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南米の香りに、焼き菓子の小さな幸福を重ねる|EL ORIGEN × Le Petit Bonner (さいたま COFFEE FESTIVAL)

イベント会場の通路に沿って、白いテントが並ぶ。
その一角に、黒いクロスをまとったブースがあった。

大きく掲げられていたのは、「南米のスペシャルティコーヒー専門店」という言葉。
テーブルには、色鮮やかなパッケージのコーヒー豆とドリップバッグ。隣には、焼き菓子が籠に並んでいた。

コーヒーだけではなく、焼き菓子まで一緒に並ぶブースは、つい足を止めたくなる。
飲むだけで終わらない。持ち帰って、家の机で続きを開くような余白がある。

この日出会ったのは、南米のコーヒーを扱うEL ORIGENと、焼き菓子を通じて「小さな幸せ」を届けるLe Petit Bonner
コーヒーの香りと焼き菓子の甘さが、ひとつのテーブルの上で静かに手を取り合っていた。

第一章|南米のスペシャルティコーヒーと、小さな幸せを結ぶ場所

EL ORIGENのブースでまず目に入ったのは、黒いクロスに白く浮かぶ「南米のスペシャルティコーヒー専門店」の文字だった。
派手に声を張るというより、扱うものの軸をまっすぐ示している印象がある。

並んでいたのは、ペルー、コロンビア、ブラジルなど、南米の産地を中心にしたコーヒー。
豆の袋、ドリップバッグ、説明カードが整然と置かれ、ひとつひとつの銘柄に個性があることが、視覚だけでも伝わってくる。

パッケージは柔らかな色づかいで、産地ごとに表情が異なる。
赤みを帯びたペルー、淡い緑のコロンビア。
いわゆる“渋いコーヒー屋”の重厚感というより、産地の風景をそっと紙に移したような軽やかさがあった。

その隣に並んでいたのが、Le Petit Bonnerの焼き菓子。
名刺には、「小さな幸せ」という名の小さな洋菓子屋とある。
裏面には、「お菓子を通じて皆様と『幸せ』を紡いでいきます」という言葉。
この一文が、ブース全体の空気をよく表していた。

コーヒーと焼き菓子は、どちらも一瞬で終わるものではない。
香りを待つ時間があり、ひと口目の余韻があり、食べ終わったあとにも少しだけ気持ちが残る。
EL ORIGENのコーヒーとLe Petit Bonnerの焼き菓子は、その“残り香”の部分でよく響き合っていた。
店名の由来にある「小さな幸せ」という言葉通り、日常の中で手に取りやすい焼き菓子を届ける店であることが伝わる。

南米のコーヒーを、埼玉の街から届ける。
その距離感が、イベントのテントの中で自然に結ばれていた。
コーヒーは遠い土地から来る。けれど、それを受け取る場所は、いつも生活の近くにある。
このブースには、そのことを静かに思い出させる力があった。

第二章|会場で選んだ二つのドリップバッグ:ペルーとコロンビア

今回持ち帰ったのは、ペルーとコロンビアのドリップバッグ。
どちらもEL ORIGENの個性が出ている銘柄であり、家で試すのにちょうどよい組み合わせだった。

ペルーはチャンチャマヨ G-1 Qグレード
品種はCatimor、精製はWashed、スコアは81.00。アンデス山脈の中腹、
チャンチャマヨ地方で育まれた上位等級のコーヒーで、ジャスミンやアプリコットのフローラルな香り、
レモンを思わせる爽やかな酸が特徴とされていた。
ペルーの印象は、派手に香りを広げるというより、口の中でゆっくり輪郭を描くタイプに近い。
明るい酸がありながら、後味は清らかに引いていく。
「すっきりとした中に、やさしい甘さ」という言葉がよく似合う。

一方のコロンビアは、メデリン
カード上では、品種欄にSupremo、グレード欄にCaturra、精製はWashed、
スコアは83.58と記載されていた。モジアナ地域で収穫された豆とされ、
ブラウンシュガーの甘み、ナッツの香ばしさ、ココアのようなほろ苦さが重なる一杯として紹介されていた。

コロンビアは、ペルーよりも重心が少し低い。明るさよりも、甘みとコクの安定感が先に来る。
イベントで歩き疲れたあと、または家で落ち着きたい時間に向く味わいだ。

ペルーが澄んだ果実の余韻なら、コロンビアは焼き菓子に寄り添う甘苦さ
同じ南米でも、印象はかなり異なる。
こうして二つを並べると、EL ORIGENが「南米」という大きな括りの中で、
産地ごとの表情を丁寧に届けようとしていることが見えてくる。

第三章|カヌレという小さな挑戦:キャサバ粉が生む、もちもちの余韻

今回、特に印象に残った焼き菓子がカヌレだった。
ブースには、カヌレ、スコーン、フィナンシェなどが並び、
コーヒーと一緒に楽しむ提案が自然に置かれていた。

店主さんによると、このカヌレにはキャサバ粉が使われている。
キャサバは、タピオカの原料としても知られる植物。
その粉を使うことで、一般的なカヌレとは少し違う、
もちもち感を重視した食感に仕上げているとのことだった。

カヌレと聞くと、外側のカリッとした香ばしさ、中のしっとり感を想像する。
しかし、このカヌレはそこにもうひとつ、弾力のある食感が加わる。
タピオカに通じるような、噛むほどに戻ってくるもちっとした感覚。
その個性が、コーヒーと合わせたときに面白い余韻を生む。

おすすめの食べ方は、オーブンで1分程度温めること。
ほんの少し温めることで、香りが立ち、表面と中の食感の差が出やすくなる。
焼き菓子は、温度で印象が大きく変わる。
常温で食べる落ち着きもよいが、少し温めることで、作り手が狙った香りや食感が開くことがある。

このカヌレは、作るのにかなり苦労したそうだ。
キャサバ粉を使うということは、通常の小麦粉とは吸水や焼き上がりの感覚が変わる。
配合、焼き時間、温度、食感の着地点。
そこには、見た目だけではわからない試行錯誤がある。

小さな焼き菓子ひとつにも、店主さんの工夫が詰まっている。
その話を聞いたあとに見るカヌレは、単なるイベントのおやつではなくなる。
コーヒーと合わせるために選ばれた、小さな作品として見えてくる。

コロンビアのようなコクのあるコーヒーと合わせれば、カヌレの香ばしさが深まる。
ペルーのような明るい酸のあるコーヒーと合わせれば、もちっとした甘さに軽さが生まれる。
一個のカヌレが、コーヒーの選び方で表情を変える。それもまた、ペアリングの楽しさだった。

家での再現TIP|ドリップバッグを“雑に淹れない”ための小さな所作


EL ORIGENのドリップバッグ裏面には、美味しい淹れ方が記載されていた。
内容量は9g。
おすすめ湯量は150〜180ml。
一杯分としては、軽やかに飲むなら180ml、味をしっかり出したいなら150ml寄りがよい。

淹れ方はシンプルだ。
まず、矢印の方向に上部を切り取る。
次に、左右のクリップを外側へ起こし、カップにセットする。
粉が浸る程度の熱湯を注ぎ、30秒ほど蒸らす。
その後、2〜3回に分けて湯を注ぐ

ここで大切なのは、ドリップバッグを“ただ湯に浸す袋”として扱わないこと。
最初の蒸らしで粉全体に湯を触れさせる。
そのあと、一気に注ぎ切らず、数回に分けてゆっくり注ぐ。
これだけで、味の出方が変わる。

ペルーは、湯量をやや多めにして透明感を出すとよい。
150mlだと酸と甘さがやや凝縮し、180mlに近づけると後味の清らかさが出やすい。
チーズケーキと合わせるなら、少し軽めに淹れて、酸を残すほうが相性はよい。

コロンビアは、やや少なめの湯量でコクを出すと、焼き菓子に寄り添いやすい。
フルーツケーキやカヌレと合わせるなら、150〜160mlあたりで抽出し、甘苦さを残すのが向いている。

ドリップバッグは手軽だ。
けれど、手軽さと雑さは違う。
30秒待つ。
数回に分けて注ぐ。
湯量を少しだけ意識する。
その小さな所作だけで、家の一杯はちゃんと変わる。

イベントで買ったコーヒーは、家で完成する。
袋を開けた瞬間、会場のテントの記憶が、湯気の中でふたたび立ち上がる。

ペアリング|チーズケーキにはペルー、フルーツケーキにはコロンビア


コーヒーと合わせるなら特におすすめと教えてもらった組み合わせがある。

ひとつ目は、チーズケーキ × ペルー
ペルーの持つレモンのような酸、アプリコットを思わせる柔らかな果実感は、
チーズケーキの乳製品由来のコクとよく合う。
チーズの重たさをコーヒーの酸がほどき、甘さの輪郭をきれいに整える組み合わせだ。

ペルーは、焼き菓子の中でもクリームチーズやバターを使ったものに合わせやすい。
酸があることで、口の中が重くならない。
食後に一口コーヒーを含むと、チーズケーキの甘さがやわらかく引き、
次のひと口へ自然につながる。

ふたつ目は、フルーツケーキ × コロンビア
コロンビアのブラウンシュガーのような甘み、ナッツの香ばしさ、
ココアを思わせるほろ苦さは、ドライフルーツや焼き込まれた生地の甘みと重なりやすい。

フルーツケーキは、果実の酸味、砂糖の甘さ、焼き菓子としての香ばしさが同居する。
そこにコロンビアを合わせると、全体が少し落ち着いた方向にまとまる。
華やかさを立たせるというより、焼き菓子の奥行きを深くするペアリングである。

この二つの提案は、とても実用的だった。
「どのコーヒーが美味しいか」だけではなく、
「何と合わせると気持ちよく飲めるか」まで考えられている。
イベントでコーヒーを買うとき、こうした具体的なペアリングの言葉があると、
家に帰ってからの楽しみ方が一気に見えてくる。

豆を選ぶ時間は、飲む前からすでに始まっている。
焼き菓子を選ぶ時間もまた、香りの続きを選ぶ時間なのだ。

買うならこの二つ:軽やかなペルー、甘苦いコロンビア


・ペルーは、明るい酸と清らかな余韻を楽しみたい人に向く。
ジャスミン、アプリコット、レモンのようなニュアンスがあり、後味は軽い。

・チーズケーキやフィナンシェ、バター感のある焼き菓子と合わせると、
甘さが重くなりすぎない。コロンビアは、甘みとコクを求める人に向く。
ブラウンシュガー、ナッツ、ココアのような印象があり、焼き菓子との相性が強い。
フルーツケーキ、カヌレ、チョコチップスコーンなど、
香ばしさや甘苦さを持つものと合わせたい。

どちらも派手な驚きというより、暮らしの中に置きやすい。朝に飲むならペルー。

・午後の焼き菓子時間ならコロンビア。
そんなふうに、時間帯で選び分けても面白い。イベントで出会ったコーヒーは、
その場で飲むだけでは終わらない。
ドリップバッグとして持ち帰ることで、家の机、休日の午後、夜の休憩時間へと続いていく。
EL ORIGENのコーヒーは、その“続きを持ち帰る楽しさ”がよく似合う。

喫茶叙景文 ~小さな幸せが、湯気の中でほどける~

家に戻り、袋を机の上に置く。イベントのざわめきはもう遠い。
かわりに、透明な袋の中で、焼き菓子が静かに影を落としている。

ペルーのドリップバッグは、淡い赤のパッケージをまとっていた。
コロンビアは、緑のにじむ柔らかな色。
どちらも、遠い土地の名前を持ちながら、今は手の届く場所にある。
湯を沸かす。袋の上部を切る。紙のクリップを開き、カップにかける。
たったそれだけの動作なのに、イベント会場で見た黒いクロス、籠に並ぶ焼き菓子、
店主さんの言葉が少しずつ戻ってくる。

粉に湯を落とすと、香りが立つ。最初は細く、やがて輪郭を持つ。
ペルーは明るく、澄んだ果実の気配を残す。
コロンビアは少し低く、焼き菓子の甘さに寄り添うように沈む。

カヌレを温める。ほんの一分。
その短い時間で、部屋の空気に甘い香ばしさが混ざる。
キャサバ粉のもちっとした食感は、噛むたびにゆっくり戻り、コーヒーの苦みと重なる。
焼き菓子は小さい。
けれど、その小ささの中に、作り手の試行錯誤が折りたたまれている。

名刺に書かれていた言葉を思い出す。「小さな幸せ」。
それは大きく掲げるものではなく、湯気の向こう側にあるものだ。
一杯のコーヒーを淹れる時間。焼き菓子を温める一分。
袋を開けたときの香り。そのどれもが、日常の中では見逃してしまうほど小さい。

けれど、きちんと受け取れば残る。
舌に、手に、部屋の空気に。南米から来た香りと、
埼玉の小さな洋菓子屋の甘さが、ひとつの午後をつくっていく。

イベントは終わった。けれど、コーヒーはまだ終わっていない。
カップの中で、焼き菓子の隣で、静かに続いている。
小さな幸せは、いつもそういう顔をしてやって来る。

店舗概要

1備考:

EL ORIGEN(エル オリヘン)は、
さいたま市を拠点に活動する、南米産スペシャルティコーヒー専門ブランド。
運営はMisionero株式会社で、ペルー、ブラジル、ボリビアなど南米のコーヒーを中心に扱っている。
常設店舗ではなく、オンライン販売や地域のコーヒーマルシェ、イベント出店を中心に展開している。
ブランドの背景には、代表の竹内氏が南米アマゾンで現地の人々と生活した経験があり、単なるコーヒー販売ではなく、南米の土地・人・文化・物語を届けるブランドとしての色が強い。
現地農園とのつながりや、希少なコーヒーの取り扱いも特徴。
焙煎は、さいたま市のKURIHARA COFFEE ROASTERS(栗原コーヒー)に委託している。
南米産コーヒーの華やかな香り、果実感、透明感のある甘みを引き出す焙煎が特徴で、
浅煎り〜中煎りの明るい味わいと相性が良い

2公式Instagram:
1備考:

Le Petit Bonheur(ル・プティ・ボヌール)**は、
フランス語で「小さな幸せ」を意味する名前を持つ、さいたま市周辺で活動していた焼き菓子ブランド。
タルト、スコーン、クッキー、カヌレなど、手作り感のある焼き菓子を中心に展開していた。
EL ORIGENのコーヒーとは、さいたま市周辺のコーヒーマルシェやイベントで共同出店しており、
南米産スペシャルティコーヒーと焼き菓子のペアリングを提案していた。
コーヒーのフルーティーな酸味や甘みを、焼き菓子の香ばしさやバター感、
やさしい甘さが受け止める組み合わせになっている。
今回のブースでは、EL ORIGENのコーヒー豆・ドリップバッグと、Le Petit Bonheurの焼き菓子が並び、
コーヒー単体ではなく、家に持ち帰って楽しむペアリングまで含めた提案として見せられていた。

2公式Instagram:
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