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g and BAGEL FACTORY|ベーグルとコーヒーの先に、人が交わる場所

ベーグルとコーヒー。
並べてみれば、カフェでは決して珍しくない組み合わせだ。
けれど、新座で出会った g and BAGEL FACTORY の一杯には、
その言葉だけでは収まらない背景があった。

天然酵母を使って焼き上げられるベーグル。
店内で焙煎されるコーヒー。

そして、そのコーヒー豆を一粒ずつ選別する人がいる。
ここは複合福祉施設の中にあるカフェだ。

ただし、「福祉施設に併設されたカフェ」という言葉だけで説明してしまうと、
この場所の本質から少し離れてしまう。

ベーグルを食べる人。コーヒーを飲む人。働く人。
子どもも、大人も、その肩書きを一度置いて同じ場所に集まる。

そんな日常の交差点として、このカフェは存在していた。

第一章|福祉と街のあいだにあるカフェ

埼玉県新座市。
g and BAGEL FACTORYは、複合福祉施設 GENKI INNOVATION CENTER NIIZA の中にあるカフェだ。

施設内には、児童発達支援、放課後等デイサービス、就労継続支援B型、
生活介護
など、異なる役割を持つ福祉事業所が入っている。

その一角にあるのが、このカフェ。
店内へ入ると、まず目に入るのは長いカウンターに並んだベーグルだ。
その奥にはエスプレッソマシンやグラインダーが並び、さらに店内には大きな焙煎機も置かれている。

木、黒、白を基調とした空間は落ち着いていて、
「福祉施設の中」という先入観を持って訪れると、おそらく少し驚く。
ここで扱われているのは、天然酵母のベーグル約15種類と、自家焙煎コーヒー。
さらにコーヒー豆やオリジナルバッグ、ギフト商品なども並ぶ。

けれど、この場所が目指しているものは商品の販売だけではない。
取材の中で聞いた言葉のひとつに、強く印象へ残ったものがあった。

「コーヒーを飲む場所って、お仕事とか関係なくなるじゃないですか」性別も年齢も、
仕事も立場も関係なく、人が同じ場所で一杯のコーヒーを飲む。

カフェという文化そのものを、この土地へ広げたい。
その思いもまた、g and BAGEL FACTORYが生まれた理由のひとつだった。

第二章|限られた材料からつくるベーグル

店頭に並ぶベーグルには、ひとつの大きな特徴がある。

生地に使われている小麦は、北海道産「春よ恋」。
そこへ天然酵母、塩、砂糖などを合わせ、限られた材料から生地を作っている。
さらに取材時には、基本となる生地には卵や牛乳を使用していないと教えていただいた。

運営母体は保育事業から始まっており、食物アレルギーへの対応と向き合ってきた背景があるという。
一般的な菓子パンやドーナツには、卵や乳製品が使われているものも多い。

だからこそ、可能な限り材料をシンプルにすることは、
この店にとって単なる製法上のこだわりだけではない。

「誰が食べるのか」を考えた先に、今のベーグルがある。

もちろん、アレルギーの程度や製造環境によって条件は異なるため、
「誰でも食べられる」と簡単に言い切ることはできない。
それでも、食べる人の選択肢を少し広げたいという考えが、生地づくりの根にあることは伝わってきた。

第三章|ベーコンポテト、素朴な生地の中のジャンク感

今回選んだのは、ベーコンポテトベーグル。

一口かじる。
まず感じるのは、ベーグルらしいしっかりとした歯ごたえ。
柔らかさだけを追いかけたパンとは違い、噛むほどに生地の存在感が伝わってくる。
そして、その中から現れるのがベーコンポテトだ。

ゴロゴロと入ったベーコン。
ポテトのまろやかさ。
そこへベーコンの塩気と旨味が加わり、かなり分かりやすい「美味しい」がやってくる。

面白いのは、生地そのものが丁寧で素朴だからこそ、中の具材には少しジャンクな味わいを感じること。
真面目な生地の中から、突然いたずらっぽい味が顔を出す。
そんなギャップがある。

天然酵母、北海道産小麦という言葉から、優しく素朴な味だけを想像していたが、
それだけでは終わらなかった。

噛むほどに生地を感じ、次の瞬間にはベーコンの旨味。
食事として満足感のあるベーグルだった。

なお、甘いものを選ぶなら、スタッフさんからはブルーベリー系のベーグルもおすすめしていただいた。
甘い系と食事系。
約15種類という品数があるからこそ、その日の気分によって選べる楽しさもある。

第四章|コーヒー豆から生まれる「仕事」

g and BAGEL FACTORYでコーヒーを語るとき、味だけを見ることはできない。

ここでは、就労継続支援B型の利用者がコーヒー豆の選別に関わっている。

さらに、商品のパッケージづくりなども仕事のひとつになっているという。
選別された豆を受け取り、店内で焙煎する。包装する。店頭へ並べる。
そして、そのコーヒーを誰かが飲む。一杯になるまでの工程の中に、人の仕事がつながっている。
コーヒーを始めるにあたり、全国各地で焙煎に取り組む福祉施設も見学したという。

その原点には、「コーヒーから、どんな仕事を生み出せるだろう」という視点があった。
これは「福祉だからコーヒーを使う」という話ではない。
美味しいコーヒーをつくるために必要な仕事の中へ、それぞれの人が役割を持って入っていく。
だから、客の手元に届いたときには、まず一杯のコーヒーとして存在する。

背景を知らなくても飲める。けれど背景を知れば、その一杯を見る景色が少し変わる。

第五章|店内で焙煎されるコーヒー

店内の一角には、存在感のある焙煎機が置かれている。

飾りではない。
販売・提供するコーヒー豆は、ここで自家焙煎されている。焙煎は週に1〜2回ほど。
代表自らが焙煎することもあれば、担当スタッフが焙煎を行うこともあるという。

取材時のブレンドでは、ブラジル/コロンビア/グアテマラなどを軸に、
キリマンジャロやケニアなどを組み合わせていると教えていただいた。

しかし、興味深かったのは豆の銘柄そのものよりも、その後に聞いた言葉だった。

g and BAGEL FACTORYでは、一年を通して同じ味へ固定することだけを目指していない。

季節によって焙煎を変える。
さらに、提供する場所や一緒に食べるものに合わせて、ブレンドそのものも考える。

中心にあるのは、「ベーグルに合うコーヒー」という考えだ。
夏なら、アイスでごくごく飲めること。しかし軽いだけではなく、きちんとコクを感じられること。
ホットなら、甘いベーグルにも、食事系の塩気のあるベーグルにも合わせられること。

コーヒーだけを完成させるのではなく、隣に置かれるベーグルまで見ながら焙煎する。
一杯と一皿を別々に考えない。そこにも、この店らしさを感じた。

第六章|夏のアイスコーヒー

ベーコンポテトと一緒に注文したのは、アイスコーヒー。
窓際の席へ運び、グラスを手に取る。
最初に感じたのは、軽いボディだった。

夏のアイスコーヒーにありがちな、
強い苦味や重たいロースト感を前へ押し出すタイプとは少し違う。口当たりは軽快。

その中に、わずかにフローラルな印象がある。

飲み込んだあとは、ウォッシュドのコーヒーを思わせるようなすっきりとした後味へ移り、
余韻は長く引っ張らない。

香りをひとつ残して、すっと席を立つようなコーヒーだった。

取材で聞いた、
「夏はごくごく飲めるけれど、ちゃんとコクもあるように」という言葉。

実際に飲んでみると、その狙いが理解できる。
濃厚さで存在感を示すのではなく、食べながら何度でもグラスへ手を伸ばせる。

ベーグルの横に置くコーヒーとして考えれば、この軽さには意味がある。

第七章|ベーコンの塩気を、コーヒーがほどいていく

今回の組み合わせは、
ベーコンポテトベーグル × アイスコーヒー。
この二つは、同じ方向へ味を重ねるペアリングではない。
ベーグルには、ベーコンの塩気、脂、旨味がある。
そこへ深く重たいコーヒーを合わせれば、満足感はさらに大きくなるだろう。

しかし今回のアイスコーヒーは逆だった。
軽いボディ。
フローラルな香り。
そして短い余韻。
ベーコンポテトを一口。
アイスコーヒーを一口。
すると、口の中に残った油脂感や塩気が少し整えられ、また次のベーグルを食べたくなる。

コーヒーが主張するのではなく、次のひと口のために道を空けていく。
そんな関係だった。
これは、店側が話していた「ベーグルに合うコーヒー」という言葉を、もっとも分かりやすく体験した瞬間でもあった。

第八章|「この店の味」だけでは終わらない

取材の最後に、これから挑戦したいことについて尋ねた。
返ってきた答えが印象に残っている。
季節に合わせてブレンドを変える。
提供する場所に合わせてブレンドを変える。
そして、

「お店の味だけじゃなくて、必要としてくださる方に合わせて準備ができたらいいなと思っています」

コーヒー店を語るとき、「変わらない店の味」という言葉はひとつの誉め言葉になる。
けれど、この店が目指している方向は少し違う。

自分たちの味を守り続けることだけではなく、
飲む人に合わせて変化できるコーヒーを目指している。
それは、このカフェが生まれた背景とも似ているように思う。

子どもがいる。
大人がいる。
支援を受ける人がいる。
働く人がいる。
近所からベーグルを買いに来る人もいる。
それぞれ違う人を、ひとつの型へ合わせるのではない。

違うまま同じ場所にいられるように、場所の側が少しずつ形を変える。
コーヒーのブレンドを相手に合わせる姿勢も、そんなこの店のあり方と重なって見えた。

喫茶叙景文 |一杯になるまで

窓際に、ベーグルとアイスコーヒーを置いた。

ベーコンの塩気を噛みしめ、冷たいコーヒーを飲む。
花を思わせる香りがわずかに残り、あとには何も引きずらない。
またベーグルへ手を伸ばす。

店の奥には焙煎機がある。
棚には豆がある。
その豆を選んだ手があり、袋を整えた手があり、焙煎した手がある。
けれど、グラスを前にした瞬間、それらを知らなくてもいい。
ただ、美味しいと思えばいい。

福祉と地域をつなぐための特別な何かは、案外、こういう普通の午後なのかもしれない。
誰かが働き、誰かが焼き、誰かが淹れ、誰かが飲む。
それぞれの一日が少しだけ重なった場所に、

一杯のコーヒーが置かれていた。

店舗概要

1 住所:

埼玉県新座市池田4丁目8-44(保育園側から入場)

2 アクセス:

「朝霞台駅」からバス乗車、「池田二丁目」下車徒歩約11分。

3 営業時間:

― 11:00 〜 16:00(13時以降が比較的ゆっくり過ごせます)
定休日: 日・月・祝

4 備考:

【ベーグル生地】

北海道産小麦「春よ恋」×天然酵母を使用。卵・乳製品不使用で、一晩かけて低温発酵。
もっちりした食感と噛むほど広がる甘みが特徴。

【ラインナップ】

常時10〜12種類のベーグルに加え、ベーグルサンド3〜4種類、スコーン、ベーグルドーナツなどを販売。ベーコンポテトなどの食事系から、季節のあんバター系まで幅広い。

【イートイン】

ベーグルサンドにスープ・ミニサラダを添えたランチプレートや、ホットドッグなども楽しめる。

【コーヒー】

店内の焙煎機で仕上げる自家焙煎コーヒーを提供。
豆の選別から丁寧に行い、ベーグルとの相性を考えた、やさしい香りと穏やかな味わいを目指している。

【施設・空間】

複合福祉施設 「GENKI INNOVATION CENTER NIIZA」 内にあり、
障がいの有無や年齢を問わず過ごせるインクルーシブな空間。
ローテーブルやオムツ替えスペースも備え、子連れでも利用しやすい。

5公式サイト:
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