決定打がもう一つ。
横須賀でインタビューした SPECIALTY COFFEE BEANS No.13 が、
出展予定店舗としてこの会場にも名を連ねていたこと。
別の街で拾った言葉が、別の街の駅前で再び効いてくる。
インタビューが“記録”から“関係”へ変わる瞬間。

第一章|今回の“巡礼の線”:示した7つの場面

会場で起きた出来事は、あとから振り返るほどに「家まで続く設計」だったことがはっきりする。

・COFFEE ITS:黒板のようなコーヒーアート
・50 COFFEE & ROASTERY:持ち帰ったドリップパック
・甘味:マドレーヌ
・甘味:チーズスフレ
・EPICE CAFE:中国 雲南省 プーアル トリプルアナエロビックナチュラルのカフェラテ
・50:会場で飲んだエスプレッソのカフェラテ
・常盤珈琲焙煎所:家まで連れて帰るドリップパックセット

この並びは偶然ではない。
アート→持ち帰り→甘味→香りの強いラテ→ラテの検証→家で完結。
会場の一杯は、家の机に着地して初めて“本編”になる。

第二章|COFFEE ITS(coffee in the sun)|描き足せる余白、描かない勇気

最初にピンと来たのが、ITSのコーヒーアートだったのは象徴的だ。
黒板のような面に、白い線でカップと湯気。飾りとして完成しているのに、
完成しきっていない。余白が残っている。

「自分で付け足せる」と聞くと、普通は嬉しいはずだ。
けれど手が止まる。蛇足になってしまう気がする。
余白は、足さないことで守れる。
コーヒーでも同じだ。尖らせて驚かせれば、一口目は勝てる。けれど二口目で疲れる。三口目で飽きる。

ITS が語った核はこれだ。
自分が飲みたいと思えるものを、飲みやすく焙煎したい
ペアリングも派手に足さない。ビスケット/クッキー/焼き菓子。邪魔をしない相手。
アートの余白と、味の設計が同じ方向を向いている。

第三章|50 COFFEE & ROASTERY|持ち帰りの3種は「場所を再現する装置」

次に家へ連れて帰ったのが、50のドリップパック3種。
袋のデザインがすでに語っている。七ツ梅の記号、渋沢の人物、
そして“50”の黒。味だけではなく、物語がパッケージに入っている。

・七ツ梅ブレンド
 拠点の七ツ梅酒造跡地の名を背負う。クラシカルを焦げや重さだけで作らず、
後味の甘さでまとめる思想が透ける。

・渋沢栄一ブレンド
 ミルク・砂糖が合う設計。時代の飲み方へ寄せて完成形を作る。
家のキッチンが少しだけ昔にスライドする。

・オリジナルブレンド
 迷ったときの基準点。バランスの良さが「戻れる場所」になる。

 ここで重要なのは、ドリップパックが“お土産”ではなく検証道具になっていることだ。
会場で飲んだ味は、風・温度・疲労で変わる。家で淹れると、味の芯だけが残る。
イベントは会場で飲むものではなく、家で回収するもの。

第四章|甘味の二段:マドレーヌとチーズスフレ

会場のコーヒーは単体で成立しているように見えて、実は“隣”で味が変わる。
その隣役が、今回のマドレーヌとチーズスフレ。

・マドレーヌ|焦がしの影で、苦味が輪郭になる
 焼き色がしっかり入ったマドレーヌは、甘さより先に香ばしさが来る。香ばしさは苦味と仲が良い。クラシカル寄りの豆やラテと合わせると、苦味が「立つ」のではなく「整う」方向へ働く。

・チーズスフレ|白い甘さで、香りを伸ばす
  チーズスフレは甘さが柔らかく、口どけが早い。その分、コーヒー側の香りが上に浮く。
酸が立つ豆でも、乳のニュアンスが緩衝材になって角が丸くなる。
甘味は、コーヒーを主役にするための舞台装置になる。

第五章|EPICE CAFE|中国 雲南省 プーアル トリプルアナエロビックナチュラル(カフェラテ)

ここが香りのピークの一つ。
中国 雲南省 プーアル トリプルアナエロビックナチュラル
名前の時点で、もう味が“普通ではない”ことを宣言している。

アナエロビック(嫌気性発酵)は、香りの立ち上がりを変える。
果実の輪郭が増え、発酵由来の香気が層になる。
そこに“トリプル”が付くと、香りは過剰になりやすい。
けれど今回はカフェラテという形で受け取っている。

ミルクは香りを消すだけではない。
香りを乳の甘さの上に乗せることで、発酵香が攻撃にならず、余韻として残ることがある。
強い香りを、強いまま“飲める形”に翻訳する。
EPICEはその翻訳をやっていた。

第六章|50 COFFEE & ROASTERY|エスプレッソのカフェラテ:ミルクが勝つ、という検証

EPICEの強い香りを受けたあとに、50のラテを飲む。
この順番が結果的に検証になる。メモは明確だ。

ミルクとコーヒーが喧嘩はしていない。
コーヒーの味が優しすぎてミルクの味が勝っている。


「ミルクが勝つ」は弱点ではなく、設計の匂いでもある。
50はクラシカルを焦げで作らず、甘さとバランスで作ろうとする。
そういう店のラテは、尖らせるより荒れない方向へ寄る。
喧嘩しないのは、雑味が少ない証拠でもある。

ただし宿題が残る。フラットホワイトやショット追加で輪郭が出るか。
ミルク量を減らすと主導権が変わるか。次回の再会が続編になる。
「勝つ/負ける」を記録できるのは、味覚が一段上がっている証拠。

第七章|常盤珈琲焙煎所|ドリップパックセットは“家で終わらない”ための仕掛け

最後に、常盤のドリップパックセット。これがあるだけで、まとめ記事の着地が決まる。
イベントはその場で終わらない、という主題を最も実務的に支えるからだ。

Geisha、Sakura Blend、部屋の絵のようなブレンド。絵柄の違いは味の違いだけでなく、
飲む時間の違いも示しているように見える。
朝に向くもの、夜に向くもの、気持ちを切り替えるもの。

常盤が上手いのは、会場の体験を家の時間割へ落とし込むところ。
湯を沸かす場所まで体験が伸びている。
会場で飲む一杯は序章で、机の上の二杯目が本編。

第八章|SPECIALTY COFFEE BEANS No.13|“別の街で会った店”が、ここにいる意味

今回のまとめにNo.13の名が入るだけで、記事の温度が変わる。
横須賀でインタビューした店が、浦和の駅前にいる。
これは偶然の出展ではなく、巡礼が点から線へ進んでいる証拠だ。

同じ店でも、場所が変わると味の記憶の残り方が変わる。
会場の風、客層、周囲の匂い、緊張の質。その差分を次から記事にできる。
“再会”はレビューではなく物語になる。

所作メモ|イベントで味を取り逃がさないための組み立て

・最初に余白を置く(ITSのように呼吸が整うブース)
・次に持ち帰りを確保する(50や常盤で家に続編を用意)
・甘味で舌を整え、香りの座標を作る(マドレーヌ/スフレ)
・強い香りは“翻訳”して飲む(EPICEの発酵系をラテで受ける)
・もう一度ラテで主導権を検証する(50のラテで勝負を見る)
・最後に家で完結する札を持つ(常盤のセット)

巡礼は、味のログを取りながら歩く行為。

家での再現TIP|会場の続きは「翌朝」に起こす

会場の夜は疲れが味覚にフィルターを掛ける。だから回収は翌朝が強い。

・ドリップパックは翌朝に回す(疲労フィルターが外れる)
・50の“ミルクが勝つ”を検証したいなら、家ではミルク量を減らす方向へ寄せる
・EPICEの発酵香は、甘味を少し添えて香りの角を丸くする
・ITSの哲学に寄せるなら、抽出は攻めない。安定と崩れなさを優先する

ペアリング|「香りの線を守る」

ITS/紡:ビスケット、プレーンなクッキー、軽い焼き菓子(邪魔しない)
EPICE:ミルク寄りの甘味、ナッツ、香りの座を奪わない相手
50:マドレーヌの香ばしさ、あんバター、焦がしの影
常盤:朝は軽い甘味、夜はしっとり系で余韻を伸ばす

喫茶叙景文 ~街の息を揃えるあいだ~

駅前の広場は、普段は通過点だ。
けれどテントが立つ日だけ、通過点は滞在を許す。
湯気が上がると、街の息が一瞬そろう。

黒板の絵を机に置く。
描き足せる余白が白い線の外側に残っている。
けれど指は動かない。
描かないことが、いちばん綺麗な完成に思える夜がある。

袋の中には七ツ梅の名前が入っている。
渋沢の影が入っている。
桜のパッケージが入っている。
会場で飲んだ香りはもう消えたはずなのに、袋の中の紙がまだ匂いを持っている。

翌朝、湯を沸かす。
カップの白が、昨日より静かだ。
会場で起きたことは、ここでようやく形になる。
描かない勇気と、攻めすぎない抽出と、邪魔しない甘味。
それらが重なると、香りは長く残る。

街の息を揃えるあいだに、香りは先に帰宅する。
そして机の上で、もう一度だけ、あの広場を起こす。

店舗概要

1 住所:

浦和駅東口 駅前市民広場(PARCO前)

2 アクセス:

浦和駅東口すぐ

3 営業時間:

2026/2/21(土)10:00〜17:00

4 備考:

初開催/チケット購入にさいコイン・エキトマチケット使用可(案内記載)/出店・最新情報は主催SNSの告知を要確認/出展予定に SPECIALTY COFFEE BEANS No.13 の記載あり


5公式Instagram:
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