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赤いテントの下、湯気が果実になる|COFFEENOK【KOTO COFFEE & CRAFT MARKET】

赤いテントの内側に、午後の光がやわらかく反射していた。
黒いクロスの上には、ドリッパー、サーバー、スケール、紙カップ、そして小さな試飲用の器。
派手な装飾は多くない。けれど、その静かな道具の並びが、
ここで淹れられる一杯の温度を先に語っていた。

COFFEENOKのブースには、コーヒーの葉と実を描いた一枚の絵が置かれていた。
白い紙に、淡い緑の葉。そこに赤く実るコーヒーチェリー。
その絵は、メニュー看板というより、豆がここに届くまでの道筋をそっと示すようだった。

黒いテーブルの上で、湯が細く落ちていく。ドリッパーの中では粉がふくらみ、
泡が円を描き、香りが少しずつ立ち上がる。
イベント会場のざわめきの中でも、抽出の前だけは時間が遅くなる。

一杯のコーヒーは、飲む前からすでに始まっている。
COFFEENOKのブースでは、そのことを静かに思い出させてくれた。

第一章|COFFEENOKというブース:説明より先に、所作が語る

COFFEENOKのブースで印象的だったのは、まず道具の置き方だった。
スケールの上にサーバーを置き、透明感のあるドリッパーを重ねる。
横には湯を受ける別のサーバー、ミルクピッチャーのようなステンレスの器、試飲用の黒いカップ。
余分なものが少なく、抽出に必要なものが手の届く範囲に整っていた。

イベント出店のブースは、どうしても情報量が多くなりやすい。
看板、商品、列、会話、会計、提供。
その中でCOFFEENOKのテーブルは、少しだけ静かだった。
見せるために飾るというより、淹れるために整えてある。その印象が強い。

店頭には豆の紹介ボードも置かれていた。
そこには、EthiopiaとHondurasの二種類。
エチオピアには、white peach、red apple、oolong tea、cleanといった表現。
ホンジュラスには、dark chocolate、black berry、rum、creamyという表現が並んでいた。

この時点で、味の方向性がはっきり分かれる。
エチオピアは、明るく、澄んでいて、果実やお茶のような余韻を持つタイプ。
ホンジュラスは、少し深く、甘さと厚みがあり、チョコレートや熟した果実の輪郭を持つタイプ。

同じテーブルに並びながら、二つの豆は別々の景色を持っている。
明るい果実の線と、暗い甘さの線。
その対比が、COFFEENOKのブースをより印象的にしていた。

第二章|会場で選んだ一杯:赤みを帯びた液体に、果実の影が差す

残る一杯は、サーバーの中で赤みを帯びて見える。光の入り方もあるのだろう。
けれど、透明なガラスの中に溜まっていくコーヒーは、ただ黒い液体ではなく、
どこか果実の皮の色を思わせる深い赤を含んでいた。

ドリッパーの中では、粉の表面に細かな泡が残っている。
湯を注いだ直後の、まだ香りが逃げきっていない時間。
抽出が進むにつれて、サーバーの内側には湯気が曇りとなってまとわりつく。

完成したコーヒーだけではなく、途中の時間が写っていることだ。
コーヒーは、カップに注がれた瞬間だけが完成ではない。
豆を挽き、粉をならし、湯を落とし、膨らみを見て、落ちきるまで待つ。
そのすべてが一杯の輪郭を作っていく。

COFFEENOKの抽出風景には、急ぎすぎない空気があった。
湯の線は細く、手元は落ち着いている。
赤いテントの下、黒いクロスの上で、透明な器が湯気を抱えていく。

その一杯は、イベントの喧騒の中に置かれた、小さな静寂のようだった。

所作メモ:湯を落とす手元に、味の設計が見える

ハンドドリップ。
ドリッパーにはペーパーフィルターがセットされ、サーバーの下にはスケール。
湯量と時間を見ながら、一杯ずつ調整している様子がうかがえる。

特に印象的なのは、湯を注ぐ手元だ。
白いケトルから伸びる細い注ぎ口。
その先から、湯が一点に落ちる。
粉の中央に湯が入ると、表面がふくらみ、泡が広がり、濃い香りが立ち上がる。

ここで大切なのは、湯をたくさん入れることではない。
どこに、どれくらい、どの速さで落とすか。
その細かい判断が、コーヒーの味を決めていく。

浅煎り寄りの豆であれば、湯温や注ぎ方によって酸の出方が変わる。
果実の明るさを前に出すのか、甘さを少し厚くするのか。
お茶のような余韻を残すのか、飲みやすさを優先するのか。

COFFEENOKのブースで見た抽出は、派手なパフォーマンスではない。
けれど、道具の位置、湯の落とし方、サーバーに溜まる液体の色に、
味を整えようとする静かな意識が見えていた。

イベントでの一杯は、短い時間で提供される。
それでも、目の前で淹れられるコーヒーには、豆の説明だけでは伝わらない説得力がある。

香りは言葉より早く届く。
そのことを、抽出の湯気が教えてくれる。

豆の印象:|Ethiopiaの一杯:白桃と赤りんご、烏龍茶のような余韻

豆の情報から見ると、COFFEENOKのブースには、味わいの方向性が異なる二つの入口が用意されていた。
Ethiopia|白桃、赤りんご、烏龍茶、クリーン

実際に口にすると、その言葉はただの説明ではなく、かなり素直に一杯の中へ落ちていた。

最初に感じたのは、明るい果実感。
強く弾ける酸というより、白桃のようにやわらかく、
赤りんごの皮を思わせる軽い甘酸っぱさがある。
飲み口は重くなく、舌の上をすっと通っていく。

印象的だったのは、後半の余韻だった。
果実の甘さだけで終わらず、どこか烏龍茶のような、少し乾いた香りが残る。
そのお茶のような抜け感があるから、全体が甘くなりすぎない。

華やかだけれど、騒がしくない。
果実感はあるのに、飲み終わりはきれい。


イベント会場の一杯としても、とても飲みやすかった。
人の声や足音がある中でも、カップの中には静かな透明感があった。
白桃、赤りんご、烏龍茶、clean。
ボードにあった言葉を、飲みながらひとつずつ確かめていくような一杯だった。

なお、同じボードにはHondurasも紹介されていた。
そちらには、dark chocolate、black berry、rum、creamyという表記があり、
Ethiopiaとはまた違う、甘さと厚みのある方向性がうかがえた。
今回はEthiopiaをいただいたため、Hondurasは次に出会ったときに試してみたい豆として、
記録に残しておきたい。

ペアリング|果実の線に、焼き菓子を添える

Ethiopia|白い果実に、軽い焼き菓子を

エチオピアのように、白桃、赤りんご、
烏龍茶の印象がある豆には、重すぎない焼き菓子が合う。

たとえば、プレーンのスコーン、バタークッキー、
レモンケーキ、軽めのパウンドケーキ


果実感をつぶさず、コーヒーの香りを伸ばしてくれるものがいい。
特に白桃や赤りんごのようなニュアンスがあるなら、
バターの香りが強すぎない菓子の方が、余韻がきれいに残る。

このブースで印象に残ったこと

COFFEENOKのブースで残った印象は、強い主張ではない。
むしろ、静かに整えられた抽出台と、豆の個性をきちんと伝えようとする姿勢だった。

赤いテント。
黒いクロス。
白いケトル。
透明なドリッパー。
湯気で曇るサーバー。
小さな黒い試飲カップ。

その一つひとつが、写真の中で落ち着いたリズムを作っている。
イベント会場の一角でありながら、そこだけは小さなコーヒーカウンターのようだった。

いいブースは、飲んだ味だけでなく、淹れている時間まで記憶に残る。
COFFEENOKの一杯には、その余白があった。

喫茶叙景文 ~春の白い卓に、豆の余韻が残る~

赤いテントの布が、午後の光をやわらかく濾していた。
その下で、黒いテーブルは小さな舞台のように沈黙していた。

白いケトルが傾く。細い湯の線が、紙の内側へ落ちていく。
粉はゆっくりとふくらみ、泡は輪を描き、香りは見えないかたちで空気に混じる。

芝生の上には人の気配がある。声も、足音も、隣のブースの動きもある。
けれど、湯が落ちている数十秒だけ、世界は少し狭くなる。
ドリッパーとサーバー、そのあいだを流れる琥珀色の時間だけが、静かに際立つ。

ガラスの内側に、赤みを帯びた液体が溜まっていく。それは黒ではなく、
茶でもなく、果実の皮を遠くに思わせる色だった。
湯気が曇りを作り、曇りが消えるたびに、コーヒーの輪郭が少しずつ濃くなる。

イベントの一杯は、いつも短い。手渡され、飲み、次のブースへ歩き出す。
けれど、記憶に残る一杯は、短さの中に余白を残していく。

COFFEENOKのブースにあったのは、その余白だった。豆の名前。果実の言葉。
湯を落とす手元。黒い器の底に残る、わずかな液体。

飲み終えたあとも、香りはすぐには消えない。
赤い布の下で立ち上がった湯気は、会場のざわめきの奥に静かに沈み、
帰り道のどこかで、もう一度ふっと思い出される。

店舗概要

1 住所:

OFFEENOKI(東京農業大学 公認サークル)
東京都世田谷区桜丘1-1-1

2 アクセス:

最寄り駅:小田急線「経堂駅」または「千歳船橋駅」から徒歩約15分。東急田園都市線「用賀駅」から徒歩約20分、またはバスで約10分。

3 備考:

COFFEENOK(コーヒーノキ)」は、東京農業大学で活動している公認のコーヒーサークル

最新情報: 活動の様子や入会案内、イベント出店などは 公式Instagram公式X で発信されています。

活動内容: コーヒーに関する知識や技術を深めるだけでなく、カフェ巡りやイベントでのコーヒー提供などを行っています。

コラボ活動: 他大学(法政大学、東洋大学など)の珈琲研究会との交流やコラボ企画も積極的に実施しています。

4公式Instagram:
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