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深煎りの輪郭が、銀座の夜をほどく|宮越屋珈琲(銀座コーヒーフェスティバル)

銀座という場所は、歩幅が速い。光が多い。情報が多い。けれど、コーヒーの香りだけは、
いつも“先に”身体を止める。
行列でも、看板でもなく、焙煎の気配が先に椅子を用意してしまう。

今回の一杯は、会場の賑わいのなかで、ふと“昔からある濃さ”を思い出させる店――宮越屋珈琲。
「究極」ではなく、毎日の生活の中で“どなたにとっても最高においしいコーヒー”を目指す、
という宣言がまず強い。その姿勢が、イベント会場でもぶれずに立っていた。

第一章|“究極”よりも、日常に刺さる一杯

宮越屋が掲げるのは、通を唸らせるための誇示ではなく、生活の中で繰り返し選ばれるための強度。
ここでいう強度は、派手さではなく安定して届く満足だと思う。

イベントだと、つい“フルーツ爆発”みたいな方向へ気持ちが走る。
けれど宮越屋は、そこに寄り切らない。
落ち着いたテンションのまま、カップの底まで芯のある濃さを残してくる。

第二章|宮越屋の背骨:焙煎が味を決める

宮越屋は「おいしさは焙煎の差で決まる」と言い切る。
味わいを「コク(ボディ)」「香り(アロマ)」「風味(フレイバー)」「酸味」「苦味」という要素で捉え、口の中の“重量感”の多様さを高い次元で追い続ける。

そして鍵として示されるのが焙煎技術。
上質な豆を、長時間じっくり深く焼く。生産性の面ではデメリットにもなり得るその基本姿勢が、宮越屋の味を決めている。
ここが、軽さに流れない理由だ。

第三章|会場で見えた所作と、あなたの戦利品

今回は試飲の文字起こしがないぶん、写真が語っていた。布ネルの気配、艶のあるポット、
そして積み上がるパック。

購入したドリップは、パッケージからして“定番の顔”が揃う。

・三越ブレンド
・ハウスブレンド
・オリジナルブレンド

この並びがいい。迷わせるためじゃなく、「ここから選べば外さない」と言われている感じが
する。
イベントで新しい刺激を浴びた帰り道に、家で“戻ってこられる味”を持ち帰る――この安心感は強い。

所作メモ|宮越屋式「家で再現」の骨格(公式の淹れ方)

 宮越屋は、家庭で扱いやすいペーパーフィルターのドリップ方式を公式に紹介している。

豆量:1杯分 10〜15g が目安。
温度:沸騰湯を小さいポットに移し、約90℃を保つ。
蒸らし:中心にゆっくり注いで全体に行き渡らせ、20〜30秒。
注湯:落ち着いたら中心から10円玉程度の範囲に、細くゆっくり。
外すタイミング:お湯を落とし切ると雑味の原因。お湯が残っている状態で外す。

派手なテクニックではなく、雑味を避けるための“終わり方”が丁寧だ。

家での再現TIP|ドリップパックを“宮越屋寄り”にする

ドリップパックは手軽だが、味が薄くなると「深煎りの輪郭」が崩れる。
そこで、次の3点だけ守ると整いやすい。

カップを先に温める(湯を捨ててから抽出)
2注ぐ量を小分け(一気に入れず、2〜3回に分けて“濃さの芯”を作る)
最後まで落とし切らない(雑味が出やすい終盤を引っ張らない)

これだけで、家でも“街の喫茶の濃度”に寄ってくる。

ペアリング|濃さがやさしくほどける、甘い相棒たち

宮越屋の深煎りは、スイーツに寄り添うというより、同じ重さで並走できるタイプ。
バターの効いた焼菓子(フィナンシェ、マドレーヌ):香ばしさ×香ばしさで揃う
カステラ系:しっとりの甘さに、深煎りの影が映える
チョコレート:苦味の奥に、甘さが“立ち上がる”

甘いものの余韻が、コーヒーで消えない。むしろ形になる。

買うならこの2本|(戦利品の中から)

写真の購入品ベースで、選び方を“使い分け”にすると強い。

① ハウスブレンド:迷った日の軸。毎日のコーヒーとして戻ってこられる
② 三越ブレンド:手土産や気分を上げたい日に。名前がすでに場を整える

オリジナルは、「店の標準」に一番近い顔になりやすいので、飲み比べの基準として取っておくと記事にも強い。

喫茶叙景文 ~冷えた夜に、深煎りだけが温度を持つ~

風の冷たさは、手袋の縫い目から入ってくる。
会場のテントの隙間を抜けるたび、声が細くなって、息が白くなる。

コーヒーフェスは、祝祭の顔をしている。
笑い声、紙カップ、手渡される小さな熱。
けれど今日の空気は、浮かれさせるために用意されていない。
雲は低く、街はグレーのまま、指先だけが現実を思い出させる。

そんな寒さの中で、深煎りの香りは“”ではなく“”として立ち上がる。
大きく燃えない。派手に揺れない。
ただ、確実に、胸の奥のどこかを温める。

宮越屋のカップは、手のひらの形に沿って、じわりと温度を渡してくる。
一口目で驚かせない代わりに、二口目から「戻ってきた」と思わせる濃さがある。
甘さの奥に影があって、影の奥にも甘さが残る。

イベントの熱狂は、風に散る。
帰り道の足取りは、また速くなる。
けれど、深煎りの輪郭だけは、散らない。
紙袋の中のドリップパックが、家の机の上で待っている。

湯を沸かし、カップを温め、最初の一投を静かに落とす。
寒い日に飲んだコーヒーは、味より先に体温として記憶に残る。
そしてその記憶は、なぜかいつも“街”の形をしている。

銀座の光の下、風に削られた一日。
その終わりに、深煎りだけが、まだ温度を持っていた。

  店舗概要

1 住所:

東京都中央区銀座5丁目10-6 第一銀座ビル 1F(宮越屋珈琲 銀座店)

2 アクセス:

銀座エリア(詳細導線は地図アプリ推奨)

3 営業時間:

9:00〜22:00/土 10:00〜22:00/日 10:00〜20:00

4 備考:

TEL 03-6274-6333・予約不可

5公式Instagram:
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