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丸沼の森ベーカリー|朝霞で出会う、ぶどうパンのフレンチトーストと森の喫茶時間

丸沼芸術の森の敷地を歩いていると、木の温もりをまとった建物が見えてくる。

扉の前には、手書きの黒板。
そこには、丸沼の森ベーカリーの文字と、ランチメニューが並んでいた。

野菜サンドイッチ。
ピザトースト。
ぶどうパンのフレンチトースト。

パン屋であり、ランチを楽しめる場所でもあり、丸沼芸術の森の中に流れる穏やかな時間を受け止める喫茶空間でもある。

今回訪れたのは、丸沼の森ベーカリー。

丸沼芸術の森エリアにあるベーカリーで、地域情報では食パンや塩パンを中心に扱うパン工房として紹介されている。
前回訪れた丸沼美術サロンが、美術とバウムクーヘンの時間を重ねる場所なら、こちらはパンと食事の時間を通して、丸沼の森の空気を味わえる場所だった。

この日選んだのは、ぶどうパンのフレンチトースト。
合わせたのは、アイスコーヒー。

木の壁に囲まれた店内で、しっとり染み込んだパンを食べる。
レーズンの風味が、少しラムのように広がる。
その甘さのあとに、軽やかなコーヒーを飲む。

丸沼の森ベーカリーの喫茶時間は、派手ではない。
けれど、パンそのものの密度と、店を始めた人の思いが、静かに残る一皿だった。

第一章 丸沼芸術の森にあるベーカリー

丸沼の森ベーカリーは、朝霞市の丸沼芸術の森エリアにあるベーカリーだ。

丸沼芸術の森は、若い作家の制作や研究を支える芸術拠点として知られている。
敷地内には、美術作品を鑑賞できる空間や、丸沼美術サロンなどがあり、芸術と日常が静かに重なる場所になっている。

その一角にあるのが、丸沼の森ベーカリー。

地域情報では、同敷地内にある食パンや塩パンを扱うパン工房として紹介されており、丸沼芸術の森の中で、パンを通して人を迎える場所になっている。

前回訪れた丸沼美術サロンでは、美術作品を眺めながらバウムクーヘンとコーヒーを楽しんだ。
それに対して、丸沼の森ベーカリーはもう少し日常に近い。

食パン。
塩パン。
サンドイッチ。
ピザトースト。
フレンチトースト。

美術の余韻を持ちながらも、ここでは「食べること」がより前に出てくる。

木の外壁、木の扉、明るい店内。
入る前から、焼きたてのパンに似合う温かさがあった。

目次

第二章 パンが食べたくて始まった店

店の始まりについて伺うと、印象的な言葉があった。

オーナーがパンを食べたくて始まった。

この言葉が、とても良い。

大きな事業計画や派手なコンセプトから始まったというより、
まず自分が食べたいパンがあった。その素直な欲求が、店の原点になっている。
食べたいものを作る。食べてもらいたいものを出す。その積み重ねが、店になる。

丸沼の森ベーカリーには、その自然な流れがある。

さらに、もう一つ大切な思いがある。

野菜を食べてもらいたい。

ランチメニューに野菜サンドイッチがあるのも、その思いとつながっている。
パンを楽しむだけでなく、野菜も一緒に食べてもらう。
軽食でありながら、身体にも少し気を配る。

パン屋のランチは、炭水化物中心になりやすい。
けれど、ここではパンの横に野菜がある。そのことが、店のやさしさになっている。

丸沼の森ベーカリーは、パンを売るだけの店ではない。
パンを食事にする店であり、野菜を自然に食べてもらうための店でもある。

第三章 七年変わらない作り方

丸沼の森ベーカリーは七年目。
そして、開業当時から作り方は変わっていないという。

これは、とても大切な情報だ。

新しい味を追うことも、季節のメニューを出すことも大切だ。
けれど、変えずに続けることにも力がある。

パンは、毎日同じように焼いているようで、気温や湿度、発酵の具合によって表情が変わる。
それでも、基本の作り方を変えずに続ける。その積み重ねが、店の味になる。

丸沼の森ベーカリーのパンには、流行を追う軽さではなく、続けてきた落ち着きがある。

特に今回食べたフレンチトーストには、それがよく出ていた。密度のあるパン。
しっかり染み込ませても崩れすぎない生地。
表面はじゅわっと柔らかく、中心にはパン本来の生地感が残る。

これは、パンそのものが弱いと成立しない。
フレンチトーストは、卵液や甘さだけで作るものではない。
元になるパンの力が、そのまま食感に出る。

七年変わらない作り方は、こういうところに現れていた。

第四章 木の温もりに包まれた店内

店内に入ると、まず木の温もりが目に入る。

壁、カウンター、テーブル。
どこも明るい木目で、外の光を受けると、店全体がやわらかく見える。

厨房を眺められるカウンター席もあり、パン屋らしい作る気配が近い。
窓の向こうに調理場があり、店内は落ち着いているが、どこか動きも感じる。

席数は多すぎず、ゆっくり食べるのにちょうど良い。
外の看板には、ランチメニューが手書きで書かれていた。

野菜サンドイッチ。ピザトースト。ぶどうパンのフレンチトースト。
コーヒーまたは紅茶とサラダ付きで、価格は800円。
追加で日替わりスープやミニデザートも選べる。

こういうランチは、気取らず使えるのが良い。

美術サロンのように背筋が伸びる時間もいい。
けれど、丸沼の森ベーカリーでは、もう少し肩の力を抜いてパンを食べられる。

同じ丸沼の森の中にありながら、場所ごとに時間の質が違う。
それが、このエリアの面白さでもある。

第五章 食べたもの|ぶどうパンのフレンチトースト

今回選んだのは、ぶどうパンのフレンチトースト。

白い皿に、厚みのあるフレンチトースト。
表面には焼き目がつき、粉糖がかかっている。
別添えのはちみつもあり、好みに合わせて甘さを足せる。

まず、そのまま食べる。

表面はしっとりとしていて、口に入れるとじゅわっとほどける。
卵液が染み込んだ甘さがある。
けれど、ただ柔らかいだけではない。

耳の部分まで液が染み込んでいて、柔らかく崩れそうに見える。
しかし、実際には崩れすぎない。
このバランスが良かった。

理由は、パンそのものの密度にある。

密度が濃いパンだから、長く液に浸しても崩れにくい。
表面にはしっかり染み込んでいる。
だが、中心部の生地までは完全に浸透しきっていない。

だから、外側はじゅわっと柔らかい。
中心部には、パン本来の生地感が残っている。

この二重の食感が、ベーカリーのフレンチトーストらしい。

レーズンの風味も良い。
ぶどうパンを使っているため、噛むたびに果実の甘みが出る。
さらに、少しラムを思わせるような香りも感じられた。

卵液の甘さ。
レーズンの甘酸っぱさ。
ラムのような余韻。
そこに、はちみつを少し足すと、甘さに艶が出る。

最初はそのまま。
途中ではちみつを少し。
この食べ方が、かなり良い。

第六章 飲んだもの|軽やかなアイスコーヒー

合わせたのは、アイスコーヒー

透明なグラスに、深い色のコーヒー。赤く光る氷が入り、木のテーブルの上で涼しげに見えた。

味の印象は、ボディは薄め。余韻も長く残らない。強い苦味や重さで押すタイプではなく、
軽やかに飲めるコーヒーだった。

フレーバーを挙げるなら、後ろにほんの少しチョコのような気配がある。

この控えめさが、フレンチトーストに合っていた。

ぶどうパンのフレンチトーストは、卵液の甘み、レーズンの風味、はちみつの甘さがある。
そこに重すぎるコーヒーを合わせると、味がぶつかることもある。

しかし、このアイスコーヒーは余韻が短い。甘く広がった口の中を、静かに整えてくれる。
苦味で断ち切るというより、甘さを次の一口へ流してくれる。

フレンチトーストの甘さを主役にして、コーヒーは後ろから支える。そんなペアリングだった。

所作メモ|パンを活かす漬け込み

丸沼の森ベーカリーのフレンチトーストで印象的だったのは、漬け込みの加減だった。

フレンチトーストは、ただ卵液を染み込ませればいいわけではない。
染み込みが浅いと、パンの中心が硬く残りすぎる。
逆に深すぎると、焼く前に崩れてしまう。

今回のフレンチトーストは、その境目がよくできていた。

耳まで柔らかい。
表面はじゅわっとしている。
けれど、中心にはパン本来の生地感がある。

これは、パンの密度と漬け込みの時間が合っているからだと思う。
ベーカリーのフレンチトーストは、カフェのフレンチトーストとは少し違う。
パンそのものを知っている店だからこそ、どこまで染み込ませれば崩れず、
どこまで柔らかくなるかがわかる。

崩れそうで崩れない。
染み込んでいるのに、芯が残る。
その境目に、丸沼の森ベーカリーらしさがあった。

ペアリング|ぶどうパンの甘さとアイスコーヒー

今回の組み合わせは、ぶどうパンのフレンチトーストとアイスコーヒー。

このペアリングは、とても自然だった。

フレンチトーストには、複数の甘さがある。

卵液の甘さ。
レーズンの果実味。
少しラムのような香り。
はちみつの艶のある甘さ。

そこに、軽やかなアイスコーヒーを合わせる。

コーヒーはボディが控えめで、余韻も短い。
後ろにほんのりチョコのような気配があるが、強く主張しない。

そのため、フレンチトーストの甘さとぶつからない。
むしろ、甘く広がった口の中を整え、次の一口に向かわせてくれる。

濃厚なスイーツには、深いコーヒーを合わせたくなることが多い。
けれど、このフレンチトーストには、軽やかなコーヒーが合っていた。

甘さを切るのではなく、流す。
余韻を消すのではなく、整える。

そういうペアリングだった。

喫茶叙景文 染み込む甘さと、残るパンの芯

木の店内に、午後の光が入っていた。

外には、丸沼の森ベーカリーの黒板。中には、木の壁とカウンター。
厨房の窓の向こうには、パンを作る場所が見える。

皿の上に置かれたフレンチトーストへ、フォークを入れる。

表面は柔らかい。卵液を含んだ生地が、じゅわっとほどける。耳までしっとりしていて、
少し力を入れると崩れてしまいそうに見える。

けれど、崩れない。

中心には、パンの芯が残っている。完全に液に溶けきらず、パン本来の生地の柔らかさがある。
その残り方が、ベーカリーのフレンチトーストらしかった。

レーズンの甘みが、噛むたびに出てくる。少しラムのような香りもある。そのまま食べても良い。途中ではちみつを少しかけると、甘さに艶が出る。

アイスコーヒーを飲む。

軽い。余韻は短い。ほんの少し、チョコのような気配がある。
甘く広がった口の中を、静かに整えてくれる。

オーナーがパンを食べたくて始まった店。野菜を食べてもらいたくて作られたランチ。
七年変わらない作り方。その話を思い出しながら、もう一口食べる。

パンは、ただ満たすためのものではない。
誰かが食べたいと思ったものが、誰かに食べてもらいたいものへ変わる。
丸沼の森ベーカリーの一皿には、その流れが残っていた。

しっとり染み込む甘さの奥に、パンそのものの力がある。
その芯を、最後まで感じるフレンチトーストだった。

店舗概要

1 住所:

埼玉県朝霞市上内間木789(丸沼芸術の森 敷地内)

2 アクセス:

東武東上線「朝霞駅」から国際興業バス「内間木」行きに乗車し、「丸沼」バス停から徒歩約5分。
またはJR武蔵野線「北朝霞駅」から車で約10分。

3 営業時間:

― 10:00 〜 16:00
 定休日: 日曜日・月曜日・祝日

4 備考:

・ 丸沼の森ベーカリーでは、生クリームやハチミツを練り込んだ、ふんわりしっとりとした角型食パン生地を使ったぶどうパンが人気。中にはトルコ産サルタナレーズンがたっぷり入っており、レーズンの甘みとパン生地の自然な甘さを楽しめる。

また、耳まで柔らかく自然な甘みが広がる上食パンや、塩パンなど、少数のメニューを丁寧に焼き上げているのも特徴。パンそのものの味わいを大切にした、日常に寄り添うベーカリーである。

・ 丸沼芸術の森らしく、専用の化粧箱には同施設に関わるアーティストのデザインが用いられており、ギフトや手土産にも向いている。
店内では、天然木の温もりを感じるテーブル席やカウンター席で、トーストセットやピザトーストセットなどのランチも楽しめる。スープ、サラダ、ドリンク付きのメニューもあり、パンを購入するだけでなく、ゆっくり食事として味わえる場所である。

5公式サイト:
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