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香りは静か、余韻は果実|Piece by Piece coffee(Japan Coffee Journey in SHINJUKU)

テーブルの上に並ぶ袋は、どれも静かな色をしている。
目立つ派手さはないのに、立ち止まった人の時間だけ、そこで少し遅くなる。

背面には、産地の人の写真。乾燥の赤い実、日差しの下の笑顔、作業場の空気。
コーヒーが「香り」になる前に、すでに“誰かの場所”として存在しているのが見える。

Piece by Piece coffeeは、姫路の住宅街で2018年から、スペシャルティコーヒーを軸に、
無農薬栽培や自然農など生産過程・農法にこだわった豆を扱い、焙煎して届けている。
コーヒーで、生産者と流通に関わる人の想いを繋ぐ。
——そんな文脈が、写真と袋の並び方にまで滲んでいた。

そして店は、焙煎を「固定された味」ではなく、時間で変化するものとして語る。
焙煎直後はガスが多く、香りが弱いことがある。
約1〜2週間で香りや風味が増し、1ヶ月後に変わっていく豆もある。
飲む側に「変化を楽しむ」余白を残す姿勢が、ここにはある。

第一章|Piece by Piece coffeeという設計:
LIGHT〜MED-DARKは“味の地図”

この日のブースには、袋のラベルにLIGHTの文字が目立っていた。
その隣にはMED-DARK。浅い・深いの二択ではなく、レンジとしての焙煎が置かれている。

飲む人の「今日の体調」「飲む温度」「合わせる甘味」で、同じ豆の表情が変わる。
店側が最初からその揺れを前提にしているから、こちらも気負わずに一杯を選べる。

さらに、焙煎技術の研鑽を日々積み重ねてきたことは、公式の受賞歴にも表れている。
・COFFEE COLLECTION 2024(WASHED部門 入賞)
・WORLD WINNERS OF COFFEE INTERNATIONAL FINAL 2025(3位)
・TYPICA GUIDE 2025(1-STAR ROASTER)
・Indian Speciality Coffee Roasting Championship(4位)


 “賞があるから正しい”ではなく、精度に対する執念が、日常の一杯に落とし込まれている
——その安心感が、まず土台にある。

店が焙煎度を語るとき、そこに「浅い/深い」の対立はない。
豆に合わせて焙煎度を選び、3つの帯として扱う。

浅煎り〜中浅煎り:柔らかな酸味を意識し、フルーツや紅茶のようなフレーバーを引き出す
中煎り:酸味と甘み、香ばしさや苦味。豆によってバランスが変わる帯
中深煎り〜深煎り:苦味やコク、香ばしさ。重厚な味わい

LIGHTが「軽さ」ではなく、果実の輪郭を出すための設計として置かれている。
MED-DARKは「重さ」ではなく、夜に沈むための受け皿として置かれている。
この“地図”があるから、飲み手の体調や気分の揺れを、選択として肯定できる。

第二章|この日飲んだ一杯:Ethiopia Guji Shakiso G1 Natural

豆の情報
・Ethiopia / Guji Shakiso G1 Natural
・地域:East Guji, Oromia
・品種:Heirloom
・標高:1,950–2,100m
・精製:Natural
・飲み方提案:アイスでもホットでも、この秋におすすめ

風味の所感
香りは、落ち着いている。前に出てくるタイプではない。
でも、飲みやすさが舌に馴染んだあと——遅れて、余韻が立ち上がる。
白桃のようなフローラル。
そこに、ベリーを思わせる果実の輪郭が重なって、静かに残る。

ナチュラルだから発酵感が強い、という方向ではなく、明るいフレーバーの強度で魅せるタイプ。
抽出の振れ幅が広く、温度や濃度で“遊べる豆”として設計されているのが伝わってくる。

ナチュラルは、果実のまま乾燥させることで甘さと香りが際立つ精製
発酵感が暴れる方向にも振れやすいが、この豆はそこへ行かない。
明るいフレーバーの強度で魅せる。
香りが静かで、余韻が果実”という構造が、ナチュラルの利点だけを綺麗に拾っている。

所作メモ|試飲で感じた「余韻の出し方」

この一杯は、前半で無理に香りを取りにいくより、後半で果実の線を残す方が美しい。

温度が少し下がったころに、白桃〜ベリーの層が開く
・口当たりを丸く保つと、余韻が長くなる
・濃くしすぎると果実の透明感が鈍るので、“飲みやすさ”を守る濃度が合う

静かな香りを信じて、余韻で勝負する豆

試飲の場で、味を言葉にするときに助けになるのが、店が示す精製の輪郭だ。
・Washed:雑味が少なくクリア。酸が明るく、すっきり
・Natural:甘さと香りが際立つ。果実感がしっかり
・Fermented / Anaerobic:香りや風味を最大限引き出す個性派。力強い香り

この“地図”を頭に置いて飲むと、
「これはナチュラルだから甘い」ではなく、
“どの甘さが、どの位置で出ているか”を掴める。

家での再現TIP|「アイスで輪郭を出す」

イベントで感じた流れを、家庭でも再現するならポイントは3つ。
1:抽出は“軽やかに”寄せる
 濃度を上げすぎない。透明感を優先。

2:温度変化を味方にする
 熱いうちは落ち着き、少し冷めてから果実が伸びる豆。
→ すぐ飲み切らず、途中の温度帯を必ず通す。

3:焙煎後の時間も“レシピの一部”
 公式の言葉どおり、焙煎直後は香りが弱いことがある。
→ 1〜2週間で香りが増す前提で、飲み頃を待つのも楽しみ方。

家での再現の“骨格”として、店が提示する How to drip を置いておく。

ホット(カップ1杯分)
・粉(中挽き)12g
・湯(90〜95℃)180g
・時間:約2分

アイス(ロンググラス1杯分)
・粉(細挽き)20g
・湯(90〜95℃)180g

注ぎの要点
1:蒸らし:浅煎り 約20秒/深煎り 30秒
2:2投目:少し勢いよく注ぐ or 注いだ後に軽く混ぜる
3:浅煎り:縁を描くように2〜3投でサッと水分を抜く
  深煎り:中心に3〜4投、ゆっくり呼吸させるように注ぐ

ホットは混ぜて注ぐ/アイスは氷を入れ混ぜて注ぐ
このレシピは「正解」ではなく、好みの輪郭を探すための基準点。
豆が持つ“静かな香り”を壊さず、余韻の果実だけを残す方向に、調整しやすい。

ペアリング|「甘い重さ」と「軽い菓子感」

看板スイーツ:チーズケーキ

この組み合わせは、相性がいい。理由が明確にある。

・チーズケーキの乳のコクが、口当たりを“丸く”整える
・その丸さの上で、エチオピアの白桃〜ベリーの余韻だけが長く残る
・甘さが強すぎないタイプなら、果実の透明感を邪魔しない

果実の余韻を、白い壁にそっと当てて返す。

チーズケーキは、甘さの強さではなく、乳の質感で余韻を伸ばす。
果実の透明感が、口の中で散らばらず、丸く整って長く残る。
果実の余韻を、白い壁に当てて返す”という比喩が、ここでは本当にそのまま起こる。

買うならこの2本|迷ったときの指針

Ethiopia Guji Shakiso G1 Natural(LIGHT)
今日の一杯の記憶を、そのまま家に持ち帰る。
落ち着き→余韻の果実という構造が好きなら、迷わずこれ。

MED-DARKの豆(店の中深煎り帯)
逆方向の“温度”を一本。
チーズケーキや焼菓子と合わせる日、夜の一杯の受け皿になる。
LIGHTを楽しむほど、MED-DARKが「深い」ではなく「別の設計」だと分かってくる。

LIGHTを一本だけで終えると、余韻の果実が“明るさ”としてしか記憶に残らない。
そこにMED-DARKを置くと、同じ店の設計が「昼と夜」として立体になる。
二本は、味の幅ではなく、生活の時間帯の幅

喫茶叙景文 ~舌に灯る果樹園~

光の下に置かれた袋は、静かで、どこか無口だった。
人の目線だけが、こちらを見ていない。
畑のほうを向いたまま、乾いた風の匂いを抱えている。

一口目は、整っている。
香りが押し寄せるのではなく、輪郭を保ったまま、淡々と通り過ぎる。
飲みやすさが舌に座って、安心が先に来る。

それなのに、二口目、三口目。
温度が少し落ちた頃、余韻が遅れて戻ってくる。白桃の明るさが、
言葉にする前に胸の奥へ触れて、ベリーの気配が短い光として残る。

コーヒーは、飲んだ瞬間に終わらない。ここでは、終わりがいちばん静かに始まる。
帰り道の途中で、ふいに思い出すのは香りではなく
——舌の上に、果樹園の輪郭だけが残っていることだ。

店舗概要

1 住所:

兵庫県姫路市飾磨区構2-209-1

2 アクセス:

―姫路バイパス「中地ランプ」から車で約3分。
山陽電鉄「西飾磨駅」から徒歩約19分。

3 営業時間:

― 11:00 〜 18:00
定休日: 月曜日、火曜日(祝日は営業する場合あり)

4 備考:

人気のバスクチーズケーキ: コーヒーとのペアリングを考えた自家製スイーツが評判で、特に「トロトロ食感のバスクチーズケーキ」や「カヌレ」を目当てに訪れるファンも多い。

5公式Instagram:
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