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香りをほどく焼き菓子|焼き菓子 cafuné【SAITMA コーヒーマルシェ】

イベントのテーブルには、白い布が敷かれていた。
その上に、透明な袋に包まれた焼き菓子が静かに並ぶ。

焼き色は強すぎず、けれど淡すぎない。ナッツの影、果実の粒、カカオのような深い色。
ひとつひとつの菓子が、派手な声を出すのではなく、
近づいた人の手元へそっと香りを渡してくる。

焼き菓子 cafuné。店頭の案内には、ハーブとスパイスのお菓子という言葉があった。

一口頬張ると、スパイスやハーブの香りがふわりと広がる。そこにナッツやフルーツ、
有機野菜などを混ぜ込むことで、味わいに奥行きを持たせている。
ただ甘いだけの焼き菓子ではない。香りが先に立ち、
素材があとから追いついてくるような菓子だった。

焼き菓子は、持ち帰れる香りだ。そのことを、cafunéのテーブルは静かに教えていた。

第一章|焼き菓子 cafunéという店:香りを軸にした、小さな菓子の設計

cafunéの焼き菓子には、見た目の華やかさよりも、香りの設計がある。

袋越しに見える焼き菓子は、どれも素朴に見える。
けれど、その素朴さの中に、スパイス、ハーブ、ナッツ、果物、野菜の要素が重なっている。

焼き菓子というと、バターの香りや砂糖の甘さが先に思い浮かぶ。
だがcafunéの菓子は、そこにもう一層、植物の気配を入れてくる。
ハーブは、香りを軽くする。スパイスは、輪郭を深くする。
ナッツは、噛むたびに香ばしさを残す。果物や有機野菜は、甘さの奥に水分と土の気配を置く。

つまり、cafunéの焼き菓子は、単に「お菓子」として完結していない。
香りを食べるための小さな器になっている。

テーブルに並んだ菓子たちは、どれも過度に飾られていない。
ラベルは白く、包装は透明で、見せ方は静か。だからこそ、焼き色や素材の粒がよく見える。

イベントの賑わいの中でも、cafunéのブースには少し落ち着いた空気があった。
それは、菓子の性格そのものに近い。大きく目立つのではなく、あとから思い出す。
食べ終えたあとに、舌の奥に香りが戻ってくる。そんな余韻を持つ焼き菓子だった。

第二章|有機人参のキャロットケーキ:野菜の甘さとスパイスの影

持ち帰ったひとつに、有機人参のキャロットケーキがあった。

袋の中のケーキは、しっとりとした焼き色をしている。
表面には素朴な生地の質感があり、断面には人参やナッツらしき粒が見える。
華美なデコレーションはない。けれど、そこにかえって素材の存在感が出ていた。

キャロットケーキは、甘さだけで押す菓子ではない。
人参の自然な甘み、油脂の丸み、スパイスの影、ナッツの歯ざわり。
それらが重なって、ようやくひとつの味になる。

cafunéのキャロットケーキは、写真からもその方向性が伝わってくる。
焼き菓子でありながら、どこか食事に近い落ち着きがある。
午後のおやつにも合うが、朝のコーヒーにも似合う。
甘いものが欲しい時だけでなく、少し呼吸を整えたい時にも向いている。

特に印象的なのは、有機人参という素材の選び方だ。
野菜を焼き菓子に入れると、甘さは単純ではなくなる。
砂糖の甘さの下に、土の柔らかさや、根菜特有の丸い香りが出る。

そこへスパイスが入ると、味の輪郭が沈みすぎない。甘さが重くならず、少しだけ背筋が伸びる。
キャロットケーキという名前の中に、cafunéらしい香りの思想が入っていた。

第三章|イベントで目を引いた並べ方:菓子が景色になるテーブル

cafunéのブースで印象に残るのは、焼き菓子そのものだけではない。
並べ方にも、店の雰囲気がよく出ていた。

木箱に収められた焼き菓子。
二段の台に積まれた小さなケーキ。
布の上に置かれたブラウニーのような深い色の菓子。
籠や木の器、植物の枝が添えられ、白い布の上に自然な陰影が生まれている。

こうした見せ方は、ただ商品を陳列しているだけではない。
焼き菓子が「風景」として置かれている。

袋に入った菓子は、本来なら均一に見えやすい。
しかしcafunéのテーブルでは、素材の色や器の質感、
布の余白によって、それぞれの菓子に表情が生まれていた。

焼き菓子は、手に取る前から始まっている。
どの菓子を選ぶか。どの焼き色に惹かれるか。
どの香りを家へ持ち帰るか。
イベントのブースでは、買う行為そのものが短い会話になる。
cafunéのテーブルには、その会話を急がせない空気があった。

第四章|コーヒーと合わせるなら:浅煎りよりも、中深めの余韻へ

cafunéの焼き菓子は、コーヒーとの相性を考えると面白い。

ハーブやスパイスを使った菓子は、合わせるコーヒーによって印象が大きく変わる。
明るい酸味の浅煎りを合わせると、香りが軽く跳ねる。
一方で、中煎りから中深煎りを合わせると、スパイスの影やナッツの香ばしさが前に出る。

有機人参のキャロットケーキなら、個人的には中煎りのコーヒーがいい。
ナッツ、ブラウンシュガー、シナモン、オレンジピールのようなニュアンスを持つ豆が合う。
重すぎる深煎りより、少し果実感の残る中煎り。
そこに人参の甘みとスパイスの香りが重なり、午後の一杯としてまとまりやすい。

ブラウニー系やカカオ感のある焼き菓子なら、中深煎りが似合う。苦味を強く出すより、
チョコレートやナッツの余韻があるコーヒー。口の中で菓子の甘さがほどけたあと、
コーヒーが静かに回収していく。

cafunéの菓子は、単体で食べても成立する。
けれど、コーヒーと合わせることで、香りの立ち方が変わる。
お菓子と飲み物が並ぶのではなく、ひとつの余韻をつくる。
その意味で、コーヒーイベントとの相性がとても良い焼き菓子だった。

ペアリング|香りの余韻を、カップの中へ

有機人参のキャロットケーキ × 中煎りコーヒー

有機人参のキャロットケーキには、中煎りのドリップコーヒーを合わせたい。
酸味が強すぎず、甘さの余韻を持つ豆がよく合う。
おすすめは、グアテマラ、コロンビア、ブラジルの中煎り。
ナッツ、キャラメル、オレンジ、スパイスのような要素があると、
ケーキの人参の甘さと自然につながる。

カカオ系の焼き菓子 × 中深煎りコーヒー

テーブルに並んでいた濃い色の焼き菓子には、中深煎りが合う。
チョコレート感、ローストナッツ、黒糖のような甘さを持つコーヒーなら、
焼き菓子の濃厚さを受け止められる。
苦味で押し切るのではなく、余韻で合わせる。
そこが大切だ。

ハーブ・スパイス系の焼き菓子 × 紅茶・カフェオレ

ハーブやスパイスがしっかり香る菓子なら、コーヒーだけでなく紅茶も良い。
ミルクティーやカフェオレに合わせると、香りの角が丸くなる。
特に夜のおやつなら、カフェオレがいい。
甘さがゆっくりほどけ、スパイスの気配だけが舌に残る。

家での再現TIP|焼き菓子をおいしく戻す小さな手順

持ち帰った焼き菓子は、そのまま食べてもよい。
ただ、少し手を入れると香りが戻る。

まず袋から出し、常温に少し置く。
冷えた状態では油脂が締まり、香りが立ちにくい。
食べる前に室温へ戻すだけで、生地のやわらかさと香りが出やすくなる。

キャロットケーキのようなしっとり系は、温めすぎない方がいい。
電子レンジなら数秒。
トースターなら短時間で表面だけ軽く温める。
中まで熱くするより、表面の香りを起こす程度で十分。

合わせる飲み物は、熱すぎない方が菓子の香りを拾いやすい。
コーヒーを少し冷まし、甘さと香りが見えやすい温度で飲む。
すると、スパイスやナッツの余韻がより長く残る。

喫茶叙景文 ~白い布の上に、スパイスの気配が並ぶ~

帰り道、袋の中で焼き菓子が小さく揺れる。
透明な包装の内側に、焼き色と素材の粒が閉じ込められている。
イベントの喧騒は少しずつ遠のき、手元には、まだ開けていない香りだけが残る。

焼き菓子には、不思議な時間がある。
買った瞬間にはまだ終わらない。
家に帰り、机に置き、袋を開け、飲み物を淹れる。
そこではじめて、イベントの一部がもう一度立ち上がる。

cafunéの菓子は、その時間によく似合っていた。
白い布の上に並んでいた姿は静かで、けれど記憶には深く残る。
ハーブ、スパイス、ナッツ、有機人参。
それぞれの素材が大きな声を出さず、焼き菓子の中で息を揃えている。

一口食べれば、甘さが来る。
そのあとに香りが来る。
さらに遅れて、素材の影が舌に残る。
菓子は小さいのに、余韻は少し長い。

コーヒーを淹れる。
湯気が上がる。
カップの縁に口を近づける前に、焼き菓子の香りがふっと戻る。

イベントで出会ったものは、現地で完結しない。
紙袋の中に入り、帰路を越え、部屋の静けさまでついてくる。
cafunéの焼き菓子は、その道のりに似合う菓子だった。
派手な記憶ではなく、あとからほどける記憶。
白い布の上に並んでいた小さな焼き色が、夜の机の上で、もう一度静かに灯る。

店舗概要

1 住所:

埼玉県さいたま市大宮区土手町2-95

2 アクセス:

―J東武野田線(東武アーバンパークライン)「北大宮駅」から徒歩約5分。

3 営業時間:

― 常設の販売店舗ではなく製造工房としての運営がメインです。そのため、一般の方が購入する際はWeb通販やイベント出店を狙うのが基本

4 備考:

国産小麦や古代小麦、米粉、きび砂糖などを厳選して使用しています。さらに、生地にナッツやドライフルーツ、さらには有機野菜などを贅沢に混ぜ込むことで、ザクザクとした食感や素材本来の深みのある甘みを引き出しています。

5公式Instagram:
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