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自家焙煎吉本|再訪で出会った三つの豆と、食卓へ続く一杯

初めて訪れる店では、どうしても店全体の輪郭を追うことになる。

どのような豆が並び、どのような人が立ち、どのような空気の中でコーヒーが売られているのか。
一度目の訪問は、いわば店との名刺交換に近い。

けれど、再訪は少し違う。前回知った店の姿を土台にしながら、今度は豆そのものへ踏み込める。
何を選び、何と合わせ、どの時間に飲むのか。
店の印象から一歩進み、コーヒーが暮らしのどこへ置かれるのかを考えられる。

今回、自家焙煎吉本で手に取ったのは、ブラジル さくらブルボン、パプアニューギニア W、
パナマ ゴールデンビートル SHBの三種。
どれも産地名だけでは終わらない背景を持ち、味わいの方向も、合わせたい食べ物も異なる。

二度目の訪問で見えたのは、単に珍しい豆を置く店という姿ではない。
珍しさを、日々の食卓へ降ろしてくれる店だった。

第一章|自家焙煎吉本という店

自家焙煎吉本は、埼玉県新座市石神にある自家焙煎コーヒー店。

店では少量から試せるコーヒーを扱い、複数の豆を飲み比べたい人や、
自分の好みを探したい人にも手を伸ばしやすい形を整えている。

コーヒー豆は、量が多いほど得になるとは限らない。

初めて出会う産地や品種では、まず一杯飲んでみたいと思うことがある。
香りは好みに合うのか。
酸味はどのように現れるのか。
冷めたあとに甘みが残るのか。

少量販売には、その確かめ方を許してくれる気軽さがある。

自家焙煎吉本の魅力は、定番だけに寄らず、少し珍しい豆にも触れられる点にある。
見慣れない名前の豆であっても、店主の言葉を通すことで、飲み方や合わせ方が具体的になっていく。
ただ珍しいから選ぶのではない。

朝食に合わせる。
サンドイッチと飲む。
生クリームを使った洋菓子に重ねる。

そんな食卓の風景まで一緒に持ち帰れることが、この店らしさなのだと思う。

第二章|再訪で選んだ三つの豆

今回購入したのは、次の三種。

・ブラジル さくらブルボン
・パプアニューギニア W
・パナマ ゴールデンビートル SHB

同じコーヒーでありながら、それぞれが向いている時間も、寄り添う食べ物も異なる。
ブラジルは朝へ。パプアニューギニアは昼の軽食へ。パナマは午後の洋菓子へ。
三種を並べると、一日の食卓をコーヒーで巡るような構成になった。

ブラジル さくらブルボン
「さくらブルボン」という名前には、やわらかく華やかな印象がある。

土台には、ブラジルらしいナッツを思わせる芳ばしさとコク。
そこへ柑橘系を思わせる爽やかな酸味と、チョコレートのような穏やかな甘みが重なる。

重たすぎず、軽すぎない。

酸味と甘みの両方を持つため、単独で飲むよりも、何かを食べながら楽しむ姿が自然に浮かぶ豆だ。

店主のおすすめは、軽食やモーニング。

トーストや卵料理、バターを使ったパンのような朝食では、豆の芳ばしさが食事の香りと重なる。
一方で酸味があるため、口の中を重くしすぎず、次の一口へつないでくれる。

さらに薦められたのが、フルーツサンド。

果物の甘酸っぱさ、生クリームのまろやかさ、パンのやさしい甘み。

そこへ、さくらブルボンの酸味とコクが重なれば、食べ物とコーヒーの境界がなめらかになる。
朝の一杯として飲みやすく、休日の少し遅い朝にも合う。
今回二袋選んだ理由も、日常の中で使いやすい幅の広さにあった。



パプアニューギニア W
「W」は、ウォッシュド精製を示す表記。

果肉を除去したあとに水を用いて処理するウォッシュドは、豆そのものの輪郭を感じやすく、
口当たりにも清潔感が出やすい。

この豆に感じられるのは、青リンゴやマスカットを思わせるみずみずしい酸味と、そこに寄り添う穏やかなコク。酸味だけが前へ出るのではない。

透明感の中に芯があり、飲み終えたあとには雑味の少ない余韻が残る。
口の中を一度きれいに整え、次のひと口を迎えさせるような豆だ。

店主のおすすめは、サンドイッチ

パン、野菜、卵、ハム、チーズ。
サンドイッチは複数の味が重なる食べ物だが、この豆は具材を覆い隠さない。

とくに野菜や卵を中心とした軽めのサンドイッチなら、
ウォッシュドらしい澄んだ酸味が食後感を軽くしてくれる。

三袋選んだのは、日常の昼食へ置きやすいと感じたからでもある。
甘い菓子と合わせるコーヒーとは違い、食事の横に静かに立てる。
それでいて、飲み終えたあとには確かな個性が残る。



パナマ ゴールデンビートル SHB
パナマ産のコーヒーには、華やかな香りを期待したくなる。

「ゴールデンビートル」の名を持つこの豆も、フローラルな香りと透明感のある酸味が印象の中心にある。
そこへ黒糖やキャラメルを思わせる濃厚な甘みが重なり、香りの軽やかさだけで終わらない。

「SHB」は、Strictly Hard Beanの略。

標高の高い場所で育ち、ゆっくりと熟した硬い豆に用いられる等級表記だ。
昼夜の寒暖差の中で成長することで、味わいに密度が出やすい。

この豆に合わせるなら、店主のおすすめは生クリーム系の洋菓子。

ショートケーキ、ロールケーキ、シュークリーム。
クリームの脂肪分とやわらかな甘さが、パナマの華やかさを受け止める。

生クリームがコーヒーの香りを消すのではなく、むしろ酸味の角を包み、
甘い余韻を長く見せる組み合わせになる。

三種の中では、最も午後らしい一杯。
忙しさの間に飲むというより、皿を一枚用意し、菓子と向き合いながらゆっくり味わいたい豆だ。

第三章|珍しい豆を、珍しいままで終わらせない

「珍しい豆を扱う店」と聞くと、少し構えてしまう人もいるかもしれない。

専門用語が多い。味の説明が難しい。自分に違いが分かるか不安になる。

けれど、自家焙煎吉本で受け取った説明は、
産地や等級だけで終わらなかった。

何と合わせるか。
どの時間に飲むか。
どの食事の横へ置くか。


その案内があることで、珍しい豆は急に身近になる。

パナマのSHBも、サンドイッチに合わせるパプアニューギニアも、フルーツサンドに寄り添うブラジルも、
知識として覚える必要はない。

まずは食卓へ置いてみる。そこで初めて、香りや酸味や甘みが、自分の言葉に変わっていく。
珍しい豆を並べる店はあっても、珍しさの先にある暮らしまで示してくれる店は多くない。
自家焙煎吉本の魅力は、豆の名前を知ることではなく、
その豆を自分の一日に迎える方法まで知れることにある。

第四章|ペアリング再現メモ

ブラジル さくらブルボン
合わせたいものは、モーニング、軽食、フルーツサンド。
トーストやバター系のパンでは、芳ばしさとコクがつながる。
フルーツサンドでは、果物の酸味と豆の酸味、生クリームと豆の甘みが重なる。
朝食と合わせるなら、やや軽めに抽出し、飲み疲れしない濃度に整えたい。

パプアニューギニア W
合わせたいものは、サンドイッチ。具材は卵、ハム、野菜など、重たすぎないものが合う。
ウォッシュドらしい透明感を生かすため、甘い菓子よりも食事系の方が、
この豆の清潔な後味を感じやすい。
冷めたあとにも酸味の輪郭が残りやすいため、急いで飲み切らず、食事と交互に楽しみたい。

パナマ ゴールデンビートル SHB
合わせたいものは、生クリーム系の洋菓子。ショートケーキ、ロールケーキ、
シュークリームなど、クリームの割合がしっかりした菓子ほど、
豆の華やかさと甘い余韻が映える。
最初にコーヒーだけで香りを確かめ、そのあとに菓子をひと口。
再びコーヒーへ戻ると、黒糖やキャラメルを思わせる甘みを拾いやすい。

第五章|買うなら、どう選ぶか

三種のうち、どれを選ぶかは、味の好みだけでなく、飲む場面で決めると分かりやすい。

朝食やフルーツサンドと合わせたいなら、ブラジル さくらブルボン

昼食やサンドイッチの横へ置くなら、パプアニューギニア W

洋菓子とともに午後を楽しむなら、パナマ ゴールデンビートル SHB

一つに絞れないなら、少量ずつ選び、同じ一日の中で飲み分けるのもよい。

朝、昼、午後。時間が変われば、コーヒーに求めるものも変わる。

再訪で購入した三種は、それぞれ別の役割を持ちながら、一日の中できれいにつながっていた。

喫茶叙景文|三つの袋の、その先へ

コーヒーの袋を並べると、それぞれがまだ開かれていない時間に見えた。

朝のパン。
昼のサンドイッチ。
午後の生クリーム。

豆を買ったはずなのに、持ち帰ったのは一日の風景だった。

ブラジルには、窓から入る朝の光。
パプアニューギニアには、昼の食卓を整える静けさ。
パナマには、菓子皿を一枚出すための余白がある。

珍しい名前の豆も、湯を注げば暮らしの中へ降りてくる。

香りを知り、食べ物と重ね、冷めていく味を追う。
その繰り返しの中で、産地の名前は少しずつ自分の記憶に変わっていく。

再訪とは、同じ店へ戻ることではない。
前回より少し深い場所から、その店の続きを受け取ることだ。


三つの袋は、まだ閉じたまま。けれど、その中にはすでに、三つの食卓が待っている。

店舗概要

1 住所:

埼玉県新座市石神4丁目7-15

2 アクセス:

―JR武蔵野線「新座駅」からは少し離れており、西武池袋線「東久留米駅」東口から徒歩約19分ほどのエリアに位置

3 営業時間:

― 10:00 〜 16:00
定休日: 水曜日・土曜日・日曜日(月・火・木・金のみ営業)

4 備考:

販売形態
実店舗、オンライン販売
主な特徴
自家焙煎コーヒーの小分け販売
複数銘柄の飲み比べ
珍しい産地や品種の取り扱い

5公式サイト:
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