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旅の途中で、甘さが立ち上がる|NOMAD COFFEE(Japan Coffee Journey in SHINJUKU)

会場の白い光の中で、赤だけが少し熱を持って見えた。
黒い袋に貼られた四角いラベル。そこに同じ言葉が三回並ぶ——NOMAD NOMAD NOMAD
旅の途中で飲むコーヒーは、しばしば「疲れをほどく道具」になる。
けれどこのブースの佇まいは、道具ではなく物語の側に立っていた。

 “COFFEE ON THE ROAD——コーヒーは旅の途中で。”
その短い合図が、目の前のカラフェの列と、テーブルいっぱいの豆袋を、
ひとつの風景にまとめ上げている。

第一章|“赤い設計”——豆袋が語る、NOMADの世界観

NOMAD COFFEEの面白さは、まず視覚から始まる。
黒い袋に赤いラベル。情報は整然としていて、余白は多い。
この余白が、味の輪郭を受け止める“”になっている。

会場のテーブルに並ぶ豆は、国名だけで終わらない。
プロセス、フレーバーノート、そしてローストレベル。
それらは「説明」ではなく、飲み手の頭の中に地図をつくるための道標だ。

そして掲示物が言う。
この店は、静岡の小さなスタンドであり、
たったひとつのヴィンテージ・トレーラーの焙煎所である、と。
固定された場所を持ちながら、心の中心はいつも“移動”にある。
だからNOMAD——遊牧の名が似合う。

第二章|飲んだ一杯①:インドネシア——葡萄の気配が、どこまでも残る

香り・口の中で感じる味・余韻、どこにでも“葡萄”を感じる。
まるで本当にブドウジュースを飲んでいるかのよう。

この“どこにでも葡萄”という表現が、すごく正確だ。香りだけ葡萄、ではなく、
入口〜中盤〜余韻まで、葡萄が居座る。
フレーバーが一瞬の花火で終わらず、帯のように続いていく。

ここで大事なのは、葡萄が「甘い」だけでなく、果実そのものとして立ち上がっている点。
ジュースのように感じた、というのは、単に甘さが強いのではなく、
果汁の密度や香りの拡散が“飲み物としての果実
に寄っている、ということだ。

この一杯は、会場の雑音を一段だけ遠くする。

第三章|飲んだ一杯②:Apollo——“あのチョコだ”と断言させる、いちごの甘さ

いちごのチョコレートを食べているようなフレーバー。飲んだ瞬間に“あのチョコだ”って思う味。

この「飲んだ瞬間に一致する」感覚は、再現性の強い香味の証拠だ。
連想ではなく、記憶の味に直結している。口に入れた瞬間、
脳が“答え合わせ”を始める——そのスピード感がApolloの魅力になる。

さらにスクショでは「Apollo」DRIP BAGの説明があり、
“お菓子みたいな懐かしさ”を想起させる文脈で語られていた。
つまりApolloは、設計として「驚き」より「親しみ」に舵を切っている。
そのうえで、香りがちゃんと立つから、ただ甘いで終わらない。

第四章|飲んだ一杯③:グアテマラ——“何でも合う”の正体は、軽さではなく整い

GUATEMALA / FINCA GARDENIA
Roast Level:Light roast
Process:Anaerobic Natural
Flavor Notes:Guava / Cherry / Maple Syrup

グアテマラに“グアバ/チェリー/メープルシロップ”。
甘さの方向が複数あって、果実もある。けれどローストはライトで、輪郭は軽い。
ここに「何でも合う」の理由がある。

万能さは、“主張が弱い”から生まれるわけではない。
味が整っているから、食べ物の要素を受け止められる。

所作メモ|試飲が“きれい”だった理由

「クリーンさが高い」「ほんのりと風味が感じられた」。
会場での試飲は、環境が落ち着かないぶん、味が散りやすい。
それでもクリーンに感じたなら、設計は次のどれかに寄っている可能性が高い。

・雑味が立たない焙煎(焦げ・煙っぽさが出ない)
・抽出が暴れないレシピ(過抽出のえぐみが出にくい)
・温度帯の管理(冷めた時に崩れにくい)

カラフェが複数並び、提供がスムーズに回っていた点も、味の安定に寄与している。
試飲が“きれい”なブースは、だいたい手元が落ち着いている。

家での再現TIP|3つの味を、自宅で“同じ方向”に寄せる

① INDONESIA / GRAPE INFUSED——果汁感を伸ばす
目標は香りを逃がさず、余韻を伸ばすこと
抽出のイメージは「軽く、でも薄くしない」
合う方向:クリアに、甘さを残す

② Apollo(いちごチョコ)——“連想のスイッチ”を早く入れる
目標は甘い香りの立ち上がりを最初に出すこと
抽出のイメージは「入口の香りを作って、後半は丸く」
合う方向:香り先行→口当たりをやさしく

③ GUATEMALA / FINCA GARDENIA——整いを保つ
目標はバランスを崩さず、果実と甘さを同居させること
抽出のイメージは「尖らせないライト」
合う方向:軽さより“整い

ペアリング|「旅先の皿」を想像する

Ⅰ. INDONESIA / GRAPE INFUSED ——“何も足さない果物”がいちばん強い
文字起こしは、はっきり言っている。
「葡萄だったらパイナップルとか」
「こういう何もつけない(そのまま)フルーツが合う」
「ちょっとお菓子とかではないかな」
ただし「チーズケーキとかも合いそう」
この設計は、すごく納得がいく。
葡萄の果汁感が強いとき、焼菓子のバターは香りを“上書き”しやすい。
だからまずは、果物の水分と香りで、コーヒーの葡萄を同じ方向に増幅する。
おすすめの並べ方はこうだ。
ひと口インドネシア→パイナップル→もうひと口インドネシア。
コーヒーの中の葡萄が、果物の酸で輪郭を増して戻ってくる。
「甘い」ではなく、「果実である」ことを確かめるペアリング。

Ⅱ. Apollo——いちごケーキ、あるいは“いちごチョコの記憶
会話の流れに「いちごケーキ」が出てくる。
Apolloの強みは、飲んだ瞬間に“あの味”と一致するところ。
だから合わせるなら、同じく「誰の記憶にもある」いちごがいい。
いちごケーキ
いちご系のチョコ菓子(“あのチョコ”を補強する)

Ⅲ. GUATEMALA / FINCA GARDENIA——焼菓子とバター、そして“さっぱり”
ここは発言が明確だ。
「焼き菓子とかバター系」
「バターの効いたクッキー」
「あまりしっかりしたコーヒーじゃないので、さっぱりしたケーキとか焼き菓子」
「あとフルーツは絶対全部合う」
つまりグアテマラは、受け止める幅が広い。
バターで甘さを引き出してもいいし、フルーツで酸を立ててもいい。
会場で一杯だけ選ぶなら、こういう“受け止め役”が最後に効く。

買うなら会場で選ぶ“性格の違い”

INDONESIA / GRAPE INFUSED(葡萄)
唯一無二の“葡萄の連続”。香り→口→余韻まで一貫して葡萄。
会場で「忘れない一杯」を持ち帰るならこれ。

GUATEMALA / FINCA GARDENIA(ライト×アナエロビック)
Guava / Cherry / Maple Syrupの設計で、食べ物に強い。
自宅でゆっくり“合わせて遊ぶ”ならこれ。

喫茶叙景文 ~赤い小袋が、遠い川の音を連れてくる~

白い会場は、光が多すぎて、味の影が薄くなる。その中で、赤いラベルだけが熱を持っていた。
黒い袋の中に、遠い国の地名を閉じ込めて、けれど香りは閉じ込められない顔で、
こちらを向いている。

葡萄の気配は、口に入る前から始まる。香りが先に、すこしだけ未来を告げる。
飲むと、葡萄は偶然ではなく、設計であることがわかる。
余韻まで葡萄がほどけず、舌の上に薄い果汁の膜が残る。

いちごのチョコは、驚きではなく、記憶に触れる。
あの味だ”と断言した瞬間、コーヒーは飲み物であることをやめて、時間の入口になる。
幼いころに誰かが買ってくれた袋菓子の匂い。指先の甘さ。紙のこすれる音。
そんなものが、熱い液体の中に折りたたまれている。

グアテマラは、整っている。どこかを尖らせず、どこかを削りすぎず、ただ崩れない。
だからバターにも、焼菓子にも、果物にも、うなずくように寄り添える。
何でも合う”という言葉は、軽さではなく、信頼の別名なのだと気づく。

旅の途中で飲むコーヒーは、移動を止めない。それでも一瞬だけ、歩幅を揃えてくれる。
会場の雑音が遠くなり、カラフェの列が静かに光り、赤いラベルの向こうに道が見える。
次にどこへ行くかではなく、次に何を感じるか。
その問いを、湯気のないコーヒーが、ゆっくりと手渡してくる。

店舗概要

1 住所:

 静岡県湖西市新居町新居3393-11 コスタ浜名湖 1F

2 アクセス:

―弁天島海浜公園から車で約1分。

3 営業時間:

―水〜金:11:00 〜 17:00
 土・日:10:00 〜 16:00
 定休日: 月・火曜日

4 備考:

浅煎り〜中煎り: コーヒー豆を「豆」ではなく「果実」と捉え、本来の酸味や甘みを最大限に引き出すため、深煎りしすぎない焙煎にこだわっています。

5公式Instagram:
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