MENU

香りの花束を、甘さで受け止める|ROCA Coffee Roasters(Japan Coffee Journey in SHINJUKU)

黒い袋は、夜の縁。
白い袋は、朝の面。
どちらも同じ名前を抱えているのに、置いた瞬間から空気の温度が変わる。

ブースには透明なジャーが並び、カードの横に粉が小皿で置かれていた。
「香りを先に」。その順番だけは、誰の足取りにも同じ速度で届く。
再訪というのは、味の確認ではなく、香りの再会に近い。
一度知った“立ち上がり”を、もう一度、ちゃんと自分の中に戻すための行為。

そして最後に渡された言葉が、この店の輪郭を決めた。フィナンシェ。
香りを競わせない。甘さで受け止める。
その一言で、ROCAの一杯が「香りの店」ではなく、香りを主役にする設計の店だとわかる。

第一章|ROCA Coffee Roastersという店:フローラルを“主役”にする設計

ROCA Coffee Roastersは、東京・墨田に拠点を置くロースター。
袋に印字された「Sumida, Tokyo」が、立地以上の宣言に見える。
都会の速度の中で、香りだけは置いていかない――そんな姿勢。

ブースで印象的だったのは、香りの提示が「説明」ではなく「体験」になっていたこと。
カード、ジャー、小皿。視線→香り→言葉の順に、身体が自然に進む。
その流れの中で聞こえてきたのが、フローラルの香りが強いという核。

香りが強い店は、甘さや苦さで押し切らない。
むしろ、香りを壊さないために、味の厚みを“整える”。ROCAの輪郭は、そこにある。

第二章|今回の持ち帰り:白と黒、二つのブレンド

持ち帰ったのは、ディップスタイルのコーヒーバッグが二種類。
ROCA 4th Wave Blend(白)と、Dark Velvet Reserve(黒)

・ROCA 4th Wave Blend:コロンビア/エチオピア/中国
・Dark Velvet Reserve:インドネシア/ブラジル/中国

どちらも1杯分は10g
作り方の指示は共通していて、熱湯160g→4分待つ
「香りの店が、抽出の再現性を“待つ時間”で揃えてくる」──そこが静かに信頼できる。

第三章|会場の小さな所作:香りを先に飲む

まず粉を見る。
次に小皿の上の粒子の細かさを確かめる。
そして、香りを吸う。飲む前に、もう半分は終わっている。

ROCAの説明の芯は、抽出技術の誇示ではない。
香りの交通整理。
どこで立ち上げ、どこで伸ばし、どこで甘さに着地させるか。
その順番を守るだけで、コーヒーは“花束の形”を保つ。

所作メモ:ディップ式で整える一杯の輪郭

160gと4分、香りを崩さないための規格
1杯分:10g
熱湯:160g
待ち時間:4分
・抽出中は、バッグをカップの中で上下させ、濃さを好みに寄せる(やりすぎない)
 ここで大事なのは、強く濃くしないこと。

 ROCAは、香りが強い。濃さで押すと、香りが輪郭を失う。
「濃さではなく、立ち上がりで満足させる」。この店の作法は、その方向に揃っている。

家での再現TIP:香りの強いコーヒーを“きれいに”飲む

香りを主役にする三つの手

カップを温める:香りの立ち上がりが遅れない
湯量は160gを守る:薄めではなく“設計通り”にする
4分は短縮しない:香りの層が揃う前に引き上げない

もし濃さを足したいなら、上下させる回数で調整する。
追加の粉や、長時間の浸漬で解決しない。
ROCAの香りは、繊細に強い。乱暴な濃さは、香りを濁らせる。

ペアリング:香りを競わせない甘さ

最後に教わったペアリングは、フィナンシェ
理由は明快で、ROCAがフローラルの香りが強い方向だから。

香りの強いコーヒーに、香りの強いスイーツを重ねると、主役が二人になって輪郭が曇る。
だから合わせるのは、香りは控えめでも甘さがしっかりしている焼き菓子
フィナンシェの甘さとバターの厚みが、香りを押さえつけず、むしろ“”になる。

香りを競わせない。甘さで受け止める。
この一文が、そのままROCAの飲み方になる。

買うならこの2本:白は“広がり”、黒は“沈み”

ここは好みで割れるが、二つを“役割”で分けると選びやすい。
白:ROCA 4th Wave Blend
香りの広がりを楽しむ側。軽やかに立ち上がり、明るい余韻へ行きやすい構成。

黒:Dark Velvet Reserve
香りを沈ませて、奥行きを作る側。夜の縁のように、余韻を長く保ちやすい。

迷ったら、まず白。
次に黒。
同じ店の香りが、二つの時間帯に分かれていく。

喫茶叙景文 ~香りの少ない甘さが、主役を引き立てる~

白い袋を開けると、空気が少し明るくなる。
黒い袋を開けると、部屋の隅に影が増える。
どちらも同じ名前を持ちながら、香りだけが別の時間を連れてくる。

花の香りは、強いほど難しい。強さは、時に乱暴に見える。
けれどROCAの強さは、乱暴ではない。
強くするために削ったものが、ちゃんと残っている。

フィナンシェは、香りが少ない。
そのかわり、甘さがしっかりある。
その甘さが、香りの居場所を作る。
香りは競わなくていい、と教えるように。

口の中で甘さが先に立ち、香りがあとから追い越してくる。
追い越した香りは、勝ち誇らず、静かに残る。
花束は、束ね方で香りが変わる。
そして束ね方は、たぶん、店の思想に似る。

この店は、香りを主役にする。
そのために、甘さを脇役に置く。脇役は、声を張らない。
ただ、舞台を揺らさない。

白と黒の袋は、今日も机の上で呼吸している。
開けるたび、部屋の温度が一度だけ変わる。
その一度のために、また、再訪という言葉が必要になる。

店舗概要

1 住所:

東京都墨田区東向島2-14-12-1F

2 アクセス:

―(東武「曳舟駅」から徒歩約1分、京成「曳舟駅」から徒歩約7分

3 営業時間:

―8:00 〜 19:00(L.O.なし)

4 備考:

香水等の制限: 繊細なコーヒーの香りや豆の選定を大切にしているため、強い香水や整髪料、柔軟剤の香りがする方の入店は断られる場合があります。

5公式Instagram:
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする