東京ビッグサイトの南展示棟。SCAJ2026の会場には、抽出したてのコーヒーの香りと、
人々の話し声が幾重にも重なっていた。ロースターたちがそれぞれの一杯に込めた想いを伝え、
来場者が新しい味わいとの出会いを楽しむ。
その賑わいの中で、ひときわ目を引く大きな写真があった。
青空の下、緑の山々が連なる広大な農園。その風景に重ねられていたのは、
「農園つくってます。ルワンダで」という言葉だった。
そのブースの名は、DEER COFFEE ROASTERY(ディアーコーヒーロースタリー)。
白い暖簾には「RWANDA COFFEE」の文字が大きく掲げられ、
鹿のロゴをあしらったクラフト紙の袋が並ぶ。
木製の展示台には、精製方法ごとに分けられたコーヒー豆と、
それぞれの特徴を紹介するカードが置かれていた。
ここで扱われているのは、ルワンダ産のコーヒー。
しかし、今回の取材で知ることになったのは、単に産地を限定したロースターの姿ではなかった。
生産者との出会いをきっかけに、現地で収穫や精製に関わり、
さらには自社農園の立ち上げに挑戦する人々の物語だった。
そして、実際に試飲したウォッシュドの一杯には、爽やかな柑橘系の風味と、
澄んだ飲み心地があった。
遠い国の農園で育ったコーヒーが、どのような道のりを経て目の前のカップに届くのか。
今回の珈琲巡礼は、その道のりを知る時間となった
第一章|ルワンダと日本を結ぶ、DEER COFFEE ROASTERY
DEER COFFEE ROASTERYは、東アフリカに位置するルワンダのコーヒーを中心に取り扱う、
自家焙煎コーヒーブランドだ。
ルワンダは、標高の高い山岳地帯や丘陵地が広がる国であり、コーヒー栽培に適した地域を有している。
特にブルボン系の品種が栽培され、精製方法や生産地域によって、柑橘系の爽やかな酸味から、
ベリーを思わせる果実感、柔らかな甘みまで、多様な個性が生まれる。
同ブランドが大切にしているのは、生産地と消費地をつなぐこと。
公式に掲げる考え方の一つが、生産者と継続的な関係を築くという姿勢だ。
コーヒーは自然環境に左右される農産物であり、毎年必ず同じ品質になるとは限らない。
その変化や生産者が抱えるリスクも理解しながら、長く関係を続けていくことを目指している。
また、取材時点では一般客が訪問できる実店舗を設けず、
自家焙煎したコーヒーの販売やイベント出店などを通じて活動していると伺った。
会場で印象的だったのは、ルワンダの農園風景を大きく掲げていたことだ。
コーヒー豆の袋や抽出器具だけでなく、
栽培地の景色を見せることで、その一杯が生まれた場所を想像できる。
そこには、単なる商品の紹介を超えた、生産地への関心を届けようとする姿勢が表れていた。
一杯のコーヒーには、味わいだけでなく、それを育てた土地と人々の暮らしがある。
DEER COFFEE ROASTERYは、その背景まで伝えようとするブランドなのだ。

第二章|国際協力への関心から始まった、コーヒーとの出会い
今回の取材では、担当者さんにブランドを始めたきっかけについて尋ねることができた。
もともと関心を持っていたのは、国際協力だったという。
海外の生産地と日本の消費者を結ぶような事業に携わりたい。
そんな想いを抱く中で、コーヒーという農産物にたどり着いたそうだ。
そして、縁あってルワンダを訪れる機会が生まれた。
現地で出会ったのは、コーヒーの生産に携わる人々やスタッフたち。
その出会いが、コーヒー事業へ進む大きなきっかけになったと話してくださった。
コーヒーを好きになったことから焙煎を始める人もいれば、飲食業の経験を通じて専門店を開く人もいる。
しかし、DEER COFFEE ROASTERYの出発点には、
国際協力を通じて生産者と消費者を結びたいという想いがあった。
それは、コーヒーを一つの商品として扱うだけではなく、
その背景にある生産者の仕事や暮らしにも目を向けるということなのだろう。
遠い国で収穫されたコーヒーチェリーが精製され、輸出され、焙煎され、日本の食卓へ届く。
その長い工程には、数多くの人々が関わっている。
普段、私たちが目にするのは焙煎された豆や、カップに注がれたコーヒーだ。
しかし、その前には農園で木を育て、実を収穫し、精製する人々の仕事がある。
担当者さんの話を聞きながら、一杯のコーヒーを通して生産者の存在を身近に感じてもらうことも、
このブランドの大切な役割なのだと感じた。
第三章|ルワンダの大地に植える、未来への一歩
今回の取材で、特に興味を引かれたのが自社農園の立ち上げについての話だった。
担当者さんによると、2025年10月頃からルワンダでコーヒーの定植作業を始めたという。
定植とは、育てた苗木を実際の農園に植え付ける作業のこと。
コーヒーの木は植えてすぐに収穫できるわけではなく、成長し、実をつけるまでには数年の時間が必要になる。
DEER COFFEE ROASTERYでは、植えたコーヒーの木から将来的に豆を収穫し、
日本へ輸出して、多くの人に飲んでもらうことを目指している。
取材時には、およそ3年後を見据えた取り組みとして説明されていた。
今、農園に植えられている小さな木が成長し、やがて赤いコーヒーチェリーを実らせる。
その実が収穫され、精製され、焙煎され、いつか日本のカップへと注がれる。
考えてみれば、それは気の遠くなるような時間の積み重ねだ。
一杯のコーヒーを飲む時間は、ほんの数分から数十分かもしれない。
しかし、その一杯が生まれるまでには、数年という時間が流れている。
会場に掲げられていた「農園つくってます。ルワンダで」という言葉は、短く、飾り気のないものだった。
けれど、その言葉の奥には、土地を知り、人と関わり、木を育て、収穫の日を待つという大きな挑戦がある。
まだカップに注がれていない未来のコーヒーを、今この瞬間から育てている。
そんな取り組みを知ることができたのは、今回の取材の大きな収穫だった。

第四章|KOPAKAKI、五つの精製が描くルワンダの個性
会場で紹介されていたのは、
ルワンダ西部州カロンギ地区に位置するKOPAKAKI(コパカキ)協同組合のコーヒーだった。
掲示されていた基本情報によると、標高は約1,600〜1,900m。品種はブルボン。
特徴的だったのは、同じ生産者組織のコーヒーを、五つの精製方法によって紹介していたことだ。
木製の展示台には、ウォッシュド、ナチュラル、ハニーなどの名前が並び、それぞれの豆の状態や香味の違いが分かるよう工夫されていた。
・【ウォッシュド|Washed】
果肉などを除去し、水洗工程を経て乾燥させる精製方法。
会場では、柑橘類やフローラルな香味を持つ、クリーンな味わいとして紹介されていた。
今回、実際に試飲したのがこのウォッシュドだった。
・【ナチュラル|Natural】
コーヒーチェリーを果実の状態で乾燥させる精製方法。
果肉を残したまま乾燥工程を進めることで、
ベリー系の果実感やチョコレートを思わせる風味が特徴として紹介されていた。
・【ハニー|Honey】
果皮や果肉を除去したあと、粘液質の一部を残して乾燥させる精製方法。
会場では、キャラメルやハチミツを思わせる甘みが特徴として示されていた。
・【アナエロビックナチュラル|Anaerobic Natural】
酸素の少ない環境での発酵工程を取り入れたナチュラル精製。
フルーティーでワインを思わせる香味が紹介されており、
発酵工程によって生まれる個性を楽しめるタイプとして展示されていた。
・【アナエロビックハニー|Anaerobic Honey】
嫌気性発酵の工程とハニー精製を組み合わせた方法。
会場では、トロピカルフルーツを思わせる風味が特徴として紹介されていた。
五つの精製方法を並べて見ることで、同じ地域のコーヒーでも、
収穫後の工程によって異なる個性が生まれることが分かる。
特に、展示台に置かれた豆の見本は印象的だった。
精製方法の名前だけでなく、実際の豆を見比べられるようにすることで、
コーヒーづくりへの理解を深められる。
産地を知ることは、その土地の味を一つに決めつけることではない。
同じ土地から生まれる、多様な表情を知ることでもあるのだ。


第五章|ウォッシュドの一杯、澄んだ味わいの向こうに
今回、試飲するコーヒーを選ぶ際、担当者さんに好みを伝えた。
クリーンで、スッキリとした味わいのコーヒーが好きであること。
すると、おすすめしていただいたのが、KOPAKAKIのウォッシュドだった。
口に含んでまず感じられたのは、爽やかな味わいと、すっきりとした喉ごし。
コーヒーのボディが強く前面に出るのではなく、軽やかな飲み心地が広がっていく。
その中に、ほのかな柑橘系のフレーバーが感じられた。
強い苦味や重厚感で印象を残すタイプではなく、透明感のある味わいが特徴的だった。
特に印象に残ったのは、飲み終えたあとに感じられる清涼感だ。
口の中に重たい余韻が長く残るというよりも、爽やかな風味が自然に通り抜けていくような飲み心地。
コーヒーの個性を感じながらも、気負わず楽しめる一杯だった。
そのため、コーヒー特有の強いボディや重たさが苦手な人にも、おすすめしたくなる味わいだと感じた。
もちろん、コーヒーの好みは人それぞれだ。濃厚なコクを好む人もいれば、果実感や酸味、軽やかさを求める人もいる。
今回のウォッシュドは、後者の魅力をよく感じられる一杯だった。
澄んだ水面に光が差し込むように、ほのかな柑橘の香りが、静かに味わいの輪郭を描いていく。
そんな印象を残すコーヒーだった。

第六章|糖度とpH、感覚だけに頼らない味づくり
担当者さんへの取材では、コーヒーの生産や精製にどのように関わっているのかについても話を伺った。
印象的だったのは、実際に自分たちで収穫や精製に携わっているという点だった。
コーヒーチェリーの収穫に関わるだけでなく、糖度計を使用して果実の糖度を確認することもあるという。
また、発酵工程では時間を計測し、pH値を確認しながら味わいの設計に関わっていると説明されていた。
コーヒーの精製において、発酵は香味を左右する重要な工程の一つだ。
発酵の進み方は、温度や時間、微生物の働きなど、さまざまな条件によって変化する。
そのため、感覚だけで判断するのではなく、数値を確認しながら工程を管理することには意味がある。
糖度やpH値を確認する取り組みからは、生産現場で品質を追求しようとする姿勢が感じられた。
さらに、焙煎についても、日本で日常的に飲まれるコーヒーとの親しみやすさを意識しながら、
味わいを設計していると話されていた。
生産地での工程を知り、その豆を日本でどのように焙煎し、どのように飲んでもらうのかを考える。
その一連の流れに関わることで、コーヒーの味わいをより広い視点から捉えることができるのだろう。
コーヒーの味は、焙煎だけで完成するものではない。
農園での選択から、すでに一杯の設計は始まっている。
今回の話は、そのことを改めて考えさせてくれた。
第八章|朝の一杯に込められた、作り手の願い

ペアリング|朝のトーストと、ルワンダの一杯

喫茶叙景文|ルワンダの大地から、朝の食卓へ
店舗概要
- 1 住所:
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販売形態: オンラインショップ(ECサイト)
- 2 備考:
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【ルワンダへの想い・生産者支援】
店主・鹿毛謙作さんは、元JICA海外協力隊のコーヒー隊員。現地での栽培・生産者支援の経験を活かし、パートナーとともにガコメイエ農園を立ち上げ、運営している。
【一貫した品質管理】
コーヒーチェリーの買い付けから精製、日本での焙煎・販売まで一貫して管理。現地農家との直接的・継続的な取引を通じて、品質向上と生産者の生活支援を両立している。
【コーヒーの特徴】
「千の丘の国」ルワンダで育まれたスペシャルティコーヒー。フルーティーでクリーンな香味と、澄んだ飲み心地が特徴。毎日でも飲み飽きない味わいを追求している。 - 5公式サイト:


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